国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

「カモメ」が導くユートピアへ

2010年06月23日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
今日の1枚は、ジャズ好きならばかならず一度は目にしたことのあるジャケットだ。
チック・コリアの『リターン・トゥ・フォーエヴァー』
通称「カモメ」である。
このジャケットは秀逸だ。
さすがECMと言わんばかりのジャケットである。
ユニクロでECMのジャケットTシャツを販売したことがあるが、
このTシャツがあったとしたならば(あったのかもしれないが)、
僕は5枚ぐらい買ってしまうだろう。
それぐらいこのジャケットは好きだ。

肝心の内容は、というと、
これがまたジャケットを象徴するかのように素晴らしくいい。
世間ではフュージョンの走りだと言われたりもするが、
ジャケットの海の明るさが象徴するかのように、
最初は少々暗めの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」から始まり、
静かな「クリスタル・サイレンス」と進み、
次の「ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ」にくると
ぱっと目の前の雲が晴れ、日の光が放射状に差し込んできたかのように
明るさが広がっていく。
日曜の午後、広いリビングでこの曲が流れていたならば、
優雅なひとときが過ごせること間違いなしだ。

「いーぐる」のマスター、後藤さんはこのアルバムが出た当時
「異様な開放感」をもたらしたとよく著書で語っている。
1972年、熱く燃えたぎった「政治の時代」が終わり、
やがてバブルへと向かって疾走していく。
そんな節目を表すかのようなアルバムでもある。
僕はその時代をリアルタイムで体感したわけではないのだが、
後藤さんの言う「異様な開放感」という感覚は妙にフィットしてくる。
もちろん後藤さんと同じとらえ方ではないのかもしれない。
でもこのアルバムには柔らかく温かな風が流れていて、
社会の雑事からも解放してくれるユートピアの姿を思い浮かべてしまう。

最後の「サムタイム・アゴー」から「ラ・フィエスタ」へのメドレーは、
南国の熱く、カラッとした空気が渦巻きとなり
全てを呑み込んでいきそうな勢いでスピーカーを突き抜けてくる。
こうしたアルバムを作れたチック・コリアは
やはりスゴイ人だったことを如実に表しているアルバムでもあるだろう。

最後に中山康樹氏のこのアルバムへのコメントを載せたい。
きっと僕は中山氏のこんな気持ちがうらやましいのだ。

『持っていたが、ジャズ喫茶で聴く“カモメ”は格別だった。
 みんなが同じアルバムを同じように聴く時代が懐かしい。
 そんなに悪いことではなかった。』  『JAZZ聴きかた入門!』(宝島社新書)

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1 コメント

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Unknown (新橋のマツ)
2021-06-11 13:28:14
はじめまして。
カツオドリ、カモメ、チック・コリアで検索していてこちらのページに11年後にたどり着きました。

販売していたみたいですね、ユニクロで。
自分も欲しかったです。

https://jp.bloguru.com/kai/72966/t/thread

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