キムタツこと木村達哉先生・ドラゴンイングリッシュの竹岡広信先生らのビッグネームの本に負けず、本書もかなり売れているようですね。今回は本書の感想です。著者は予備校講師の岡本直樹先生です。紹介には、『大手予備校にて、難関大学リスニング講座担当、(中略)最新の情報と傾向をおさえ、その方法論は日進月歩で進化を遂げている』とあります。
表紙には、『超効率的メソッドで学習できる!11日間という短期間で、国公立大2次、私立大入試にもバッチリ対応!』。テキスト自体は非常によくできていると思うのですが、この売り方は誤解を招くのではないかという印象を受けました。
というのは…、本書にはCDが二枚付いていて全部で110分ですから、一日あたり10分くらいの計算です。ところが、すべての問題に繰り返しの指示があり、【最低限】としてその“繰り返しの回数”を守るように書いてあるのですが、それがその日の英文によって異なっています。
例えば、第5日は、5つの短文のセットが3つあります。ディクテーションを終えた後にセットごとの指示があり、
2回目の放送で聞き取れない部分がある人は、聞き取れるまでCDを何度聞き直してもかまいません。とあります。そしてスクリプトを見たあとの指示です。
①書き取れなかった部分を解答スクリプトにマーカーペンで印をつけてください。
②CD1:トラック16を聞いて、マーカーの音と意味をしっかりと頭に焼きつけてください(6回)。
③今度はスクリプトを見ながらCDの音声と同じ速さで自分でも音読してみましょう(6回)
これを3セットやるだけでも大変ですが、その後の指示は
【まとめトレーニング】
①今日扱った問題が完全に書き取れるまでCDを聞いてください。
②CDを聞かずにすべての問題をスクリプトを見ながら音読してみましょう(10回ずつ)。発音の確認のためにCDを聞き直してもかまいません。
とありますので、これを最低回数と実施しても最初から数えれば、25回程度は聞いたり、音読したりすることになり、書いたり、採点をしたり、単語の意味を調べる時間を全部省いて、計算してもCD1日分10分とすれば、250分です。4時間を越えるわけです。いくらなんでも最低”で4時間~5時間、単調な15の短文を繰り返し聞き発音するのは苦痛でしょう。前半は一人の男性の声がずっと続き、ナチュラルよりやや遅めのように感じますので、余計に単調になります。
使い方説明に、まとめて時間の取れない人は複数の日に分けてもよい、とありますが、当然でしょうね。徹底した反復で、これは本書が謳うような“超効果的、日進月歩のやり方”ではなく、皮肉なことにもっとも古典的なやり方のように感じます。
誤解していただきたくないのは、内容は良いのですよ。リスニングに特化して、訓練したい、根性のある生徒には。文法や構文などの説明はほとんどありません。練習問題もごくわずかです。発音記号からはじめてくれています。破裂音、摩擦音、鼻音などの説明、連結、同化、脱落などの例を非常に詳しく、しかも分かりやすく出ています。
ただ、やはり11日間で、発音記号から、国公立二次レベルまで引き上げようという構成が無理というものです。せっかくの良い内容が損なわれてしまうような気がして残念です。むしろリスニングを指導する先生方がその参考にされる方が向いているかもしれません。
http://tokkun.net/jump.htm