60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

空書と漢字の読み書き

2008-05-04 22:44:57 | 言葉と文字

 空書というのは空中に文字を書く所作をすることですが、文字を書くイメージをすると手が動きます。
 手を動かすから書く動作がイメージされるのか、イメージするから手が動くのか分りませんが、文字を書く運動感覚があります。
 「心」と「今」という字を見て、組み合わせてできる漢字を答えるというときは、図形として組み合わせて答えを出そうとするでしょう。
 アタマの中で今という字の下に心を持ってきた文字を思い浮かべ「念」という答えを引き出します。
 ところが「ココロとイマ、ムカシのイマ」で出来る漢字はと耳で聞いたときは、多くの人は指で文字を書くような動作をして、「念」という答えを出すそうです。

 目で見た図形要素を組み立てるときは視覚イメージの操作で答えを出そうとするのに、耳から聞いた場合は運動イメージの操作から答えを出そうとするのです。
 耳で聞いた場合に、文字を書くことができるというのは、アタマのなかに視覚イメージとして文字が浮かんで、それを手で書くというふうに考えられていましたが、そうではなさそうです。
 文字を覚えるとき何度も手で書いて覚えているため、アタマに視覚イメージを思い浮かべなくても書けるようになっているからすらすら書けるのです。
 もしいちいちアタマに文字の形を思い浮かべそのとおりに書こうとすればズット多くの時間がかかるでしょう。
 耳で言葉を聞いたときは、まず意味を理解し、その意味に対応した文字を理解して書くのですが、すばやく書けるためには理解したときに同時に手が動くように訓練する必要があります。
 ワープロの漢字変換のように文字の候補が視覚イメージとしてアタマに浮かび、それを選ぶというようなことをしていては、書き取りでさえも非能率で、普通のスピードで話される言葉の理解にはついていけません。

 「オタンジョウビのタンはゴンベンに何が来ますか」と聞かれると、多くの人は「誕」という文字のイメージを思い浮かべて答えを出す前に、指で「誕」という字を書く所作をするそうです。
 文字を思い出せないとき指を動かして空書するということがありますが、漢字をアタマの中にハッキリイメージするのは難しく、書くという運動感覚の記憶のほうが確かなためです。
 少し複雑な漢字の視覚イメージを頭の中に思い浮かべようとすると、気がつけば頭の中で書き順をたどっていますから、頭の中で一種の空書をしているのです。

 脳損傷で漢字が読めなくなっている人に、「四角の中に十の字を書いてなんと読みますか」と聞くと「田」という字を書いて読めないのが、指で「田」の字の書き順でなぞらせると読めることがあるそうです。
 また田の字を書いてみせると読めたりすることがあるそうですから、読むということでさえ、文字を視覚処理するだけのものではないことが分ります。
 文字を見て直接的に意味が分かるようになるためには、それなりの訓練をしないとできないことで、普通は音声に変換して意味を理解しているのです。


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