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ゆるやかな漢字と意味の対応

2007-07-09 23:05:44 | 言葉と文字

 現在新聞などで使われている常用漢字表記による熟語は、見慣れてしまっているので特段不審に思われないかもしれませんが、良く見ると不自然なところがあります。
 図は元来の表記と対照させたもので、右側が伝統的表記で常用漢字外の漢字が使用されています。
 一番左の例は元の漢字の基本部分だけを使ったもので、音が同じで、意味が似通っているので代用されるものです。
 
 「希少」の「希」は普通の感覚では「希望」という使われ方から「ねがう」という意味が思い浮かびますが、「まれ」という意味もあって、「稀」と同じ意味もあります。
 「まれ」という意味では「稀少」のほうを使ったほうがすっきりするような気がしますが、漢字を少なくしようとして「希少」が使われているのです。
 保母の「母」も実の母親の意味だけでなく、親に代わる女性「姆」の意味もあるので、実際の親でなくても「保母」という表現を使っています。
 「日食」の「食」も「蝕」と同じように「むしばむ」という意味もあるので、こちらのほうを使っています。
 これらのことは漢和辞典を引いてみて分かることで、普通の人の感覚では漢字の意味を聞かれたら「アレッ」と思うのではないでしょうか。
 「車両」の「両」も「輛」と同じく車を数える単位の意味があるので良いのですが、
「蒸留」の「留」は「とめる」の意味で「溜める」の意味ではないのですから、意味が近いといっても代用には無理があります。

 真ん中の例は漢字の偏の部分を取り替えている例で、普段見慣れていておかしいと思わないかもしれませんが、意味的には右側の常用外のほうが素直です。
 「註釈」は「説明」の意味ですから「注釈」とするより視覚的にはピタリと会う感じです。
 「暖房」は火を使わない感じですし、「補佐」は助けるより、補うような感じでしっくりきません。
 「模」は「かたどる」、「摸」は「まねる」で「模索」より「摸索」のほうが妥当に見えます。
 
 右側の例は代用文字の音が同じで熟語の意味が似ている例で、文字同士は通じていない例で、「いいのかなあ?」と思われるものです。
 「迷」は「まよう」「冥」は「くらい」なので、いみにずれがありますし、「後」は「おくれる」「伍」は「隊列」で、やはりずれがあります。
 「碇」は「イカリ」をおろすことで「停」は「とまる」で似てはいるがかなり違う感じです。
 
 これらの例は注意してみたり、調べてみるとおかしな感じがするのですが、日常的に読んでいるときにはノーマークです。
 おそらくほとんどの人は書くとすれば常用漢字のほうで書くでしょう。
 音声で聞いて、常用漢字外の漢字のほうを思い浮かべるという人は少ないはずです。
 つまり文字ごとに厳格に使うことはなく、アバウトな使い方をしているのです。
 言葉をしゃべるとき漢字を思い浮かべてしゃべる、というようなことは学者ならともかく、普通の人には当てはまらないといえます。