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言葉の意味の読み込み

2007-09-11 23:08:50 | 言葉と意味

 アメリカの幼稚園でうまく工作のできた幼児に、それを見た先生が「Good job」と誉めたそうです
 それを見た日本人がいたく感心して、「いい仕事をしたね」と誉めることで、いい仕事をすることが喜びだということを幼児の頃から教えていると思ったそうです。
 「こういう教育を受けていれば子供は仕事が嫌いにならないだろう、働くのが嫌いになったりはしないだろう」とまで考え、日本との差に思いをいたしたそうです。
 
 いわゆる「アメリカでは」「イギリスでは」といった「ではの守」の話の一例なのですが、言葉に普通の意味以上のものを読み込もうとする例でもあります。
 アメリカ人が日本人より勤労意欲があって、仕事熱心などとは一般論としていえないのに、なぜかアメリカの教育が優れていると思い込んでいるのです。
 「Good job」と言って幼児を誉めたのは「よくできたね」というのが常識的な解釈で、幼稚園の先生は工芸品の鑑定人ではないのですから、「いい仕事をしたね」などというわけはないでしょう。
 good morningだって挨拶としては単に「おはよう」と言う意味なのに、「よい朝」だと深読みをすれば、「アメリカ人はプラス思考で積極的だから挨拶の仕方が違う」などと言うことになります。

 なにかといえばアメリカの教育をよしとするのは、評論家だけのものではなく日本の大臣の発言にもあります。
 「アメリカでは小学校一年生の子供がto get a good jobと言って、いい仕事に就くために勉強している。動機付けが日本よりはっきりしている」と感心しています(この場合はgood jobは収入の多い仕事)。
 小学校一年生のときから有利な仕事の獲得を目指して勉強するというのは、日本の親の本音でもありますから、本音でなら日本の子供もアメリカと変わっていません。
 日本の教育制度はタテマエ上、子供の可能性を伸ばすとかいっているですが、本音のままのアメリカ式がよいとでもいうのでしょうか。

 言葉はもとの意味がどうであれ、現在使われている意味に解釈するのが常識なのですが、語源などを持ち出すときは、その人固有の意見が盛り込まれている場合があります。
 「いっしょけんめい」と言う言葉は、現在では「一生懸命」と書かれたりして、必死に努力するという意味で使われています。
 もとの意味は「一所懸命」で大事な土地(領地)というような意味ですが、現代人にはピンと来ないので、いまさらもとの意味を持ち出すのは地主かなんかかもしれません。
 
 一所懸命は実際の語源なのですが、「たわけ」のもとの意味は「田分け」だというような語源説になると、これはもとの意味にはなかった読み込みです。
 「田分け」というのはいわゆる分割相続のことで、田地の分割相続を繰り返せば零細化して没落してしまうので、愚か者を「田分け」といったというのです。
 「たわけ」は名古屋弁では「たーけ」といい、元来は「たはけ」と表記したので、「田をはける」というのはそれこそ「たはけ」です。
 「田分け」というコジツケ解釈は、農民あるいは地主からでてきた語源説なのでしょう。