本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『算数オリンピック問題集』算数オリンピック委員会

2006年04月22日 | 中学受験関連【算数・国語参考書など】

                       
 
最近特に注目が集まるようになってきた、『算数オリンピック』。学校の勉強で忙しい生徒には、参加する余裕がないかもしれませんが、たとえ、出場しなくてもここで出題される問題は思考力を問う良問ばかりで、知っておいて決して損はないと思いますので、紹介します。

少し前話題になった、宮本哲也先生の『強育論』や『合格パズル』などとも方向性は似ているのではないでしょうか。というのも本書のコンセプトは宮本先生と同じ 【大切なのは、『考える』こと】 と書いてあります。そして【学校の学習内容に関わらず、特別な訓練や予備知識の有無によって有利不利が生じない、本来の思考力を養う、教科書の一歩上の「算数力」「数学力」が試されます。】 と解説にあり、さらに 【じっくり考えればだれでも解ける!】 ともあります。

算数オリンピックは小学校6年生以下、ジュニア算数オリンピックは5年生以下、ジュニア広中杯が中学1・2年で、広中杯は中3が対象です。本書はそのすべての過去問、解答解説が収録されており、かなりのボリュームです。日本だけでなく、アジアを中心に世界から子どもたちが参加しています。個人特訓教室でも参加を促していますが、年に1度だけですし、本書は書店で購入できないのでなかなかうまく行きません。(直接申し込む)

さらに、本の値段を云々言うことは避けたいのですが、さすがに本書の3000円(プラス送料500円)、大会参加費4000円は少し高いのでは。専門書ならまだしも、算数、数学の普及、国民の思考力アップという明確なビジョンがあり、文部科学省が認定する『学びんピック』に登録されているのですから、無料とは言いませんが、気前よく、英検や漢検のテキストくらいの負担で本書を配布できないかと思うのです。

http://tokkun.net/jump.htm

『算数オリンピック問題集』算数オリンピック委員会 (03-3371-2655)
295p:3千円(送料5百円)




違う本ですが

 ↓ 
算数オリンピックに挑戦 00~03年度版

講談社

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『歌って覚える英文法完全制覇』 泉忠司

2006年04月22日 | 大学受験【英語】参考書など


                        

本書は“超人気カリスマ大学講師”と呼ばれている、泉忠司先生の著作です。何と言っても、歌って覚えるというのが、目新しい作戦で、CDに文法上の構文が歌として11曲も入っており、かなり売れています。ただ、残念ながら、私にはとても生徒には薦められないものでした。

まず、CDですが、プロの歌手と泉先生ご本人が熱唱しておられるのですが、ネイティブではないので発音が悪く、カラオケを聴かされている気分です。ジェイポップだと割り切ればまぁ楽しめますが、さすがに英語の教材として薦めるのは難しいと私は考えます。センター試験でリスニングが課せられている時代ですから…。

本の方ですが、英語が苦手な生徒を対象としているためか、英文法は簡単だということを強調するためか、基本のところや、考え方自体は記述もわかりやすく良いのですが、やや高度なものに対して解説が少なすぎます。これを『史上最強の一冊』と呼ぶのはかなり苦しい。

明らかに誤記だと思われるものもいくつかあります。例えば、P134の大きな図のまとめ、せっかく良いまとめ方なのに、『副詞相当語句』のはずが、『名詞相当語句』になっていて、偏差値30台の生徒ではまったくわからない恐れもあります。また、P180の“仮定法のif節にwillが入る場合”というところでCDの一節を抜き出し“If you would give me another chance, ~”とあり、“この文のようにwillが入ることがあります。”となっていますが、この文にはwillが入っておらず、willとwouldの違いを説明するところですから、きっと生徒は混乱します。またif節のwillを用いた文を仮定法と言ってしまうのも、私とは見解がまったく異なります。

仮定法に関して、さらにp176に“If you insisit that saying goodbye is for the best, I'll sail this ship alone."のCDに入っている文を出し、これを動詞が“現在形”であることから、【仮定法現在】と解説していますが、これでは中学で習う副詞節で現在形を用いる形がすべて、仮定法現在となり、【時、条件を表す副詞節だから現在形を使う】という文法事項とどこが違うのか、これも理解不能になってしまうと思います。仮定法現在とは、『現在形ではなく“原形”』を使わなければならない形の英語のことをいうのが一般的でしょう。

他にも多くの疑問をはさみたくなる記述が散見されます。いわゆる「くじらの公式」について “ただ、はっきり言ってこの構文は大学入試以外で見たことがありません。” とありますが、もしこれが本当なら、失礼ながらかなり英語に触れる量が少ない方だと感じます。

(ちなみに今年の京大入試にもくじらの公式と仮定法現在を含んだ以下の和訳問題が出されました)

『If rational examination revealed that we had been unfairly treated by the community, philosophers recommended that we be no more bothered by the judgement than we would be if we had been approached by a confused person bent on proving that two and two amounted to five.』

(recommended that we be の be が仮定法現在)

生徒の負担を軽くしたい、効率を上げてやりたいという意図で、なかなか良い記述もたくさんあるだけに、残念な一冊になってしまっています。同じ文法説明なら、ドラゴンイングリッシュの竹岡広信先生の著作の方に軍配を上げざるを得ないと感じます。

http://tokkun.net/jump.htm


歌って覚える 英文法完全制覇(CD付)

青春出版社

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