国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

ジャズを聴く者を試す恐ろしき巨人 「ウコ・ポコ・ローコ」を聴くVol.1

2009年05月19日 | マスターの独り言(曲のこと)
この人の両手は一体何でできているのだろうか?
と、思うジャズメンがいる。
左手を振り下ろすたびに、重々しいコードが流れ、
右手は疾風のごとく鍵盤の上を滑る。
バド・パウエルの創り出す音楽は、
どんな時でもどんな場所でもいつも鬱そうとした重々しさを持っている。

パウエルらしさを表しているのが、
ブルーノートの『ジ・アメイジング・バト・パウエル』である。
そこで「ウコ・ポコ・ローコ」と
小学生なら間違いなく爆笑ものタイトルの曲を演奏している。
しかも立て続けに3曲連続で……
CDを順序よく聴き通そうとする現代人に浴びせられる
パウエルの恐ろしき洗礼。
この訳も分からないタイトルの曲を3曲続けて聴くことはまさに苦行である。
ところがある時、僕はこの「ウコ・ポコ・ローコ」なる曲に囚われてしまった。

テイク1の出だし、パウエルの豪雨のように激しく叩きつける音を聴いて、
そこにジャズの厳しさを知ることが大事なのだ。
ミュージシャンは自己表現のために演奏をしている。
聴者のことなど考えずに疾走するパウエルの姿こそ真の演奏家たる姿だろう。

出だしに合わせてマックス・ローチが激しく叩き出す。
最初から最後まで叩き通しで、リズムを取っている。
それが「あぁ、ちょっとはリズムで聴きやすくしているのかな?」
と思わせてもいるのだが、
全くパウエルは意に介した様子も見せずに
自分のことだけを進めていく。
ローチがとまどっているところも出てくる。

パウエルのソロは少しずつ明るい方へと向かっていく様相を見せ、
3分手前でうめき声が上がる。
テンションが上がってきたようだ。
だが右手は、ちょっとアドリブをさぐりながら進んでいく。
左手は低音のコードを執拗に繰り返す。

しかしテイク1は、どことなく中途半端の感じで終わっていく。