旅行が好きな人は、戻るとまたすぐ出かけたくなる。僕などはその逆で、出るのがとても億劫だ。だが、行きたい場所がないわけではなく、エルサレムなどはその一つだ。
かなり昔だが、NHKでドキュメンタリーをやっていた。細かいところはすっかり忘れたが、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地であり、狭い旧市街地の細い通路を、巧みな時間調整でお互いの礼拝に支障がないようにやりくりしている、という意味の解説をしていた。
首相になる前のシャロン将軍が、それまでの禁忌を破り、神殿の丘に足を踏み入れた(だったかな)ということで、それをきっかけにパレスチナとの抗争が激化した、そんなニュースがテレビをにぎわしていたころだ。
こんな場所はほかにはない。いったい、この土地の何が人々を引き付けるのか。何が、人を狂わせるのか。
荒涼としたパレスチナの土地は、不思議な郷愁をそそられる風景でもある。自分のずっと昔の前世が、見ていたのではないと思ったりもする。もっとも、実際にその土地を見ていないのだから、それ自体自分のイメージの中だけの風景なのかもしれない。
映画「ジーザスクライスト・スーパースター」に出てくる、暑くて乾いた風が、汗を吹き飛ばしてしまうような気候、ああいうところで暮らすのも、案外悪くないのではないか。考えてみると、日本とは正反対だな。暑いのはおなじか。