国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

難しい名前か? それとも、ジャズメンの個性か?

2009年05月31日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
ジャズを聴き始めたころよく思ったのが、
早く「ジャズ初心者」を脱却したいということだった。
では、どうすれば初心者ではなくなるのか?

ディスクユニオンなどに行くと
大量のジャズCDやLPと出会う。
とかく目をやってしまうのが、
ジャズジャイアント達である。
確かにマイルスやエヴァンス、コルトレーンなど
聴けば初心者ながらに凄いことが分かる。
だが、それ以外にもたくさん名前も分からないような
ジャズメン達がいる。
それらを選んで買っていくお客連中は、
まさに「ジャズ」を知っているように見えてくる。

「そうか!名前の難しいジャズメンを聴けばいいのか!」

そんな中出会ったのが、ミシェル・ペトルチアーニである。
名前がちゃんと言えるようになったのはつい最近のことであるが、
通称「赤ペト」と呼ばれる、最初のアルバムを聴いた時、
ペトルチアーニのピアノには後を引くような
がっしりとした強さがあることが分かった。
最初に、「米にまだ芯が残っているような」堅さだ、と思った。
もちろん、悪い意味ではなく良い意味でである。
つまりは力強いのだ。

ペトルチアーニは障害のため伸長が1メートルほどしかない。
だがそんなことを感じさせないほどのタッチの強さと
異国的で甘美な世界観がいいのだ。
しかもピアノトリオで聴きやすい。
それに名前が難しくっていい。
人前で「ペトルチアーニ」なんて言うと
ジャズを聴き込んでいるように見えそうではないか?

でも、僕が聴いた時には、
ペトルチアーニはかなり有名で、
「何を今更…」的な感じになってしまっていたため自己満足にしかならなかった…

なんだか、名前だけで聴いてしまったような感じだが、
ミシェル・ペトルチアーニはぜひ聴いた方がいい。
今でも聴き続けている僕が言うのだから…

こっちもやっぱりそっとは歌ってくれない

2009年05月30日 | マスターの独り言(曲のこと)
そもそも昨日、
「ブルースをそっと歌って」を取り上げたきっかけになったのが、
最近、カーラ・ブレイのアルバムを聴き始めたことにある。

カーラ・ブレイの方は、
その名前は知ってはいてもなかなか手が出なかった。
ジャズはただでさえアルバムが多い。
1人のジャズメンが出すアルバムもハンパではない。
となると、やはり有名どころからの購入になってしまうだろう。
カーラ・ブレイまで手が回るようになってくると
いよいよこれはジャズも脳に回ってきたような感がある。

カーラ・ブレイのアルバムで
「ブルースをそっと歌って」が入っているのは、
『ディナー・ミュージック』なんかはどうだろう?
イントロでは何やら食事の風景のような音が入っている。
そこにカーラの芯の強いピアノが流れてくる。
じっくりと1音1音を確かめるように進んでいくが、
ふっとその音が止まり、食事の風景も消える。
次の瞬間、「ブァーン」と耳慣れない音が調子を上げる。
この時がたまらない。

オルガンだ!
オルガンなんて小学校の教室で聞いたぐらいなものであるが、
考えてみれば外国の教会には当たり前のように置かれている楽器である。
キュッキュと小気味よいブレーキのかかるような感じが、
全身に気持ちよい感覚を与えてくれる。
カーラは幼少期からオルガンを弾かされてきたこともあり
慣れ親しんだ楽器で
管楽器からエレクトリックピアノまでまとめ上げていく。
まさに才女である。

共演しているのはフュージョングループの「スタッフ」である。
といっても「スタッフ」を
僕は聴いたことがないため何とも言えないのだが、
それでもこのノリノリ感は爽快である。

そして根底に流れる「黒さ」!
泥臭いというか、密着させた肌の臭いというか、
とにかくジャズの枠組みを超えたジャズだ!

柔らかなフリューゲルホーンは、いつしか燃え上がり

2009年05月29日 | マスターの独り言(曲のこと)
聴いてみたくなる曲名がある。
「ブルースをそっと歌って」
何となく気になるタイトルではないか?
英語では『sing me softly of the blues』
よく直したものである。

そんな曲を取り上げたのが
トランペッター、アート・ファーマーで
アルバム名もズバリ『ブルースをそっと歌って』である。

アート・ファーマーのトランペットの響きは、
こもるようなやんわりとした感じである。
ぐっと引きつけるのではなく、包み込むような感覚だ。
このアルバムでは、トランペットではなく
フリューゲルホーンを使っていて、
ファーマーの元々持った柔らかさが更によく伝わってくる。

では件のタイトル曲はどうであろうか?
出だしはスティーブ・キューンの静かな切り口から始まるが、
すぐにファーマーがゆっくりと音をかぶせてくる。
それこそまさに「ブルース」の深みがある世界が広がる。
だが、リーダーのファーマーはどことなく違う。
ときおり先を急ぐかのように強い響きが聴ける。
2分30秒を越えるころから、ファーマーが燃え上がる。
他の楽器も一斉に盛り上げ、一気に頂点を迎える。

そこでキューンとソロが交代になるが、ベース音と共に
徐々に潮が引いていくかのように、一段抑えた演奏に変わる。
といってもキューンも盛り下がったわけではなく、
5分前後で力強く、エネルギッシュなソロを弾き、
後テーマへとつながっていく。
全体を引き締めているのは、ピート・ラロッカのドラムである。
静かな場所では適度なドラミングで、盛り立てるところは大いに盛り立てる。

柔らかなファーマーと硬めのキューン、
適度なリズムが組み合わさることで、
そっと聴くことのできないブルースの完成である。
ジャズメン達は燃えだしたら、そっとは歌ってくれないものなのだ。

聴け! ジャズの「黒さ」を感じられるテナーを

2009年05月28日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
最初にジャズアルバムを買うとなると
巷で知られたビル・エヴァンスやマイルス・デイヴィス、
デイブ・ブルーベックの『テイク・ファイブ』などが
最初の1枚になりやすい。
もしくは、コンピレーション物というのも考えられる。
僕の最初の1枚は『ジャズスタンダード集』だった。
幸か不幸か今は手元に残っていない。
最初の1枚でジャズに目覚める例は少ないのだ。

エヴァンスやマイルスなんかでもいいが、
ジャズを聴き始めた頃に
「お、ちょっと今まで聴いてきた音と違うぞ」
と感じられると、その後のジャズ人生も長い。
と、いうことで今日は、ジョニー・グリフィンの
『イントロデューシング・ジョニー・グリフィン』である。

まず聴いて感じられるのが、
グリフィンの吹く深みのあるネットリとしたテナーの音色である。
からっとした感じではない。でも、耳にしっかりと残る音色だ。
これこそがジャズの根幹である「黒さ」である。
どことなく全体に余裕もある。
とてもブルーノート初リーダーアルバムとは思えないほどの落ち着きがある。
6曲目の「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」の
漆黒の風が通り抜ける爽快なスピード感。
かと思うと7曲目の「ラヴァー・マン」では、
十分な間合いでじっくりと聴かせる。

元々、小柄でテナーには向いていないと言われていながらも、
テナーをあきらめきれずに極めてしまったグリフィンの不屈の音色は、
まさにジャズなのだ。
ある程度ジャズを聴いていればグリフィンとは必ず出会う。
パウエルであれ、モンクであれ、
グリフィンは難解極まるピアニスト達とも共演しているのだ。
決して大物に呑み込まれず、
自分の音を吹き続けるグリフィンはまさにジャズメンなのだ。

グリフィンを聴かずしては、
ジャズを聴いたと言うことはできないのだ。