ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

毎回フィードバックすることの大切さ(授業経営学その2)

2010年01月27日 | 高等教育
前回のブログでは、鈴鹿医療科学大学の放射線技術科学科4年生に対する授業で、総合評価点が4.5を超えたことをご報告しましたね。昨日は、学生たちにとっては学生生活の最後の授業となる講義でした。

最後の授業の総合評価点はというと4.6台に突入して、今までの最高点だったので、一生懸命半年間講義をした甲斐があったなあと、ちょっとした達成感を感じました。1回の新しい講義の準備には、1日8時間の実投入時間×3~4日間くらいかかったように思います。毎年同じような講義を繰り返すのなら、これほどの準備時間はいらないのですが、新しい講義を組み立てようとすると、私の場合は、これくらいかかってしまいます。最後の講義の前夜は、朝の4時までかかってしまって、産婦人科の医者をやっていた頃の寝不足状態で講義に臨みました。

予備校の調査では、人気のある先生とそうでない先生を調べてみると、授業の準備時間に差があるということですね。人気のある先生は7時間以上を準備にかけているというデータがあるようです。やはり、それなりの評価を得た人は、他人の目に見えないところで時間をかけて努力しているんですね。

私が若かりし頃、大阪大学の教養教育時代に、有名な故犬養孝先生の万葉集の講義を受けたのですが、この講義はたぶん1000人以上の学生を集めて行われた大講義でしたが、万葉集の中の1つ、あるいは2つの歌を、芸術的に解説されるすばらしい講義でした。名講義として講義の録音テープが販売されていました。たぶん、この頃学生による授業評価がなされたら、1000人の学生が1000人とも5点満点をつけたと思います。

ただし、このようなすばらしい講義は、芸術の域に達していて、誰一人としてまねのできない講義です。では凡人はどうすればいいのでしょうか?

今回は、学生の意見を毎回聞いて必ずフィードバックすることの大切さをお話ししましょう。企業の経営では、この”学生”という言葉を”お客様”に置き換えていただいたらいいと思います。学生の意見を聞くことはちゃんとやっているよ、とおっしゃる先生も多いと思いますが、「毎回」ということと「必ずフィードバック」ということがポントで、これをしっかりと実行しておられる先生は、まだまだ少ないのではないかと思います。

私の場合は、毎回アンケートをとり、授業内容への質問、私の授業に対する評価、そして大学への意見や要望を聞き、次回の授業で必ず何らかの回答をします。ただし、いくら顧客のことを第一に考えるといっても、すべての要求に応えることはできません。大切なことは、できることはできる、できないことはできない、というふうに、正直に回答することです。意見や要求を聞きっぱなしでフィードバックしないと、意見の数が一気に少なくなりますし、アンケートがかえって逆効果になってしまうことさえあると思います。

最後の授業でも、学生からたくさんの意見や感想をいただきました。そのうちのごく一部をご紹介しましょう。

「今日はスライドが少し早くついていけなかったです。」

いつもながらの改善すべき点の指摘ですが、こういう意見を最後の授業の時まで、率直に言っていただけることはたいへんありがたいと思わないといけないですね。

「ありがとうございました。アンケート結果を発表し、その後どうなったのかがわかったので、きちんと、まじめにアンケートを書くことができました。」

「先生の授業でやっているようなアンケートを全学科で行ってほしい。」

「今まで、様々な質問に一つ一つ丁寧にお答えいただいてありがとうございました。非常にわかりやすい講義でした。」

「生徒の質問などを次回の授業に反映していただけるのは生徒にはうれしい限りです。」

このように、毎回のアンケートをフィードバックすることが、学生たちから高く評価されていることがわかりますね。

「大学生活で一番楽しい授業でした。」

「今回で先生の授業が最後だと思うと寂しいです。大学生活の中で一番わかりやすい授業でした。短い時間の中でたくさんのことを学べたと思います。ありがとうございました。」

「今まで楽しい授業、分かりやすい授業ありがとうございました。後輩のためにも豊田先生がたくさんの授業をやってもらえたらうれしいです。本当にありがとうございました。」

「もっと早く先生の授業を受けたかったです。ありがとうございました。テストもがんばります。」

「先生の授業はわかりやすくためになりました。豊田先生の他の講義も受けてみたかったです。」

「先生の授業受けれてよかったです。1番の先生だと思いますし、大好きでした。今までありがとうございました。」

「先生にもっと早く出会いたかった・・・」

「とてもいい講義でした。豊田先生のように私達のことを考えて講義してくれる先生が増えることを望みます。」

学生のことを第一に考えて努力すれば、ちゃんと学生達もわかってくれるんですね。
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