お笑いブームの中で、ニューウエーブの若手芸人たちがTV画面を賑わしている。でも、やはり何といっても「ダウンタウン」の松本人志と浜田雅刀の面白さには敵わない。
日本テレビ日曜夜11時からの「ガキの使いやあらへんで!」で繰り広げられる即興漫才の掛け合いはさすがに素晴らしいと思う。勿論、事前の打ち合わせはあるんだろうけど、「やす・きよ」が去った今、漫才界のトップに君臨しているのは現時点では何といっても「ダウンタウン」である。
その松本人志が、「日経エンタテインメント」に連載している映画コラム「シネマ坊主」は必ず読むページで、その偏向的な映画評価がなかなかユニークで面白く、ハード・カバーになって、1と2までが出版されている。
とにかく、映画への切込みが普通の映画評論とは若干違っていて、やはり少し変わっている。
「松本人志の採点表」というのがあって、毎回、観た映画に星印を点けるのだけれど、これまでの「満点」作品が6作品あった。
「ライフ・イズ・ビューティフル」に「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に「鬼が来た!」に「モンスターズ・インク」に「ペーパー・ムーン」に「ディープ・ブルー」である。
まあ、解らないでもない。それに映画なんて全く個人的なものである。巷で凄い評価を受けた映画でも、観てガッカリすることもあるし、誰も評価しない映画であっても、個人的に大好きな映画だってあるわけで。それに金を出して観ているのだ。余計なお世話だ。
でも観た後で、とても印象に残ったり感動を受けた映画は他人にも知らせてあげたいし、失望した映画はそれなりに語ってみたい。ただ、それだけのことだろう。
で、松ちゃんの凄いところが、宮崎駿の「千と千尋の神隠し」に対して、何と0点を付けているところ。まあ、別にどんな映画に0点を付けようと、そんなのは個人の自由だからとやかく言う立場にはないんだけれど・・・。
その評価した内容がまた過激である。
「なぜ、大人が子どもに対して何かを伝えたり、楽しませないといけないのか?」と、疑問を呈している。よく読んでゆくと、別に宮崎作品そのものにケチを付けているというよりも、自分の価値観という大きな風呂敷の中で、映画それ自体をも語っているのである。子どもに対して、媚びていると。靡(なび)いていると。
これはこれで正しいのではないか? いや別に「千と千尋の神隠し」を僕も評価しないと言っている訳じゃない。僕は好きな映画だし、評価する。
ただ、その批評の姿勢そのものを潔いと言いたいだけだ。自分の半径の中でのみ批評する。本来、誰だってそうして自らの尺度に合わせて判断している。
でも、こういうと笑われるかもとか、こんなに世間で評価しているのに面白くないなんて口が裂けても言えないよお、とか。つまり、自己規制ね。これが一番怖い。
しかし、全体的な映画の好みは、全く合いませんね。
別に松本人志と合わなくたって、そんなのどうでもいいんだけどさ。