60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

漢字の瞬間的判断

2007-07-07 22:25:12 | 眼と脳の働き

 スクリーンに「萩」という字が表示されたらすばやくボタンを押す場合、表示からボタンを押すまでの時間は0.2秒から0.3秒程度です(人によって違い、また集中しているかどうかで違います)。
 ところが表示される文字が「萩」か「荻」で荻が表示された場合はボタンをすぐに押さず1秒以上たってから押すことにすると、「萩」だけが表示される場合に比べ、0.1秒以上遅れます。
 「萩」か「荻」かを判断するのに余分な時間がかかるためですが、ボタンを押すように筋肉に指令が出され、ボタンが実際に押されるまでの時間が約0.2秒とすれば、文字を見て判断をするのに0.1秒以上かかるようです。

 漢字は千分の一秒表示されただけで何という漢字か判別出来るとされていることからすれば、「萩」か「荻」かを判別するのに0.1秒(千分の百秒)以上かかるというのはおかしいと思うかもしれません。
 しかし、千分の一秒表示された文字でも、短期視覚記憶(アイコニックメモリー)は0.5秒程度持続するので、その間に記憶との照合は出来ます。
 表示されたのが千分の一秒だからといって、判断という脳処理は千分の一秒で完了したわけではないのです。
 実際の判断に0.1秒以上かかっていてもそのように意識されないだけなのです。

 右には「シ」と「ツ」と二種類の文字が並んでいますが、「ツ」の字がどこにいくつあるか、瞬間的には判断できないでしょう。
 「シ」と「ツ」が紛らわしい字体なので、パッと見ただけでは判断できないでしょう。
 これがもし「シ」が赤で、「ツ」が青となっていればパッと見ただけで赤の数はすぐに判断できます。
 青か赤かという感覚的な判断だけなら瞬間的な判断ができるのですが、「シ」と「ツ」のうちのどちらかを見分けるということになると、時間がかかるのです。
 
 隣の図では「萩」と「荻」が入り混じっているのですが、この場合もパッと見ただけで葉「荻」がどこにいくつあるかを判断することは出来ないでしょう。
 漢字なら判別が楽だということではないのです。
 複雑な形のほうが判別しやすいということでは必ずしもなく、簡単な形のほうが判別しやすいということも必ずしもいえないのです。
 「赤」と「青」という色のように簡単に見分けられる要素があればそれで瞬間的に反応できますが、なければ時間がかかってしまうので、短時間では判断できないのです。