母でいることの幸福、喜び、不安、痛み、そして子どもへの思い―親であることのすべてがつまった絵本。
――普遍の真実が、あたたかな絵とシンプルな言葉で語りつくされ、だれもが一生の宝物にしたくなるような絵本です。母親や、これから母になろうとしている女性、巣立とうとしている子どもたち……それぞれがそれぞれの読みかたをできて、味わえます。
文~アリスン・マギー、絵~ピーター・レイノルズ、訳~中川ちひろ
あのひ、わたしは あなたのちいさなゆびを かぞえ、そのいっぽんいっぽんに キスをした。
はじめてゆきがふったひ、そらへむけて だきあげた。あなたのまあるいほっぺのうえで、ゆきがとけていった。
みちをわたるとき、あなたはいつも わたしのてにしがみついてきた。
いつのまにやら あなたはおおきくなって、わたしのあかちゃんは、わたしのこどもになった。
すやすやとゆめをみているあなたをみながら、わたしもときどき ゆめをみる…
いつかきっと、あなたもとびこむのだろう。ひんやりすきとおった みずうみのなかへ。
ほのぐらいもりへ さまよいこむことも あるかもしれない。
うれしくてたのしくて、ひとみをきらきらかがやかせる ひがきっとある。
しんぞうがはりさけそうになるまではやく、とおくへ、かけていくひもくるだろう。
もっとたかく、もっとたかくとはずみをつけて、めまいがするほど、たかくまで、じぶんをためすこともあるだろう。
かなしいしらせに みみをふさぎたくなるひも あるだろう。
あなたがかぜにむかって たからかにうたううたを かぜがとおいところへ はこんでいく。
やがて、せいいっぱいてを ふりながらしだいに とおざかっていく あなたを みおくるひがやってくる。
あなたはふりかえり、あんなにおおきかったいえが とてもちっぽけに みえることにおどろくだろう。
わたしのまえで こどものやわらかなかみのけを とかすかもしれない。
そうしていつか ながいとしつきのはてには、あなたじしんのかみも ぎんいろにかがやくひがやってくる。
わたしのいとしいこ。そのときは、どうかわたしのことを おもいだして。