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『ミスティック・リバー』、観ました。
3人の幼なじみの少年たちが体験した忌まわしい誘拐事件。25年後、それぞれが
愛する者をもつ3人は悲惨な殺人事件を通して再会する。一人は娘を殺された
父親として、一人は刑事として、そしてもう一人は容疑者として‥‥。
観終わってしばらく動けない‥。 ボクを静かな感動が包みこむ。久々に
重量感のある映画を堪能した。映画は幼なじみ3人に降り掛かる殺人事件を
中心に展開する。勿論、これを「サスペンス映画」と呼ぶのは構わない。
しかし、この事件の‥、この映画の‥、底辺にあるのは紛れもなく“人の
哀しみ”だということを忘れてはいけない。時が癒せぬ傷を胸にしまい、
もがき続ける男たち‥、そこには“涙”があり、“憎しみ”があり、“怒り”がある。
もう戻すことの出来ぬ過去と闘いながら生きていく、三者三様の哀しみに
暮れるドラマがあった。しかも、彼らには愛する女性があり、それぞれが
「夫を裏切った女」、「信じるしか出来なかった女」、「顔のない女」として
“もうひとつの三者三様”を展開する。僅か2時間20分にも満たない上映時間に
6つの人間ドラマを完璧に描いてみせる、、今更ながら監督クリント・
イーストウッドの“演出力”に感心してしまいました。
そして、この映画を観てボクが痛烈に感じたもの。それは『目撃』でも、
『スペース・カウボーイ』でも、『ブラッド・ワーク』でも、これまで一貫して
“暴力”を描かなかったクリント・イーストウッドが今作ラストで初めて“暴力”を
描いたこと。これは偶然なのか、必然なのか、彼の変化の意味するものは‥?、
つまりボクは思うのです、その変化こそが“今のアメリカの変化”なんだと‥。
一度ベトナムの悲劇を経験してなお再び“戦争”に突入したアメリカ‥‥、
この主人公もまたかつて人を殺し、愛するがゆえに今再び“復讐”へと向かう。
何だかボクにはこの映画そのものが“これからのアメリカ”を暗示しているように
感じました。
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そして数日後‥、
調べてみれば、ボクの感想にも書いた「ジミー=アメリカ」説というのは
他の映画サイトにも何人かが指摘しているのを見付けました。これはボクだけの
思い込みではなかったと安心しつつ、また一方でボクが考えつかなった
プロットから読んでいくそれらの視点に感動。例えば、主人公の背中にある
十字架のタトゥーは「聖戦の名のもとに戦争を始めたアメリカ」を象徴し、
加害者による被害者家族への毎月の仕送りは「全ての罪をお金で解決しようとする
アメリカ」を指しているという指摘。ボクはこういう映画の見方が出来る人って
尊敬するし、そう思えばボクの映画の見方なんてまだまだ浅いと痛感しました。
これは単に表面上の物語だけを追う映画じゃない。
その解釈が無限に広がりゆく作品だ。この勉強する機会を与えてくれた本作に‥、
そしてクリント・イーストウッドに‥、改めて感謝。
移転したんですね。
さっそくもう一度トラバします。
きのこスパさんの解釈なるほどですね。現実のアメリカ社会とのリンク。こういった方法による批判が出来るのも映画のいいところですね。
自分と違った解釈を教えていただいて感謝です。
本作では、監督に専念したクリント・イーストウッドの作品だけあって豪華キャストの持ち味を十分に活された傑作だと思います。
特に、最愛の娘を殺害された父親ジミーを迫真の演技で熱演したショーン・ペーンと、子供の頃に受けた暴行によりトラウマとなったデイブをリアルに演じたティム・ロビンスの演技がとにかく素晴らしいですよね。
是非、多くの映画ファンに観て欲しい作品だと思います。
ということで、これからも、どうぞよろしくお願いします。
なお、TBもお願いします。