テルミンとJAZZ
テルミンやマトリョミンの話。私、こちろうこと相田康一郎のプロフィールは左メニューバーのCATEGORYを。
 



テルミン―ふしぎな電子楽器の誕生

東洋書店

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やっと数日前に勤務先近くの書店で買い求めることができた。自らテルミンを演奏され、指導もされている尾子洋一郎氏の著書である。本業はロシア文学研究者。
尾子氏とは約1年前の外語大の催しの際に遭遇しているようなことを夢幻のように記憶している。
私のマトリョミンを手にとられて、いきなりヴォカリーズ(ラフマニノフ)を弾きこなしてしまわれて、私は周章狼狽してしまった(あのときのあなたですよね?)。その素晴らしい演奏ぶりに「何か楽器はやってらっしゃいますか?」とあたふたと質問した私に、「ギターを」などとお答えになられたような気がするが、今あらためて言いたい。「ウソツキ」。

それはともかく、

この本、予想していたより(失礼!)素晴らしい内容であった。
テルミンという楽器、テルミン博士、テルミンの歴史、最新のテルミン情報などについて手っ取り早く知りたいと思っている方に最適の書物としてお勧めできる。わずか63ページという紙幅にこれだけの内容が記述されていることは驚きである。
特に感心したのは網羅的かつ平易に記述されているにもかかわらず、著者の学識を反映して、ロシアのみならずワールドワイドな視点から文化史・政治史的知識がちりばめられていることである。そういうあり方はともすれば嫌味っぽくなりもするが、そのようなことは全くなく、私にとっては「ほーっ、そうだったのか」的な発見を多くさせられた。
最新号のフレンズオブテルミン会報でご本人が述べられていたところによると「ちょっと読みにくい文章だたりするのかな」と警戒もしていたが、私はスルスルとひっかかりなく読んでしまった。逆に私に文学的感受性が不足しているのかもしれない。
演奏家列伝やディスクガイド、演奏教室の案内などもテルミン初心者にとっては大変有益なものである。

今、この時代の日本でテルミンを趣味としていることの幸せを感じる。テルミンに関する日本語の本が2冊もあり、楽器も容易に入手でき、演奏法を指導者から習うこともできる。

竹内氏の著書はときどき読み返すと新たな発見がある。特にロシア演奏旅行から帰国してびっくりするほど深い内容がちりばめられていることに気付かされた。
尾子氏のこの著書もテルミン弾きにとって、一読後手元に置いておき、ときどき読み返すに値する本だと思う。

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