国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

たった1曲でも立派に役割をこなします

2010年11月30日 | マスターの独り言(曲のこと)
月末は好例「今月のお気に入り」を取り上げるのだが、
今月はウィントン・ケリーとなっている。
月初めの挨拶の時に誰にしようかと決まっていない状態で、
「じゃあ、とりあえずハズレがないウィントンで…」
という安易な気持ちで決めてしまった。

ところが今月は全くウィントン・ケリーのアルバムを聴きたいと思わない。
これはウィントン・ケリーがダメだというわけではなく、気持ちの問題なのだ。
聴きたくないものを聴いても次に書くことにまで進まない。
数日間悩んで結局このアルバムを上げることにした。
マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』である。

ジャズにはよくあるのだが、
リーダー作で力が発揮されているというわけでは必ずしもない。
むしろサイドに回った方が演奏として素晴らしいという人もいる。
これまたウィントン・ケリーはサイドの方がいいというわけではないのだが、
最近ちょっと気になっていたのが、このアルバムの2曲目だ。

「フレディー・フリーローダー」と名付けられた曲は、
唯一ウィントン・ケリーがこのアルバムで参加をしている曲でもある。
『カインド・オブ・ブルー』といえば、
ジャズ好きならピアニストはビル・エヴァンスが思い浮かぶことだろう。
このアルバムを買う人はマイルスにエヴァンスの名前が
セットになっているから買うこともある。
ところがこのアルバムを収録する前にエヴァンスはマイルスの下を離れている。
そのためウィントン・ケリーにも声がかかったという経緯があるのだが、
結局、このアルバムはマイルスとエヴァンスの構想に基づいていたため
エヴァンスが呼び戻されて参加をしているわけだ。

ウィントンが呼ばれた理由は非常に簡単なことで、
当時ジャズ・ピアニストの中では何でもこなせる人として白羽の矢が立ったわけだ。
だが、エヴァンスのフィーリングまでは真似をするわけにはいかず、
結果として名盤『カインド・オブ・ブルー』には1曲だけの参加となっている。
確かに「フレディー・フリーローダー」は、
ピアノの音が軽やかに跳ねていて、リズムやグルーブ感が他の4曲とは異なる。
エヴァンスの間を作りながら流れていくかのような演奏と
ウィントンの軽やかに、でもしっかりとコクのある演奏とでは曲の印象も変わる。

ウィントン・ケリーは後にマイルス・バンドに参加をし、
マイルスから高い評価を得る。
ウィントンはどんな気持ちだったかは分からないのだが、
でもこの名盤に1曲だけ参加をしているのをどうか忘れないで欲しい。

この兄弟は凄すぎる!

2010年11月29日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
どうやって表現をすればいいのか分からないが、
とりあえずジャケットを見てびっくりだ。
よさげな年をしたアンちゃん2人が、一体どういう意図でか格好をつけている。
トランペットを持っている方のサングラスのアンちゃんはまだいい。
だが、サックスケースを持った方のアンちゃんはちょっと異様だ。
何の意味があってヘルメットをかぶっているのか、
着ている服のテーマは近未来か?

この2人はブレッカー・ブラザーズである。
トランペッターがランディ・ブレッカー(兄)で
テナーサックスがマイケル・ブレッカー(弟)である。
弟のマイケルの方はジャズミュージシャンとしてのアルバムも多い。
ここでの演奏はちょい聴きフュージョンと言われてしまうかもしれない。
確かにジャケットはちょっとジャズからはかけ離れているように思われる。

1曲目の「イースト・リヴァー」では声入りのこともあり、
王道的ジャズとは遠く、何を伝えたいのかがよく分からない。
だがちょっと待って欲しい。
声の隙間を縫うように響くひしゃげたテナーの音を。
ぐねぐねと曲がりくねる音は変態的という表現が合うほどに縦横無尽に駆けめぐる。
蛇がとぐろを巻くかのように音が中央に向かって巻上がるようだ。

何といってもドラムのテリー・ボジオの叩き出す力強いリズムが、
このアルバムの隠し味になっている。
テクニックをひけらかすわけでもなく、淡々としながらもその存在感があるからこそ
このアルバムのテイストはファンキーに盛り上がっているのだ。

3曲目「サム・スカンク・ファンク」の一丸となり飛び出していく演奏を聴けば、
このアルバムの音楽がちゃんとジャズというフィルターを
きっちり通っているのが見えてくるはずだ。
音は歪めども自由闊達なテナーの音が
いつしか快楽に変わっていることに気づくだろう。

黒いリズムがジャズ的でありながらも新しい音楽を創り出している

2010年11月28日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
マイルス・デイヴィスを聴く際に気をつけなければならないことがある。
60年代の前半と後半で全くその色が変わっていることだ。
デビューから60年代中期頃までマイルスの音楽はまさしく「ジャズ」だった。
60年代の後半に入ってくるとマイルスの音楽に変化が訪れる。
まぁ、変化と言っているのは僕だけで、
当の本人にとっては全くの自然の流れだったのかもしれない。

マイルスがちょうどエレキ楽器を使うようになってきたのもこの時期ぐらいからだ。
そもそも60年代も後半になるとロックではエレキ楽器の使用が当たり前になってくる。
70年にはビートルズが活動休止状態になることを考えれば、
ただ単にフォービートのジャズを演奏していただけでは、若者は取り込めないだろう。
しかもロックの影響でレコードも売れるものを求めるようになってくる。
ブルーノートやプレスティッジのようにジャズレコードレーベルにとっては
苦しい環境が生まれてくるわけだ。

「オレ様」的マイルスが「かっこよさ」を求めて音楽に変化が生まれるのも当然だろう。
よく言われるのがリズムの追求である。
『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ビッチェズ・ブリュー』などは、
一定のリズムに他の楽器が乗り、多様の変化を生み出していく。
『イン・ア・サイレント・ウェイ』では
グループを抜けたトニー・ウィリアムスを呼び戻している。
それだけリズムへのこだわりが感じされる人選だ。

よく『オン・ザ・コーナー』はその集大成的なアルバムで語られるが、
そこまでに積み重ねられてきたものは結果として後の
1976年、マイルスが休止状態になるまで生かされることになる。

『ダーク・メイガス』ではドラムとパーカッションのうねるようなリズムが
僕たちの耳をとらえる。
アル・フォスターはマイルス復帰後まで支えたドラマーであり、
エムトゥーメはその名を付けられた曲があるほどマイルスの70年代を支えた
パーカッション奏者である。
そこにまだ完全ではなかった2人のギタリストとデイブ・リーブマンが加わる。
いわゆる1973年バンドである。

前に『ジョン・レノンから始まるロック名盤』の時、
中山氏が「70年代は夢から覚め、現実的な部分が明らかになってきた時代」と
言っていたと書いたが、この時代のマイルスもまさに夢と現実の狭間にあるかのように
分厚く、かつ病的なリズムを従え、ひたすら何かに邁進していった様子が伝わってくる。

煙立ちそうなリズムの洪水はその時代を透かし見せているかのようである。

ある1人のミュージシャンに対する憧憬

2010年11月27日 | マスターの独り言(ジャズ以外音楽)
ふと気が付いてみれば後1ヶ月ほどで今年も終わる。
まだ今年を振り返るには早すぎるが、
それでもこの音の洪水を聴くと自ずと振り返ってしまうのだ。

ボブ・ディランの『偉大なる復活』
これはバイク事故、自主レーベル設立など様々な環境変化の果てに
1974年にザ・バンドと久々に行ったコンサートの記録だ。
今年の3月にディランは68歳で日本のライブハウスでのライブを行ったが、
このアルバムでは最も脂がのりきり、かなりの注目が高かったころの
エネルギッシュなディランを聴くことができる。

スタジオアルバムに比べるとあの独特のつぶれたようなしゃがれ声ではなく、
かなりはっきりと歌っているディランがいる。
つまりディランの第1関門である声の聴きやすさという部分ではかなり聴きやすい。
どの曲もアレンジをしているが、骨格はしっかりと残っている。
しかしディランのエネルギーは、何かをぶちまけるかのように刺々しい。
声は怒気を含んでいるかのようであり、
演奏も渦巻くかのようにスピーディーで、かつ乱暴だ。

会場のオーディエンスはディランを待ち望んでいた様子が分かるほど盛り上がっている。
今でこそロンドンで「ビートルズ・ツアー」に参加をしても
気づかれなかったという冗談のような話まであるディランだが、
このころのディランはアメリカを代表するような存在だったのだろう。
このコンサートのチケットは郵便で応募、抽選が行われたが、
予定枚数を遙かに超える応募があったそうだ。

僕は運良く3月に生のディランを聴くことができた。
そこには還暦を過ぎてもまだかっこよく歌い続けるディランがいた。
ディラン自身が歌うことを楽しんでいる様子が伝わってきた。
まぁ、僕にディランの何が分かるのかと言われればそこまでなのだが、
『偉大なる復活』の声はどこか性急で、
型にはまった自分をふるい落とそうとする若かりしディランだと思う。
どちらがいいという問題ではない。
「ボブ・ディラン」という1人のミュージシャンが
歩いた軌跡にただ魅了されているだけなのだ。

たまにはのんびりとすることも大切なのだ

2010年11月25日 | 休業のお知らせ
巷では急な冷え込みで、風邪やら胃腸炎やらが流行っているようだ。
寒くなってくると朝起きるのがきつくなってくるし、
その上体調不良となると大変なことだ。
たまにはのんびりと過ごすのも大切なことなのだ。

エルトン・ジョンの『グッバイ・イエロー・ブリック・ロード』を聴きながら…