淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「RETURN TO THE STARTING LINE」

2009年01月18日 | Weblog
 第140回芥川賞、直木賞が決まった。
 芥川賞が津村記久子さん(30)の「ポトスライムの舟」。
 そして直木賞には、天童荒太さん(48)の「悼む人」と、山本兼一さん(52)の「利休にたずねよ」の2作が選ばれた。

 僕はこのニュースを、残業から帰って疲れた体を休めながら眺めていたTVで知った。
 一編の長編小説も書いた事がない、そして発表さえしたことがない、僕のような根っからの怠け者人間がのたまう言葉ではないけれど、言いようのない淋しさが心の中をふっと駆け抜けて行った。

 そして、次の日の新聞インタビュー記事で、芥川賞を受賞した津村記久子さんが記者に答えている記事を読んで、僕は本当に心からの感銘を受けてしまったのである。
 彼女の答えるその真摯で生真面目な内容もさることながら、仕事で疲れ切った体を引き摺り、それでも真夜中の4時に布団から起き出して原稿用紙に向かっているという、そのことに僕は凄まじい衝撃を受けたのである。
 それも栄養ドリンクを飲みながら!

 毎日残業に追われ、疲れた体で家に帰り、一旦暖かい布団の中で眠りに落ち、それから数時間後の明け方午前4時に起きて、そのまま小説など書き続けることが出来るものなのだろうか? 
 彼女の打つパソコンの前には「仕事があるだけ幸せだ」というメモが書かれているのだとか。
 津村記久子さんは、その芥川賞受賞時のテレビでの姿しか見ていないけれど、華奢で文学少女然としたナイーブそうな方で、とても誠実な印象を受けた。

 勿論、根性と努力さえあったら傑作が書けるとか、一生懸命頑張れば小説で賞が取れるとか、そんな能天気でアホな御託を並べているのではない。
 数日間しか時間を掛けなくても歴史に残る短編小説の傑作を書き上げる作家だっているだろうし、別に血の滲むような努力だけが実を結ぶわけじゃない。

 何て言ったらいいのだろう?
 つまり結局は、腹を括った人間、性根の座った人間が最後には勝つと言う事を言いたいだけだ。どっちつかずに、すべてをそつなくこなそうとする人間は、最後に何も残さず消えて行く、ただそれだけのことなのだろう。

 俺は一体どうしたいのだろう?
 だらだらと一日を遣り過ごし、中途半端に本を読み、中途半端に映画を観、中途半端に体を鍛え、中途半端に仕事を続けている。
 腹を括れだの、世に出たいだの、ただ頭と言葉だけでその場をしのいでいるだけではないのか。
 それも放蕩しっぱなしで!

 津村記久子さんは凄い。
 天童荒太さんも凄い。
 それから、50代で直木賞を獲った山本兼一さんも凄い。

 仕事の事を考えて日曜日の夕方になると気分が塞ぐとか、生きる事の喪失感や虚しさだとか、もうそんな気分のレベルでグダグダ言っている自分が本当に馬鹿に思えて来る。

 もうなんか人間って、途轍もなく先を行っている人間と、ダラダラと後方から汗だくになって走り続ける人間の二種類しかいないような気にもなってきた。

 俺は、その後方にさえまだ追いついていないけど・・・。
 どうすんのよ、おれ。このままで。



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