国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

「トゥー・ベース・ヒット」どころか打席にだってそんなに入ったことがない

2011年04月16日 | マスターへの宿題
小学生の4年生のころだったと思う。少年野球を始めた。
3年間の主な成績は8番ライト、通称「ライパチ」君で、
打席に立ったのはたったの2回である。守備についたのが3回である。
基本的にはベンチウォーマーだった。

もともと運動は好きではないのだが、
近所の友だちがほとんど少年野球に入っていたため
「なんか入らないといけないのかなぁ」的なノリで入ったが運の尽きであった。
初日からすでに「辞めたい」という後悔でイッパイである。

さて、少年野球をやると小学生が月曜日に落ち着かなくなるという伝説がある。
どうも土曜の午後と日曜日が野球の練習という
いわゆる休み無し状態になってしまい、そのことがいい影響を及ぼさないそうだ。
事実かどうかは分からないが、
後年、小学校の時の先生と会った時、
「お前のクラスの担任の先生、毎日泣いていたぞ」という裏話を聞かされ、
我がクラスメイトの顔を思い出してみると
男子がほとんど半分以上少年野球に所属をしていたという結果があった…

先日、クニさんと飲んだ時にもこの話が出た。
彼のチームは凄腕のピッチャーがいて、市内で常に優勝をかっさらっていた。
となれば、当然か自然か、練習にも熱が入ってくる。
土・日を自由に過ごすということは無理に等しいだろう。
そのことが彼の記憶の奥底にもこびり付いていたようだ。

もちろん悪いことばかりではなかったと思う。
僕はベンチに座り続けていたことで、スコアーブックの付け方を教えてもらった。
勝負に対しても勝ち負けがあるということが分かり、
理不尽に勝ちだけを求めるのは止めた。

考えてみれば小学生も夢中になって野球をやっていたのだが、
それ以上に大人の方が夢中だったのかもしれない。

そんな思い出しかない少年野球だが、
一回だけ練習でもの凄くバットにボールが当たったことがある。
ピッチャーマウンドに立っていた監督の足下を抜け、二遊間を突き破った。
あれは本当の試合だったら
このアルバムの3曲目にある「トゥー・ベース・ヒット」となったのだろうか?

彼に波が襲いかかろうとしているのか? それとも彼が波を呼び出したのか?

2010年07月12日 | マスターへの宿題
今回の宿題は、フジロックとつながっている。
前にも書いたがフジロック初参加であるため
親友のガナさんに頼るところが多いのだが、
僕が参加を決めた理由はこの人にある。
レディオヘッドのボーカリスト、トム・ヨークである。

今回のフジロックではレディオヘッドではなく、
「アトムス・フォー・ピース」としての参加である。
ボーカルがトム・ヨークで、
他にレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー、
プロデューサーのナイジェル・ゴドリッチなどの混成バンドである。

その事前勉強としてガナさんが用意した宿題は、
トム・ヨークの初ソロアルバム『ジ・イレイザー』である。

まず、ここから取りかかるのはどうかとも思うが、
ジャケットが不思議な様相になっている。
6連のつづれおりになっていて、まるでノアの箱船のような大嵐の絵が描かれている。
CDはどこへあるのかと思わず探してしまうほどに
その絵はあまりにも完璧なアートワークになっている。

1曲目のタイトル曲でもう僕はノックアウトだ。
ズジャーン、ジャン、ジャンと鍵盤に重く振り下ろされる腕が想像できてしまうほど
力強く、重苦しいピアノの音は不健康的な現在の世相を表すかのように心地よい。
そこにのるヨークの甲高く、これまた病的な声。
いや、病的な声というよりも細い糸を紡ぐかのような線といった方がいいのかもしれない。

レディオヘッドのアルバムではコンピューター処理をされてしまい、
純粋な歌として聴くことのできないヨークの声が、
このアルバムの中では非常に生々しく響いている。
アルバムというコンセプトの中での作品というよりも
ヨーク自身をフューチャーしたアルバムに仕上がっていると思う。

これはすぐにノックアウトだ。
6曲目のバンド名にもなった「アトムス・フォー・ピース」では、
ヨークの裏声が流れる無機質なリズムの上に滑るようにのり、
美しく心奪われる曲になっている。

このアルバムを最初にかけたとき、窓の外の電線にカラスが一羽止まった。
何をするわけでもなく、こちらにおしりを向けている。
タイトル曲の「ジ・イレイザー」が流れ始めると、
それに合わせてカラスが鳴き始めたからびっくりした。
思わずカメラに納めて、ブログに載せようかとも思ったのが、
しばらくヨークの歌声に酔いしれてつくしたのか、
いつの間にか飛び立っていってしまった。
そこに思い出されたのか昨日の『海辺のカフカ』である。

弱々しく、「何か」に翻弄されつつも生きる毎日。
ぱっと晴れない曇り空のようなトム・ヨークの声は、
その向こうにある青空を僕たちにいつも想像させる。
あぁ、早くあの厚い雲が立ち去り、
目を焼き尽くすかのような青く光る空が僕らの目に前に現れないだろうか?

バンドの歴史にも「If」はないのだけど…

2010年07月04日 | マスターへの宿題
ようやく整いました!
マスターへの宿題第2弾ということで
今日のアルバムはストーン・ローゼズの2枚目であり、
事実上最後のアルバムとなった『セカンド・カミング』を取り上げる。

僕の印象では、1枚目よりもロックというイメージが強いアルバムになっている。
相変わらずギターのジョン・スクワイアとドラムのレニの存在感は大きい。
正直この2人だけいれば充分にバンドとして成り立ったのではないかと思う。

1枚目のアルバムから5年経ってのセカンドアルバムであるが、
その間バンドは苦境に立たされる。
まぁ、自業自得の感もあるのだが、
FM Revolver社に無許可でビデオクリップを作られたことに対する抗議のため
ペンキをぶちまけるという事件を起こし、裁判沙汰になってしまう。
有罪となり、所属レコード会社も変わることになり、
それらの影響もアルバム製作に大きな影響を与えたことは否めないだろう。

セカンドになって気づくことは、ボーカルのイアン・ブラウンである。
異様に線の細い声で歌い、ぐっと人を惹きつけるような感じではない。
歌の上手い歌手というのは当たり前だがたくさんいる。
だが、イアンの歌声というのは活力に満ちたものではなく、
バンドメンバーの一員だから歌っているという感が捨てきれない。
平たく言ってしまえば、歌が上手くないのだ。

だが、それを補ってあまりあるのが演奏力だ。
バンド全体の演奏力の高さが、ストーン・ローゼズの質の高さと比例しているようだ。
ファーストよりも格段と演奏力が上がり、音へのこだわりもでてきている。

セカンドアルバムが出た後、レニがバンドを抜け、
そして幼なじみで結成を誓い合ったイアンとジョンの、ジョンがバンドを抜けてしまう。
飛車角を欠いたストーン・ローゼズは、
2年後の1996年に解散へと到った。

僕はどちらかというとセカンドアルバムの方が聴きやすいと思う。
それはやはりロックというジャンルでとらえやすいからかもしれない。
だが、ここにいたってセカンドで「これ!」という曲がないことに気がつく。
確かにアルバム全体として貫いているものは分かりやすいのだが、
曲単位で見てみるとファーストの方が、よかったのかもしれない。

90年代にイギリスのロック界に大きな影響を及ぼすことになったストーン・ローゼズ。
もしバンド内の結束力が強く、
1つにまとまっていたならば影響を及ぼすのみに止まらず、
90年代のロックミュージックを牽引していくグループになっていたかもしれない。

80年代後期を駆け抜けたイギリスのロックバンド

2010年05月10日 | マスターへの宿題
さて、ガナさんから出された宿題に取りかかろう。
今日の1枚はイギリス、マンチェスター出身のバンド、
ザ・ストーン・ローゼズのファーストアルバム、
その名も『ザ・ストーン・ローゼズ』だ。

と、取りかかろうと思っても基礎データが分からないと話にもならないので
早速ウィキさんの出番である。
ふむふむ、1984年に活動を始め1996年には解散をしているそうだ。
実質の活動期間は12年と短いとは言えないが、
それでも長い方ではないだろう。

まぁ、僕のやるべきことは音を聴くことにあるから
アルバムをここ一週間じっくりと聴いてみた。
『ザ・ストーン・ローゼズ』が出たのは1989年ということだから
活動を始めてから5年過ぎている。
そこまで紆余曲折があったようだが、
アルバム全体から流れるのは、非常に軽快で耳当たりの良いメロディーである。
だが底を支えているのはドラマーのレニとギターのジョン・スクワイアだと思う。

まずレニのドラミングなのだが、とても力強く全体にエネルギッシュな活力を与えている。
メロディーは軽やかなれども、レニの叩き出すリズムは
ストーン・ローゼズ全体の音を決めているような気がする。

ジョンのギターはしっかりと曲を支えているだけではなく、
ピリリとメロディーのアクセントとなり、
曲を一段上げるために装飾をほどこしているかのように響く。

その2人の上に、ボーカリストのイアン・ブラウンの高めの声がのる。
線が細い感じもするのだが、
力強いドラムにアクセントのあるギターには、
逆にイアンのほっそりとした声が対比的に生きている。

気になったのはもしかするとメロディーには
サイモン&ガーファンクルの影響があるのかもしれない。
7曲目の「エリザベス・マイ・ディア」が、
「スカボロー・フェア」のメロディーを借用していることもあるのだが、
所々のメロディーが似通っているように思う。
2曲目の「シー・バングズ・ザ・ドラムス」なんかそんな気がする。
まぁ、「スカボロー・フェア」自体がイギリスの伝統的バラードなのだから
簡単に影響があるとは言えないが、
耳当たりの良いメロディーとしてサイモン&ガーファンクルが出てくるのはおかしくない。

僕が気に入ったのは、
「アイ・アム・ザ・リザレクション」と「フールズ・ゴールド」である。
長いが、ジョンとレニの演奏も楽しむことができる。

オリジナルアルバムは全部で2枚しかない。
1枚目から2枚目にかけてバンドの状況も変わり、
その音楽性も随分と変わってきているようだ。
80年代後期を駆け抜けたストーン・ローゼズは、
短くポッと燃えるように消えていってしまった。
だが、その後のイギリスのロックグループに大きな影響を及ぼしている。