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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

写真集 『子供のまなざし』 ジャック=アンリ・ラルティーグ

2007年02月12日 | 絵本・写真集・画集

             異人館の裏門

フランスの写真家ジャック=アンリ・ラルティーグの写真集『子供のまなざし』(リブロポート 1994)を観ました。この写真集は現在は絶版のようです。

あぁ、こんな素敵な写真が撮れるなんて、と思わず呟いてしまう写真群です。

「子供のまなざし」というのは、まさにこれがラルティーグが幼少の頃に撮った写真を集めたものだからです。

ラルティーグは1894年生まれで、当時はカメラはまだまだ高価なものでした。しかしフランスの裕福な家庭に生まれたラルティーグは、幼い頃から父親に専用のカメラ機を与えられました。

写真は、まさにその裕福な家庭・親類が遊びにふける場面を写しています。

複葉機を飛ばしたり、飛行機を運転したり、クルマを運転してスピードに興じたり。まさにブルジョア的な遊びをこの家系の人たちはしており、その親類・兄弟たちが郊外で思い切り羽を伸ばす様を子供のラルティーグは写真に切り取っています。

「みずみずしい感性」という言葉がまさにぴったりの視点で、ラルティーグは兄弟・親類たちが遊びに興じる姿をユーモラスに生き生きと撮っています。子供なのに、あるいは子供だからか、今にも被写体が写真の中で動き、人物たちが笑い出しそうに見えるように、写真は撮られています。ものすごい感性です。

与えられた環境を、まさにラルティーグとその親類・兄弟たちは思い存分享受して楽しみを追及したのです。しかしそこには退廃的な匂いはなく、むしろ自らの好奇心を貪欲に追及する探究心に満ちた若者たちの姿をこの写真集で観ることができます。そのような好奇心に満ちた兄弟たちを、ラルティーグもまた純粋に愉しみながら写真を撮っていきます。

ラルティーグという人は、本人も気づかないうちに、生まれたときから写真の独自の感性を持っていたのだなと思わされます。因みに、これらの写真が公けにされたのはラルティーグがすでに初老に達してからで、偶然社交界で自分が写真を撮ってきたことを人に話したのがきっかけだそうです。おそらく、彼には自分の才能が当たり前すぎて、それが人々を感動させるものだとは思えなかったのでしょうか。彼は画家としてその生涯をすごしたにもかかわらず。

写真を見る楽しみを存分に味あわせてくれる写真集です。

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