ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

眠たくない講義をするためには?(授業経営学その1:大声の代わりに国家試験問題)

2010年01月21日 | 高等教育
さて、今日は授業の改善のお話をしましょう。

2009年の4月に三重大の学長から鈴鹿医療科学大学の副学長に移って、久しぶりに学生に講義をし始めて1年近くが経ちました。前期は理学療法学科、医療福祉学科、鍼灸学科の2年生約140人に、そして後期は放射線技術科学科の4年生約90人に「救急医学概論」というテーマで講義をしています。

私は毎回の講義で学生さんに授業の評価をしていただいており、その結果は昨年の私の“ある地方大学長顧問のつぼやき”ブログでもご紹介しましたね。5段階の評価点で、“総合評価”が最初の頃は3.6~3.8だったのが前期の終了時には4.2に改善し、後期は4.2から始って、4.4台にまで改善しています。そろそろ限界に達して、もう何をしてもこれ上の改善は難しいと感じられる日々だったのですが、この1月19日の講義で初めて4.5台を突破したので、皆さんにご報告しておきましょう。

昨年の4月から講義を始め、さまざまな試行錯誤の結果、昨年の12月15日の時点では以下のようなスタイルの講義になっていました。

①基本的に板書はせずにスライドとプリントを使う。

②前回の授業のアンケート結果を学生に説明。授業の良かった点、改善すべき点、大学への要望など。そして、その意見に対する私の回答を示す。

③今日の授業の目的と目標、簡単な時間配分の提示。

④前回の授業内容に関する質問への回答。(授業中、“質問はないですか?”と聞いても誰も質問をしないんですが、毎回の授業でアンケートをとると、けっこうたくさんの質問をいただきます。時にはたいへん鋭い質問があり、私自身がとても勉強になります。)

⑤プレテスト。(これは、この日の授業で説明することについて、教科書なども参考にして、考えていただく問題です。学生に対して、学習への動機づけを行うのが目的なのですが、一応、解答用紙は回収します。)

⑥プレテストで考えていただいた問題を中心に、この日のテーマをスライドで説明。

⑦スライド原稿のプリントのところどころに空白が作ってあり、学生はスライドを見ながら、空白を埋めていく。

⑧適当な動画があれば、動画を挿入。診療現場のエピソードをできるだけ交える。

⑨最後に国家試験レベルの問題で知識の確認のテスト。

⑩授業のアンケート調査。一つは無記名で、5段階評価の点数、私の授業に対する感想や大学に対する要望事項。もう一つは記名で、この日の授業で何を身に付けたか、そして、わからなかったことは何かを記載。

学生からの改善意見で、良いと思ったことは次の授業からさっそく取り入れます。だから、学期の最初と最後では、授業のスタイルがずいぶんと変化していきます。

こんな努力の結果、総合点ではまずまずの点数をいただけるようになったのですが、なかなか改善をしない評価項目が「眠たさ」でした。私の授業評価項目は「わかりやすさ」「眠たさ」「熱意」「総合評価」の4つで、いたって簡単です。「眠たさ」は、一般的な授業評価には見当たらない特異なものとお感じになるかも知れませんが、私はけっこう重視しています。その理由は、理由が何であれ、眠たければ教育効果は大きく低下すると考えるからです。

実は、この「眠たさ」の改善がなかなかできませんでした。

昨年の11月19日に三重県の四日市で開かれた日本糖尿病妊娠学会で、吉田 俊英先生(京都市立病院糖尿病代謝内科部長)の「肥満症」のご講演をお聞きしたのですが、吉田先生は、聴取が眠くなりかけたころに、何度か突然大声を出されます。その度に聴衆はびっくりして目を覚ますわけです。患者さんに肥満治療の指導を1対1でされる時にも、目の前でこっくりこっくりされるので、突然大声を出されるとのことでした。1対1で、どうしてこっくりこっくりするの?と不思議に思う人もいるかもしれませんが、肥満の人は睡眠時無呼吸になりやすく、昼間に眠気を催しやすいということがあるんですね。

なるほど、大声を突然出すのはいいアイデアだと思って、さっそく私の授業で試してみました。ところが、学生のアンケートでは、豊田先生が怖く感じるのでやめてほしい、という意見が出たので、1回きりでやめました。

そんなことで、眠たさを改善するための良い方法がなかなか見つからず、壁につきあたっていたのですが、12月25日の授業から、国家試験問題を授業の途中で学生に突然やっていただいたところ、これが、学生にたいへんうけて、「眠たさ」の点数も見事に改善しました。つまり吉田先生の“大声”の代わりに、“国家試験問題”を使ったというわけです。

学生からは、授業の途中で運動をしてはどうかという意見もあったので、ストレッチをしていただくのも眠気覚ましに効果的かもしれませんね。読者の皆さんからも、他にもいいアイデアがありましたら、ぜひコメントお願いします。


豊田流の授業の基本は、難しい教育理論ではなく、“顧客(学生と学生を受け入れる社会)を第一に考えてPDCAサイクルを回す”ということで、これはまさに、企業の経営の基本と同じですね。











コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本の医学研究論文数のみじ... | トップ | 毎回フィードバックすること... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

高等教育」カテゴリの最新記事