国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

ONLY ONEの世界

2009年05月16日 | マスターの独り言(曲のこと)
ヘタな絵の代名詞のようにピカソの名前が出てくることがあるが、
あくまで基礎がちゃんとできていて、
その上で自己表現を追求していった結果が、
「ヘタっぽい絵」なのだろう。
つまりは「ピカソっぽい絵」は描けるかもしれないが、
それは「ピカソの絵」にはならないのだ。

そんな勘違いをされてしまうピアニストがいる。
セロニアス・モンクである。
その異様なメロディーは、一度聴いたら忘れられない。
一聴するとあまりにも単純で、
それこそ園児がピアノの上で手を置いて弾いたら
「こんなんできちゃいました」的な演奏に
ついつい僕らは、モンクが「弾けないピアニスト」だと思ってしまう。

僕はモンクを技術の高いピアニストであると同時に
音楽プロディーサー的なとらえ方をしている。
モンクの創り出す音楽は、
バンド全体の音が合致して音楽となっているからだ。
モンクはトリオ作品よりもテナーを入れた作品が多い。
テナーのもっさりとした低音に、
ちょっとヨタヨタと酔ったような自分のピアノを合わせて
そこに独特な世界を生み出している。
作曲者としてもモンクは有能で、
数多くの曲を生み出していることからも、
ミュージックプロデューサー的な才能の高さを感じる。

僕はモンクの「セロニアス」という曲が好きだ。
『アンダーグラウンド』には、1曲目に収録されているが、
そこにモンク独自の音楽に対する情熱を感じてしまうのだ。
自分の名をつけたその曲は、
「我が道を見つけたり!」とばかりに
同じメロディーが執拗に繰り返され、分解されていく。
頭の中に柔らかく跳ねる音が染み渡り、
いつの間にかモンクの不思議な世界に迷い込んでしまう。

「モンクっぽい」演奏はできるかもしれない。(僕には無理だが)
でも「モンク」の音楽は、やっぱり世界に1つだけなのだ。