60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

位置のストループ効果

2007-07-02 22:43:26 | 視角と判断

 ストループ効果というのは色のついた文字の、文字の意味でなく文字の色名を答えるとき、色の名前を読むより時間がかかり、つい色の名前のほうを読んでしまったりする現象です。
 「あお」とか「あか」という字を読めない人はほとんどいないだけでなく、字を見るとつい読んでしまうほど自動化しているので、文字の色を答えるよう求められても、つい文字を読んでしまうものと考えられています。
 つい読んでしまうという自動的な活動を抑えて、文字の色を答えるためには衝動を抑える抑制力が必要で、そのためには前頭葉が発達していなければならないという考え方があります。
 ストループテストを繰り返し練習すれば、前頭葉の訓練になり、ボケないですむと予想しているのでしょうが実際に効果があるかどうかは示されていません。

 長縄久生「認知心理学の視点」には色ではなく「位置」を示す文字を使って同じような現象を起こす例が紹介されています。
 上の左の図のようにスクリーンに、「上、下、左、右」のように位置を示す単語を表示して、単語の読みではなく「位置」を答えさせます。
 このとき単語の示された位置がこの例のように上にあるのに「左」という意味を表していて食い違っていると、答える時間が遅れたり、つい「左」と読んでしまったりすることがあります。
 
 実験結果では答えが出てくる時間(反応時間)は、若年者より高齢者のほうが遅く、練習をしてもあまり変わらないとしています。
 答えを間違える率のほうは両方とも1~2%程度で低く、高齢者のほうが間違えやすいということはないとされています。
 この結果から見ると、高齢者は前頭葉が衰えてきているといっても、抑えが利かず語反応を冒しやすいということではないようです。
 むしろ見てからの判断が遅れているのか、あるいは判断をして口で答えるという運動機能が鈍くなっているのだと考えられます。

 右側の図は一覧にして次々に答えを出していくためのものですが、ストループテストと同じように、使えたりウッカリすると間違えそうになることが分かります。
 この場合も「位置」の判断は瞬間的に行われるのですが、「位置」を言葉に出そうとしたときに文字に注意が向かっているのでつい文字を読んでしまいそうになります。
 ただ文字の色を答える場合よりややスムーズに答えられる感じがします。
 「位置」情報は相対的なものなので「色」情報より判断が遅れるので、判断スピードが遅かったり、判断しにくい情報のほうが文字情報の干渉を受けにくいのかもしれません。
 
 考えてみれば、文字情報のほうが色情報よりすばやく自動的に判断されるという説は、常識的に考えればおかしなものです。
 道路信号は「赤」「青」「黄」という色で判断させ、文字で判断させようとはしていないのは文字より色のほうが判断しやすいからです。
 文字を見て音読しなくても意味が頭に入れば、つい読んだりしなくてすむのです。
 自分の名前なら文字で書かれているのを見て、音読しなくても意味がすぐに頭に入ります。
 文字を見て読んでしまうというのは、音読の習慣の結果で、ほんとうは読みが完全に黙読することが出来ていないからです。
 


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