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目指せカネ、ヒマ、若さ

原発訴訟、めげない人

2012-08-07 11:57:03 | 原発

(弁護士河合 弘之66才。脱原発弁護団全国連絡会代表で東電株主代表訴訟代理人)

資源小国で技術立国の日本。
当ブログは書いたことは無かったが、福島事故前はどちらかというと原発推進派、
というかあまり深く考えたことのない容認派だった。

一年以上に亘り、推進派、容認派、削減派、段階的全廃派、即時全廃派、様々な意見に触れた。
それぞれ尤もな部分もある。
しかし地震の発生率が世界平均の130倍という日本で原発という精密機械を安全操業できるのか。
一旦事故が起きれば制御不能になりうる。
そんな根本的な問題は何故真剣に議論されなかったのか。
そして何故十分な安全対策が取られなかったのか。

私にとって一番の学習は原発利権の予想をはるかに超えた大きさだ。
ここにぶら下がる人とカネ。
それを前提にすると見えてくるものがる。

too big to failならぬtoo big to change。
この国の経済システムの根幹に係る問題だ。

過去20年に亘り名目成長率がゼロの日本経済。
改革を拒み、将来のない重厚長大の産業構造を支えてきたのが原発利権。
電力、ゼネコン、発電機メーカー、鋼材メーカーなどの延命装置である原発。

一時は全体の40%という巨大な設備投資を支えるのは「値切らない」客の地域独占の九電力。
そんな花見酒経済を支えたのは税金と個々の家庭が支払う電気料金だ。
この収奪システムのおかげで旧来型産業は延命し、産業構造の変換が遅れた。
一般家庭は法外な電気料金と言う税金を払い続け可処分所得は圧迫される。

今回の東電の値上げでは家庭用の値上げ率が大口より低い。
しかし値上げ率というところがトリック。
同額の値上げなら金額が1.6倍の家庭の値上げ率が低くなる。
格差の温存だ。
相変わらずサイレント・マジョリティーから取るだけ取るという意思表示。
メディアはノイジー・マイノリティーの味方だから突っ込まないが。

結果は無成長に伴う雇用減、税収の落ち込み。
それでいいのかという話だ。

今回再稼働で延命するのが過度に原発依存した関電などの電力。
東電などに貸し込んだ三井住友などのメガバンク。
東京都、NHKを始めとする電力株主。

そして東芝、日立、三菱重工らが461社が名を連ねる「一般社団法人原子力産業協会」。
ケイダンレンに象徴される従来型産業だ。
それを支える御用メディアに御用学者。
電源三法交付金で補助金漬けの過疎地。
とてもではないが健全とはいえない。

日本は変われない、自分で変えられないのか。
「変われない日本をやめよう」と言っていたのは宮台だったか。
先の戦争の反省をしなかったツケを支払う時が来たようだ。

根拠なき楽観で戦争に突っ走った軍部。
作戦部は目標に合わせて情報を歪めた。
そのうち神風が吹く。

自己完結型永久循環エネルギーである核サイクルというフィクション。
世界ではとっくに放棄された高速増殖炉は実用化の目途もなしに巨額な税金を食い散らしながら温存されている。
夢のような技術でも「神国日本」なら可能ということだ。

大地震が来たら福島は危ないと言われてきたが、そんなことは、まあ起こらないだろう。
物資の補給は不足だが短期決戦ならなんとかなるという無責任と似通っている。
事実を都合に合わせる。
見たくないものは見ない。

安全対策を取れば原発の危険性を自ら認めることになる。
止めるわけにいかない巨大利権原発。
作戦本部も巨額の支出の権限を持つ利権分野だった。
軍事ムラの中枢だ。

そして多くの一般国民が犠牲になったがずる賢い軍部官僚は生き延び戦後も大きな顔をし続けた。
辻、牟田口、瀬島.....
一部軍人を裁いたのは占領軍だ。
日本人は戦争犯罪を追及しなかった。
福島事故では極東裁判さえない。

極東裁判でA級戦犯は「空気に逆らえなかった、実は自分も危ないと思ったが言い出せなかった」と。
実は組織の利益防衛が目的化した近視眼的な愚か者。
悪人ですらない。
愚者の集団がリードするのがこの国ではないか。
集団無責任体制。
失敗したときの彼らの虚無的な目をみるとがっくりする。
無自覚なんだ。

福島では多くの県民が故郷を、家を、職を、家族の生活と将来の夢を失った。
戦犯として裁かれるべき東電役員は誰一人として引責辞任せず、退職金をもらうハッピー・リタイアメント。
勝俣は何と日本原電に天下るというモラル・ハザード。
福島のニ基の発電所が同時に失われることはないという今となってはトンデモの判断を後押しした斑目や、
推進母体経産省傘下のホアンインの連中がノウノウと大きな顔をしている。

そして過度に原発に依存した、関電の債務超過を先延ばしするためだけに大飯が再稼働された。
電力が足りないという大嘘の大本営発表を垂れ流すメディア。
67年前と変わらない日本人。

そこには福島の教訓は生かされない。
防波堤が13.5メーターに増築されるのが3年後、福島を最悪の状況から救った免震重要棟の完成が2年後。
そしてフィルター付きベント設置が2年後。
活断層の調査は3か月後、しかも実施者は関電(悪い冗談?)。

また同じことだ。
危険はわかるが、まあそんなに悪いことばかり起きるはずがない。
責任はどうやって取るかと言われ「しっかり起こさないよう責任を取る」という言い逃れのトートロジー、同語反復だ。

自分から変われない社会ということなのだろう。

前置きが長くなった。
同じ間違いを繰り返させないために東電経営陣に対する株主代表訴訟を起こしたのが河合。
時効の来ていない歴代、現職役員27人に対する賠償額はギネス級の5.5兆円だ。

今回は政府自体が人災と認めている。
さまざまな機関が福島の地震・津波による炉心損傷を警告してきたが対策を怠った。
裁判所としても門前払いするわけにはいくまい。

更には刑事告発。
高速バス、焼肉屋やオザーさんは素早く告発する検察・警察。
不思議なことに東電には捜査さえ入らないが爆発物破裂罪、厳重構造物破壊を突破口に検察に迫る。
起訴しなければ小沢がやられた検察審議会だ。

個人の責任をきちんと追及することで将来の集団無責任を防ごうという作戦だ。
日本人の特性で良いところはたくさんある。
オリンピックのメダル数に見られる団体主義も結構。
でも明らかな弊害は改めた方がいい。
共同体至上主義、集団無責任体制には強い違和感を覚える。

この人筋金入りの反原発弁護士。
長年裁判所が門前払いしてきた建設差し止めなどの訴訟を全国で展開してきた人らしい。
結果は20連敗だ。
しかし、訴訟があったから原発が54基で済んだと胸を張る。
反対努力をしなければ100基はできていたと。

タフな人だ。
だから反原発運動をする人に、思いつめて挫折しないように呼びかけている。
20連敗の説得力(笑)。
それぞれができることをすればいい。
彼は訴訟、そして選挙では推進派議員のネガティブ・キャンペーンをやるそうだ。

デモに参加する人、パブコメで原発依存度ゼロに投票する人、選挙で反原発派を支持する人。
地元の議員に働きかける人、NHKなどの偏向メディアに抗議する人。
それぞれがあきらめずに自分のできることをやってくださいと。
長い闘いだが敵の綻びは大きくなっている。

マル激トーク・オン・ディマンド 第588回(2012年07月21日)
原発事故の経営責任を問う
ゲスト:河合弘之氏(弁護士・東電株主代表訴訟代理人)





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