蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

イザベラは空を飛んだ 第4回の案内

2010年11月02日 | 小説
長編物語「イザベラは空を飛んだ」第四回の部族民通信HP掲載の案内です。

(これまでは)リサとケイジはバイパスのコーヒー店ステラリで待ち合わせた。時は春、金曜の夕刻、五度目のデートなら行き着く先は互いに了解している。
ところがアニエスと自称する老女の闖入、覆面パトカーの追跡、リサへのナンパ攻撃など思わぬ妨害をようやく乗り越えて、千年の聖都市バビロンならぬリサの部屋にたどり着いた。

これからが4回目のあらすじです。
リサの部屋で一息つくケイジ(3章 サンセールは赤に限る、リサの部屋で)リサは奥の部屋に入って身だしなみを整える。決戦の直前、勝負の分かれ目、誰も見ていない部屋でのリサは何をしているのか、
本文から>そして誰にも見せない秘密の行為に入った。この夕べの生暖かさに触発されたのだろうか。
鏡に向かっていた彼女が、突然スカートをたくし上げたのだ。思いっきり、一気にたくし上げられたスカートは、もはや足も腿をも隠していない。
剥き出した太腿が鏡に写った。生白い腿に何かしらの染み、あるいは汚れがあるかを丁寧に確認し、そのむっちりとした肉付きに安心したリサは、内腿の肉身に指先を押し込んだ。その柔らかさの具合を確かめた。内腿の肌は、およそ他のどの部位よりも白い。生身が透けるほど白い肌にくるまれている、その柔らかさを自分の指先で確かめたかった。
それは指の先を窪みで受けた、まるで白い綿菓子ほど柔らかかった<
 
では柔らかな太股の運命とは、これは言わずもがなで、愛し合う二人ならば、行き着く先は何時も同じ。

本文から>ケイジに覆い被さるようにリサがケイジを抱く。見上げる彼の目には余裕が無かった。自身の役は処刑執行と知っているためなのか。抱きつきながら「堪忍して」と哀願するリサをどう処遇するのか決心が付かない頼りなさがあった。この舞台で逡巡は正しいのだろうか。全く正しくない。
行け、進め、ケイジ。ここが愛の分水嶺だ、お前が行動しこの恋を達成するのだ。土壇場でうごめくのがリサと誤解するな。土壇場に引き出されたのはお前なのだ。だから行け、進め、狂えケイジ。<
 
やはり狂いがないと愛は成就しない。はたして彼らは分水嶺を越えたのか。

 舞台は変わりリサがその夜に見た夢(4 馬借座、板倉本田の人足宿)に移ります。
 
(本文から)>野麻のボロ単衣、筒袖とすり切れアンギンの前垂れ、裾は膝で止まり、痩せたくるぶしの裸足。油気ないボサ髪を後ろに結び、頬も鼻筋も日焼けに黒い。
過去のおのれの姿はみすぼらしい痩せた少女、馬停めの裏庭で働く馬借宿の下働きであろう。リサにはそのみすぼらしさには少しも違和感が無かった。
「ああ、あの時のことだったのよ」とおぼろ覚えにこの様を思い出す事が出来た。きっとリサの前世の記憶なのだ。とすると目の前の夢の背景に察しがつく。
―この風景を思い出したわ。
舞台は中世、海につながる宿場街。私は貧しい少女で、馬借宿に年限奉公に出されていたのだ<

全文PDFで16枚(原稿用紙換算41頁)。全文は左のブックマークから部族民通信に移動してください。
(今後も火曜、金曜(ないし土曜)に掲載を継続する予定)
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