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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『官僚病の起源』 岸田秀

2006年10月21日 | 政治・経済・外交
 

Kannryou病.JPG


税金の無駄使い、公務員や政治家の不祥事が後を絶ちません。それはいじめがなくならないとか、談合がなくならない、選挙違反がなくならないのと同じように、日本人社会の性のようなものかもしれない。そんな問題意識で本書を読みました。

岸田氏の著作は、以前に 『一神教VS多神教』 という、宗教を扱ったものを取り上げましたが、岸田氏は精神分析が本職だそうです。本書では、専門の精神分析の手法で、国家の行動とか、特性や、その歴史を説明しようというのです。


日本では、特に権力者や官僚は、清潔で有能だという共同幻想を昔から持っていると言います。なるほど、水戸黄門や遠山の金さんなども、結構好きでした(笑)。あんな人物は昔からいないのに、それをいるのではないかという幻想にかかっているために、それに甘えた官僚の不祥事が続くのだという指摘です。

太平洋戦争で陸軍(官僚)は国のためだと言いながら、陸軍という自閉的組織のために動いたし、エイズ被害を引き起こした厚生省や、外務省の裏金問題、旧大蔵省の接待漬け事件など、どれをとっても問題の根っこは、自分の組織だけを守るという、同じ原因だということです。

いじめを苦に自殺した生徒に対する、校長、教育委員会の態度も全くそのとおりですよね。“先生は立派だ”という共同幻想を日本人は持っていて、教員はそれに甘えているのでしょうか。


さて、小さな自閉的組織(共同体)が、その利益のために、より大きな組織を犠牲にしたり、欺いたりするという事例はどこにでもありそうです。派閥があって党がないとか、省あって国なしの縦割り行政で国の財政を脅かすなど、枚挙に暇がありません。

なるほど、ここまでは分かります。

“縦割り”、“たこつぼ型組織”、“縄張り争い” の弊害は、多くの評論家などが指摘してきたことでもあります。ではなぜ日本人は組織の下部に自閉的組織を作るのか、これが本書の主題です。


国全体が自閉的になれば、それは鎖国をしているということになる訳ですが、その下部組織に至るまで、自閉的組織を好む理由をさぐるために、日本の建国にまでさかのぼって、そこで培われた日本人のメンタリティーを分析するのです。

筆者によれば、日本という国は、強大な唐に対抗するために、そもそも割拠していた自閉的小集団(豪族)をまとめる必要に迫られてできた。その中で一番、無難な存在が、天皇のはじまりであり、昔から、天皇は武力で地方を統一するような存在ではなく、その成り立ちから象徴的なものであったと考えます。

各集団は、自閉的なまま、つまり思想、文化を統一しないまま、より大きな組織を作るという特性があるというわけです。 平たく言えば、仲間だけで仲良くやっていたいのに、事情があって外界と付き合う必要のために、大きな器を作ったということですか。

他国の場合は、常にある集団が別の集団を虐殺したり、吸収したりしながら、一つのまとまりへ進む経緯で、国家が統一されて行きますが、それとは対照的だと指摘します。

特にアメリカなどは、先住民を大虐殺し、それを文明の名の下に正当化するという欺瞞で建国した歴史があるために、その後も、ベトナムや日本、今はイラクでしょうか、他民族を虐殺するということを繰り返さざるを得ない(反復強迫)。

だから原爆投下を絶対に謝ることができない。謝るということは建国以来の米国の歴史のあやまちを認めることになるというわけです。(すごいですね。どうですか?この分析)

フランスは、自由、平等、博愛などと言ってはいても、歴史を見れば、フランス人ほど、自らのリーダーにナポレオンドゴールなど強い独裁者を好み、育ててきた国はないと指摘します。共和制はいつも短い期間しか続かない。だからこそ、シラクは世界中が敵になろうとも、それに屈して 核実験をやめる訳にはいかないと。


アメリカのモンロー主義(孤立主義)は大陸への他国の介入を許さないという現実的な権力主義の現われで、中国は常に、中華思想、すなわち他民族はすべて朝貢する、東夷西戎北狄南蛮といって、すべて蛮人であるという、自民族優越主義だと、“精神分析”するわけです。



実に、新鮮な指摘で大変おもしろく読みました。まだまだ続きが読みたいと思います。ただ、まだ個人と国家の行動が、完全に同じ精神分析で説明してしまっていいのだろうか。う~ん、どう思われますか?日本は近代以降特に、精神分裂状態なんだそうですよ。

じゃあどうしよう??? ここまで言っちゃうと絶望的、身もふたもないじゃないか。だって悪いことした役人に、『まぁ日本人だからな』とも言えないし(笑)。そういう一冊でした。精神分析に興味のある方にお薦めします。怒り出す人もいるかもしれません。



http://tokkun.net/jump.htm 


官僚病の起源

新書館

詳  細


『官僚病の起源』岸田秀
新書館:239P:1325円



P.S.
 どれほど本書が “みもふたもない” のか表す好例が、日本人の英語に対する記述です。外的自己と内的自己が分裂しているとしています。引用します。

日本人がどれほど勉強しても英会話が下手なのは、能力が不足しているためでも、教授法がまずいためでもなく、本心は英語なんかしゃべりたくないからである

く~、ここまで言い切るか。誰か、なんか言ってやって下さい(笑)。



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『首相官邸』 江田健司 竜崎孝

2006年09月27日 | 政治・経済・外交
安倍内閣が発足し、塾講師としては、当然、文部科学大臣に注目していました。小泉首相時代はころころ変わった文相ポスト。公教育に力を入れると、発言していた安倍氏が指名したのは、伊吹文明氏でした。

一応、派閥の領袖といわれるだけに、ある程度“大物”といえるでしょうが、経済の専門家のようです。ただ、山谷えりこ氏が教育再生担当の首相補佐官になり、よくコメント下さる、情報通の kazuさん が、大丈夫!と太鼓判を押していただきましたので安心です(笑)。


また、塾の仲間がブログで書いていますので、よろしければ、ご覧下さい。

 → 『塾講師の考える教育ニュース

 
さて、新内閣発足で、例によって官邸の階段で記念撮影が行われました。本書はその官邸を紹介した一冊です。すでに2002年から新官邸が機能しておりますが、この本は旧官邸を取り上げたもので、正式には“総理大臣官邸”と言うのだそうです。

著者の江田健司氏は、よくテレビに出ていますのでご存知でしょう。一方の竜崎氏は政治記者です。江田氏は橋本内閣当時の切れ者首相秘書官として、竜崎氏は新聞記者として、官邸を走り回っていました。


旧官邸は、昭和4年、田中義一首相から、小泉首相まで、73年間も、政治や外交の表と裏の舞台だったんですね。まさに昭和の激動期、日本の政治シーンに深く関わってきた建築物です。

そして、もちろん、その間には、戦争もありましたし、5.15事件2.26事件の現場でもありますから、死者も出ているわけです。だからでしょうか、幽霊が出るという噂まであるそうです(笑)。


本書では、あらゆる部屋の説明、食堂のメニューから、衛視、秘書官、官房、総理の一日、スケジュールの決め方、記者会見、閣議、夜の会合などなど、首相官邸周辺のあらゆる情報をごく基本的なところから説明してくれています。 使う立場から、構造など、ところどころ問題点なども指摘され、とてもわかりやすい本です。


ところで、首相官邸のHPにある、官邸バーチャルツアーというのをご存知でしょうか。本書を読んで、これを見ますと、歴史の重みを感じて、ぜひ見学したい!となるのではないでしょうか。一度ご覧になってみてください。 (新官邸のツアーもあります) →http://www.kantei.go.jp/jp/vt2/index.html

中学生以上の社会科の教材にしてもおもしろそうです。



P.S.  なにしろ、政府のしくみはわかりにくいですね。生徒諸君は、ちゃんと1府12省庁や、担当大臣が誰か、言えるかな。定期テストでも、本番の入試でも、時事問題はどんどん出されます。久しぶりの新総理ですから、狙われますよ。

例によって、genio先生に、閣僚の一覧と、入試のポイントをまとめてもらいました。

要チェック! →『 入試に出る!時事ネタ日記 


http://tokkun.net/jump.htm 


首相官邸

文藝春秋

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  ■■ はい、チーズ!   ■■ 

官邸での記念撮影、さすがに緊張の中にもうれしそうでしたね。まさに晴れ舞台です。受験生なら、合格したあと、あこがれの学校の入学式での記念撮影のようなものでしょうかね。センター試験まで、あと4ヶ月。みんながんばって、新閣僚に負けない笑顔の記念写真を絶対に残そう!
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『劇画 内閣総理大臣伝』よつや文(作) 原田久仁信(画)

2006年09月25日 | 政治・経済・外交

 

いよいよ、安倍総理の登場です。どうなんでしょうか、自民党総裁選で敗れたお二人は、次やその次を狙っての出馬だったでしょうか。権力闘争というのは、どこの国でも命がけですが、日本の、特に今回は平穏でしたね。少なくとも外見は…。

しかし日本でも、歴史を振り返れば、禅譲などとは程遠い、権力争いがありましたし、時には、天皇陛下が意見されることさえありました。

本書は、コミックで、歴代総理のうち17人を取り上げて、その功罪や人生を紹介します。息子がコンビニで買ってきたんですが、これがなかなかおもしろい(笑)。

取り上げるのは、

伊藤博文黒田清隆山県有朋大隈重信田中義一浜口雄幸犬養毅岡田啓介広田弘毅東条英機鈴木貫太郎吉田茂鳩山一郎岸信介佐藤栄作田中角栄大平正芳 です。

ただし、詳しく、掘り下げて紹介するというのでは全くなく、その人物をもっともよく表すエピソードを一つか二つ紹介し、人物像を浮かび上がらせるというような描き方です。

絵も本格的で緊迫感がありますし、テンポも良いので一気に読んでしまいますが、できれば各人に対し、最低でもこの5倍くらいは書いてあると、もっと強く印象に残って、良いのですが…。

こうしてさっと読みますと、日本にはさまざまなタイプの権力者がおり、今につながっているんだなと漠然と感じることができると思います。強欲な権力の亡者、命がけで国を守ろうとした者、なるべくしてなったサラブレッドなどなど…。

子どもたちが、本書から、興味を広げて、“もう少しこの人に関して知りたい” となれば最高ですが…。

筆者がその人物のどこを描くかで、何となく思想がわかろうというものです。非常にカッコよく描かれているのは、黒田清隆、大隈重信、広田弘毅、浜口雄幸などで、彼らは日本の誇りであり英雄のような感じです。

一方気の毒なほど悪く書かれているのは、岸信介です(笑)。安倍新総理のおじいちゃんですが、このタイミングで発売は偶然でしょうかね。

以前、日本のすべての総理大臣を採点したことで、話題になり、その評価に賛否両論あった 『総理の値打ち(福田和也・著)』 をご紹介しました。福田氏はそこで、岸信介はすべての歴代総理のうち81点、第3位(1位:伊藤博文・2位:山県有朋)という高評価を与えています。

ところが、本書を読むと、こんな人を総理にしていたのかと、日本人として恥ずかしくなってしまうほどです。人によって評価が異なる典型を見ました。

いずれにしろ、読んでいる分には十分楽しめますが、その人のほんの一部にだけしか焦点を当てていませんので、すでにある程度の知識のある人や、真剣に勉強しようという人には不向きです。そうでない人が取っ掛かりを持つには良い本です。


P.S.  受験生は歴代総理の名前、正しく、全部暗記していますか?ころころ代わったりして覚えにくいんですよね。例によって、genio先生にお願いして、丸暗記方法を紹介してもらいました。メロディーのついた語呂合わせで覚えます。おもしろいですよ。

どうぞ♪ → 『 入試に出る!時事ネタ日記 


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劇画『内閣総理大臣伝』 日本を動かした男たち

実業之日本社

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『劇画 内閣総理大臣伝』よつや文(作) 原田久仁信(画)
実業之日本社:496P:600円



■■  たまには漫画     ■■

これからしばらくは、“安倍総理”のニュースがひっきりなしに続くでしょうから、勉強するいいチャンスです!特に政治は苦手という生徒が多いですから、そういう人は、まずは、こうしたコミックや、テレビニュースで基本を知ってしまいましょう。
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『日本の「ミドルパワー」外交』 添谷芳秀

2006年09月21日 | 政治・経済・外交



安倍政権で、もっとも注目を集めるのは、やはり外交でしょうね。『 美しい国へ 』 を読んでも、何より外交や防衛問題に重きを置いている印象です。

アメリカとは良好な関係ですが、ブッシュ政権はもはや支持を失っておりますし、中国・韓国との関係修復も容易ではない。その上、ご本人が力を入れていた、北朝鮮の拉致問題は、制裁措置を決めたものの、糸口すら見えません。さらに最近のロシアも厳しいですね。

お世辞にも、楽観できる状況とはいえないでしょうが、別に、日本は世界中で嫌われているわけではありません。いや、それどころか、むしろ、以前、『 アフリカの瞳 』でご紹介したデータが示すように、世界中から感謝されているのです。

不思議と日本人には、まったく実感がわきませんが、そんなところも本書が説明してくれているかも知れません。

ミドルパワーという表現は、分かりにくいのですが、本書の紹介によりますと、・・・


『「ミドルパワー」は、たとえ一定の力をもっていたとしても、「大国」のような一国主義は放棄し、「大国」が繰り広げる権力政治の舞台からは一歩身を引いて、「大国」外交には本来なじまない領域(たとえば多国間協力)においてこそ重要な影響力を行使できる・・・としています。


非常におもしろい考え方で、実際にはそのようにすでになっているとさえ感じます。そのことに、日本人自身が気付いていないのかも知れませんし、『 日本の戦争力 』 を読みますと、中国・韓国も気付いていないのではないかと…。


まず、戦後日本外交のねじれは、憲法九条を維持したまま、日米安保条約 を結ぶという、吉田茂の「中庸」 から始まったとします。この外交戦略は、間違いなく戦後復興には大きく貢献したのでしょう。ところが、このために、「平和国家日本」 と 「大国日本」と分裂したイメージを与えていると指摘します。この「二重アイデンティティー」 があるために、両方から責められてしまうんですね。

右派 “伝統的国家主義” からは、憲法を改正しろ、防衛力を高めよという圧力がかかり、それに抵抗しなければなりませんし、逆に、左派の“平和主義”からは、自衛隊は軍国主義をめざすものとして批判され、それに反論しなければなりません。

対外的には、アメリカには“憲法の枠内”という、日本の、軍事に “消極的” な協力姿勢を弁明しなければならない一方で、中国・韓国に対しては、“大国” 日本に対する懸念を払拭しなければなりません。


本書では、戦後、憲法ができた段階からの現在に至るまで、時の総理大臣や外務省がどう対応してきたかの歴史をじっくり振り返り、最後には、筆者の主張する「ミドルパワー」の外交というものをはっきりさせることが国益にかなうという意見です。

易しい本とは言えませんが、私にとっては、斬新な指摘が続き、なるほど~と思いながら、ずっと読みました。ただ、この 「ミドルパワー」 戦略で、具体的な問題、例えば、北方領土とか、拉致事件、靖国など、どう解決に近付けるかということが書かれていれば、強くお薦めできるのですが、残念ながら、そこまで個別の案件に対する言及はありません。それがあれば、★5つの本かなという感じです。

日本の「ミドルパワー」外交―戦後日本の選択と構想

筑摩書房

詳   細

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『日本の「ミドルパワー」外交』 添谷芳秀
ちくま新書:756円:237P


■■
   中庸(ちゅうよう)   ■■

気のせいでしょうか、あまり聞かれなくなってしまった言葉のように思います。“中途半端”とは、次元が違うと思うのですが、マスコミ時代ですから、 “極端” なのが受けてしまいますね。がんばろっと! できましたら応援のクリックお願いします。

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『美しい国へ』 安倍晋三

2006年09月01日 | 政治・経済・外交
 

非常に読みやすい一冊です。

外交・防衛問題に関しては、靖国参拝やA級戦犯にまで言及し、持論を展開しています。はっきり意見表明する態度、筋を通すのだという姿勢に好感が持てます。ただし、立場や時期もありますから、中国、韓国に対する論評や批判はかなり押さえているというか、遠まわしな表現です。そのあたりを本書に期待すると、肩透かしですね。

ただ、マスコミに対する不信感は隠しようもなく、名指しは避けていますが、ところどころに皮肉を込めた表現が出てきます。ダントツの人気を誇っていますので、今は安倍氏に批判的な報道はあまりありませんが、総理になったら、どうなるか。マスコミ対策は大変でしょう。


拉致問題や防衛問題などを例に挙げ、国民に国家というものをはっきり認識してもらいたいという気持ちがひしひしと伝わってきます。改憲論者らしく、天皇制や自衛隊に関しても、テレビなどで見ている時よりも、かなり踏み込んだ主張をしていて、社民党やTBSが警戒するのがわかります(笑)。

また、少子化や教育問題が語られていますが、正直、おまけのような感じです。私などが注目していた教育に関しては、中山前文部科学大臣と似た意見のようで、サッチャーの教育改革 (自虐史観を一掃) やレーガン時代の 「危機に立つ国家」 (ゆとりから詰め込みへの回帰) に言及しており、それに関しては大歓迎です。

今の“ゆとり教育” 賛成の大臣よりはずっと良いし、小泉首相より教育に大きな危機感を持っていることは確かです。誰を文部科学大臣にするのか注目です。

少子化、年金は、これまでの政府の見解からほとんど出ていない印象で、年金のしくみを簡単に説明し、“損はありません。安心して払いましょう” という感じです。

時期が時期だけに、控えたのでしょうが、上で申し上げた、マスコミや中国、韓国だけでなく、たとえば官僚制度や民主党、公明党、自民党の抵抗勢力、すべてに対して批判が少ないのです。したがって、具体的にどこをどう直すとか、何をするかという提言も弱いものになっています。


外交、防衛、改憲に熱が入っていること、保守の代表的な考え方をしている政治家だということはわかりました。小沢一郎 率いる民主党と対峙して、論争で勝てるかどうか、“美しい国VS普通の国” となるわけですが、本書だけではまだパンチ不足です。


もう少しヘビーな内容かと思っておりましたが、新書にしては字も大きく、非常に平易な文章で書かれています。最後に、『少しでも若い世代の人に読んでもらいたい』 とありました。確かに、ワールドカップやイチローの話題も出てきますし、安倍氏の父、祖父がどういう人かだけ頭に入れておけば、高校生でも楽に読めると思います。



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『美しい国へ』安倍晋三
文藝春秋:232P:767円


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これだけあっさり抜かれれば、あきらめも付くというものです。すごいですね。自分のパンチ不足も反省し、また少しずつでも近付ければ良いなと思います。しっかりやれ!の クリック、お願い致します→にほんブログ村 本ブログへ   

美しい国へ

文藝春秋

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『官邸主導』 清水真人

2006年08月14日 | 政治・経済・外交


いよいよ小泉政権もクライマックスを迎えるわけですが、8月15日に靖国神社参拝が、“必ず行く” と言った公約ですし、これだけ騒がれますと、外国からも注目が集まります。

しかしどうなんでしょう。靖国問題は、私も注目だけはしていますが、そもそも小泉政権の本質とはあまり関係ないとも感じます。

公約を守ろうとして、これほど批判されるのは前代未聞でしょう(笑)。皮肉なもんです。逆に行かなければ、どうせマスコミは『5年間一度も公約を守らなかった総理』 と批判するに決まっているんですからね。

靖国に行くなと、中国や韓国が内政干渉をし、それに呼応して、国内のメディアや野党が盛んに取り上げ、問題をどんどん大きくしてしまっています。小学生でも、『靖国』は知っていますが、これが大きくなればなるほど、そういう勢力の思うつぼ。

国論を二分させるし、麻生氏はじめ、次の総理をめざす他の政治家も、何らかの解決策を公表せざるをえなくなっています。また、中国や韓国の歓心を買って、日本でアピールしようというような政治家まで出てくる状況。完全に国益をそこなっているといえないでしょうか。

本書は小泉政権というのは、何を狙って、どのように動いてきたかを、実につぶさに観察、分析している一冊です。小泉政権誕生の下地ができる、小選挙区制導入当時の政界分析から始まって、じっくり書いてあります。

『官邸主導』 という書名があらわすように、小泉政権最大の特徴は、政策そのものよりも、政策の立て方、いわゆる政治手法にありそうです。

道路公団や、郵政の民営化、医療改革、三位一体改革などは、どこまで本気なのか、正直、私にはつかめないのですが、これら、すべてを抵抗勢力、おもに竹下、小渕、橋本派の大派閥つぶしと見れば、非常に分かりやすい話にならないでしょうか。族議員の利権や支持母体を叩きつぶしているという構図です。

人事にもはっきりそれが出ていますよね。本当に誰にも相談しないで、すべての閣僚を決めるのだそうです。もちろん派閥の推薦は一切受け付けませんから、ますます派閥は弱体化しますし、抵抗勢力は徹底して、ポストから“干す” そうです。亀井氏らから“ヒトラー以上” の独裁者と非難されるゆえんです。

適材適所というより、官僚の権力や、それにぶらさがる族議員つぶしと見ればすっきりいきます。田中真紀子氏らを送り込まれた、外務省などはたまったもんではありませんね(笑)。党の税制調査会や総務会といった、しばしば首相官邸とぶつかってきた組織までも、今や完全に弱体化しました。

自民党や官僚のドンと言われていたような人々を、どんどん追い出し、政策決定のじゃまになる制度を骨抜き、破壊し、すべてを官邸主導のシステムに変えていきます。逆に首相が信頼をおく、竹中氏や中川秀直氏、与謝野氏などは急速に発言力を強めている印象を持ちます。

確かに、公約とおり、公共事業に頼らず、景気を回復させ、不良債権を減らしましたし、何と言っても、北朝鮮に拉致を認めさせた功績は、高く評価されるべきでしょう。これでやっと子どもを含む日本国民が、北朝鮮の実態を知ることになり、国防意識を高めましたから。

ただ、本書は、小泉内閣における、権力構造の変化に焦点を当てており、アメリカ追従姿勢、イラク派兵や、アジア外交、また、それ以外のさまざまな政策の評価・分析はほとんどありません。従ってそれを期待される読者には向きません。私ももう少し、そこらを読んでみたかったのですが…。その評価は歴史家に譲るということなのでしょうか。

君主論 』 を以前ご紹介しましたが、小泉首相は、良くも悪しくも、日本の政治家には珍しく、政治や権力というものの本質を理解し、非常に権力闘争に長けた政治家であるという印象を持ちました。政策通とはとても言えないようですが(笑)。

官邸主導―小泉純一郎の革命

日本経済新聞社

詳  細


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『官邸主導』 清水真人
日本経済新聞社:409P:1995円


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『そして日本が勝つ』 日下公人

2006年07月29日 | 政治・経済・外交

今、日韓関係は最悪と言われますが、少し前(2003年)に韓国政府が、12万人もの中高生に行った、意識調査では、日本がダントツの第1位で『 好きな国 』に挙げられています!?当教室メルマガの“データの杜”でも取り上げました。

どういうわけか、このことは、あまり報道されませんでしたが、日本の『 韓流 』より、ひょっとしたら韓国の『日本流』 の方が、すごいかもしれませんね。

“日本が勝つ” というのは、文化の話です。ポケモンやもののけ姫は、韓国だけでなく、世界中で、ミッキーマウスをしのぐ人気を博しました。台湾や香港でも日本のアニメ、コミック、アイドルは大人気だということは知っていましたが、私はそれが不思議でした。

筆者はそういった、子ども用の文化だけでなく、自動車やハイテク装置などを含めて、日本的と思われるものが、世界に広がっているのは、その本質がこだわりの 『芸術品』 だからだと指摘します。

それは、一部の天才だけが持っている特質ではなく、日本人一人ひとりが共有している美意識みたいなものだと。そういえば少し前にご紹介した 『 和魂和才 』 に通じているのかなとも感じます。

“仕上げにこだわる” という日本人の国民性は、中国などの安価な人件費を利用しても、まねできるものではなく、超長期の芸術やその精神史があってこそ可能になるといいます。それがあるのだから、日本経済は心配するどころか、世界の最先端に躍り出ると予言までしています。

実際、本書が出された2004年当時、日経平均株価はたった1万円前後で苦しんでいたのが、今は1万5000円くらいに回復していますから、その点においては、氏の予想は今のところ、当たっているといえますね。

専門書ではありませんので難解な用語もまったくなく、高校生くらいでも、非常におもしろく、気持ちよく読める一冊だと思います(笑)。時々、妙な教育を受けてきたせいか、『日本は嫌い』などと言い切る高校生がいて、びっくりします。そういう生徒もぜひ。



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そして日本が勝つ―精神から見た世界史

PHPソフトウェアグループ

詳  細


『そして日本が勝つ』日下公人
PHPソフトウェアグループ:267P:1575円


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『日本の戦争力』 小川和久

2006年07月28日 | 政治・経済・外交
  
“右の人も左の人も読むべき”と、日経ビジネスで紹介されていました。確かに、本書にはかなりの客観性、説得力があると思います。中国も韓国も誤解しているし、そもそも日本人自身が気付いていない、アメリカだけが知っている自衛隊の本質とは…。

平和のために、平和国家として…、“戦争したらどうなるか”、日本の防衛や、世界の軍事情勢に関して、しっかりデータを元に押さえておくということです。

自衛隊に関して、ごくごく基本から非常に丁寧に、図や表などもふんだんに入れて解説していますので、日本の軍隊が置かれている現状が理解できます。護憲派も改憲派も、政治家も外交官も、軍事に関して正確な知識や常識がないまま、感情論に走っているという現状を憂いているわけです。以下いくつかの観点を紹介します。


【単独では戦争ができない自衛隊】

これは兵器や装備を見れば明らかで、世界最高レベルの掃海技術や警戒システムはあっても、攻める兵器は持っておらず、とても上陸(侵略)作戦などできない。アメリカ軍とのバランス(補完関係)からそうなっている。専守防衛の軍隊構造。中・韓も誤解している。

【アメリカにとっての日本の基地】

アメリカにとって日本の重要性は、はかり知れない。現実問題として、日本の基地がなければアメリカはイラク戦争は戦えない。日本が無事であれば、米本土が破壊されても、軍は戦えるほど。日本は、いやなら“出て行け” と言えるほど、優位な立場にあり、それを外交的に大いに利用すべし。

従って、北朝鮮だけでなく、中国、ロシアからでも、日本に攻撃があれば、アメリカ軍に対する攻撃と同義となるため、アメリカがそれを見過ごすことはありえない。

【北朝鮮の戦力】

とても闘えるしろものではない。ソウルにも日本にもミサイルを打つこともできない。打てば一瞬にしてアメリカ軍がその何倍もの軍事力で反撃するしくみになっている。こわいのは、北の、世界最強の特殊部隊が工作員として潜入して、日本をかく乱させること。すべてを想定、覚悟をしておく必要はある。


他にも、非常に多くの問題に関して、具体的な分析が随所に見られますが、氏は平和主義といっても、単に“平和宣言” などをしても無意味で、平和のために行動する、場合によっては戦うことが必要だという立場です。イラク戦争にも賛成ですし、憲法改正にも賛成です。

したがって、インタビュアーも言っているように、小川氏と同意見ではない人もかなりいるはずです。それはそうでしょう、日本の核武装まで想定しているくだりがあるほどですから(思考実験のように)。

それでも多くの人に読んでいただきたい一冊です。データが豊富ですし、何より考えたり、議論に使ったりする材料がたくさんあります。本書に反論するような、軍事専門家の本も読んでみたい気がします。


日本の「戦争力」

アスコム

詳 細


http://tokkun.net/jump.htm 


『日本の戦争力』小川和久
アスコム :295P: 1680円

P.S. すかいらいたあさんのブログ では、本書は☆4つでした。ぜひご覧下さい。また、これまでご紹介した、『自衛隊VS北朝鮮』 『兵士に聞け』 『宣戦布告』 などを参考にしていただければ幸いです。



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『総理の値打ち』 福田和也

2006年07月04日 | 政治・経済・外交
    
良くも悪しくも大評判になった一冊を取り上げます。

本書は日本の歴代総理全員(初代:伊藤博文から、56代:小泉純一郎まで)を100点満点で採点するという暴挙をやってのけました。“暴挙“かもしれませんが、愉快です。実を言うと私は福田氏のあまりの傍若無人な言い方を快く思ってはいないのですが、本書の企画は新鮮ですし、批判覚悟で自分の考えを点数にまでして明確にするのは、立派です。

その上日本史の受験生にとっては苦手な近代史が、年代順にコンパクトにまとまっていて知識整理に使えます。ただ、本書の評価はあくまで、福田氏個人のものですから、教科書とは違いますし、この採点には、異議も多数寄せられたそうです。

福田氏の採点基準は

90点以上:世界史に銘記すべき大宰相にして大政治家
80点台:国運を拓き、宰相として国史に長く刻まれるべき総理
70点台:国家、国民の活力を喚起し、歴史的な仕事をした総理


30点台:益まったくなし。総理の名に値せず。
30点以下:明確に国を誤り、国家社会に重大な危難をもたらした。もしくは後世に多大な弊害を遺した。

さて、小泉首相ですが、本書が書かれた時点では(平成14年)なんとたったの29点。この危機に際して、まったく勉強する意欲が無いのだそうです。訪朝やその後の政策でいくらか変化するでしょうか。ちなみに森前首相が30点。最高は伊藤博文の91点でした。

以下、少しご紹介しますと、
2位:山県有朋85点
3位:岸信介81点
4位:原敬73点
5位:佐藤栄作・加藤高明72点
7位:鈴木貫太郎71点

逆に下位は
まず、東久邇宮捻彦と羽田孜の2名は、採点不能としています。(在職期間が短いため)
55位(ワースト):近衛文麿17点
54位:吉田茂(独立後):27点(ただし占領中の吉田茂には68点)
53位:村山富市28点

となっています。とても私には、採点するだけの知識すらありませんが、受験生が自分なりの得点表なんか作れたらすごいですね。みなさんはどう思われますか?


http://tokkun.net/jump.htm



『総理の値打ち』 福田和也
文藝春秋:160P:1200円(文庫本530円には、これについての論客による討論が付いています。私は未読ですが、そちらの方が良いかもしれません)


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総理の値打ち

文藝春秋

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『小泉純一郎最後の賭け』 大下英治

2006年06月30日 | 政治・経済・外交

小泉首相は、いろいろなところへ卒業旅行に出かけたわけですが、国民は、のちの歴史家はこの5年に及ぶ政権をどう評価するのか非常に興味があります。

良くも、悪くも大きな話題がいくつもありました。思いつくままに挙げてみても、

■ 北朝鮮に拉致を認めさせた
■ 自衛隊を海外に派兵
■ 郵政・道路公団の民営化
■ 靖国参拝を続けた
■ 旧橋本派など派閥を徹底的に破壊
■ 不良債権の処理
■ 郵政解散で総選挙の大勝

さらにキーワードだけだと、小さな政府、日米蜜月、抵抗勢力、格差社会、変人、パフォーマンス、骨太、構造改革、小泉チルドレン、などでしょうかね。(大きいものが抜けていたらご指摘を)
野党も、社民党や共産党がますます弱体化し、自由党、民主党が一緒になったり、かなり動きました。

本書は三年ほど前に出たものです。小泉首相と山崎元自民党幹事長、そして加藤紘一氏のYKK、中でも小泉、加藤の両氏を中心に描いた政界ドキュメンタリーです。それぞれの生い立ちから、小泉政権誕生の舞台裏など側近や家族、親戚などを丹念に取材して書かれています。

YKKにとって節目となる出来事、協和献金問題や山崎派旗揚げ、森首相に対する加藤(山崎)の乱、それぞれの大臣就任、そして加藤氏の秘書逮捕から議員辞職、その時々の会話などが詳細に生々しく描かれています。

全体を通して3人の描かれ方の印象は、
■加藤氏:政界有数の実力、人望もありながら、脇が甘い。天下取りをあせって墓穴を掘った。
■小泉氏:信念を曲げないことが良くも悪くも特徴である。政治的センスは天才的で、決断力も抜群にあるが、首相として必要な世界観や経済知識はあやしい。
■山崎氏:能力はともかく人を裏切らない。

450ページにも及ぶ大作ですが、好悪は別にして小泉政治に関心のある方なら、実に多くののエピソードや周りの証言、回想などが織り込まれていて、どんどん読めてしまうのではないでしょうか。大下氏の著作はどれを読んでも読みやすく、政治家が身近に感じられるものばかりです。


http://tokkun.net/jump.htm

小泉純一郎最後の賭け

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『国家の罠』 佐藤優

2006年06月22日 | 政治・経済・外交
  
唐突ですが、 【 藤原正彦 VS 櫻井よしこ 】 といったら何を想像されるでしょうか。両者とも憂国の大物論客であり、多くの支持者は重なるはずです。

お二人でまったく異なるのは、本書に対する評価です。ある賞の選評において、藤原氏が『不屈の精神に感動した 』 と絶賛すれば、櫻井氏は『事実関係をとりまちがえてきた』 とバッサリ。いかに本書が、センシィティブなものかということの証左です。

詳しくはこちらをご覧下さい。http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20050922bk09.htm (読売新聞)

さて、今日報じられた(産経新聞ではトップ) 大きな動きとは…
第二次大戦時の外相、東京裁判でA級戦犯とされた東郷茂徳氏の孫にあたる、東郷和彦氏。本書にもたびたび登場する、「エリート中のエリート外交官」でしたが、鈴木宗男代議士や、本書の著者である佐藤氏との関係を糾弾され、外務省を追われました。

私は逮捕を逃れるために、海外に逃げていたと思っていました。一審で証人申請され、それを拒んだのですが、4年の沈黙を破って、とうとう佐藤氏擁護の立場で、証言しました。外務省には衝撃が走ったようです。

つい最近も村上ファンドの村上世彰氏が逮捕されましたが、こういう著名人、大物逮捕劇の裏には、複雑な構図、血みどろの権力争いなどが絡んでいるものだということが、本書を読むと推測できます。

佐藤氏は本書で、自分の逮捕劇を“国策捜査”、外務省の権力闘争として、ほとんどすべて実名で外務省の幹部、政治家、検察などを告発します。特に逮捕後の検事とのやりとりは生々しく、時間を忘れて、読みました。

本書の内容が全て真実であれば、ノンキャリアでありながら貴重なロシアとのパイプを持っている氏を“いけにえ”にするとはとんでもないことです。一方、キャリア外交官で佐藤氏同様の容疑を持たれながら海外に逃げている東郷氏、彼が逮捕される日が来るのかを注目していたのですが、昨日、法廷に出てきたというわけです。

はたから見ておりますと、佐藤氏を“売って” おきながら、自分は身の安全を図っているように見えていたのですが、当の佐藤氏自身が、東郷氏は “国家のため” に働いていたとして、うらむどころか、高い評価をしていたのです。

これまでの東郷氏の行動の真意はわかりませんが、これで外務省に宣戦布告をしたようなものでしょうか。つい数日前、佐藤氏が、ラジオで田中康夫長野県知事と対談していたの聞き、以前と違う明るい声が印象的だったので、何か…と思っていたところ、今日のニュースでした。

田中真紀子氏が外務大臣に就任して以来、ずっと続いていた外務省の混乱は、鈴木宗雄氏や佐藤氏の逮捕でようやくケリが付いたかたちになっていたのですが、これでまた、動くでしょう。佐藤氏が指摘する『国策捜査』、 裏で糸を引いている存在が明らかになることを願います。とにかく本書は、外務省を揺るがす一冊であったことは確かなようです。

私は本書の続編である『国家の自縛』 の方を先にブログで書きました。そちらも衝撃的ですので、興味のある方はお読み下さい。


http://tokkun.net/jump.htm

P.S.
時々このブログにコメントを下さる、『日暮れて途遠し』さんのブログに裁判の様子や、弁護士の方のコメントがありますので、ぜひご覧下さい。日暮れて途遠しさんはずっと佐藤氏に注目されていて、私にも、いくつか資料や書籍の紹介をいただきました。

http://blog.goo.ne.jp/taraoaks624/e/7452aa557a2710a6deac014c88baf821


国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

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『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』ベンジャミン・フルフォード

2006年06月03日 | 政治・経済・外交
  

村上ファンドの村上氏が東京地検特捜部の捜査を受けると報道されました。ライブドアの堀江氏も、この村上氏も金持ちすぎて、ちょっと気に入らないのですが(笑)、それはさておき、最近は特捜部が、どうも100%の正義とは言い切れないと感じてしまいます。

いったい何を狙っているのだろう、などと考えるわけです。たとえば、この事件の前に、旧橋本派の一億円はどうなった!と…。

佐藤優氏の『国家の自縛』 や、宮本雅史氏の『真実無罪』 を読んでみて持つ感想です。そして、昨日の私の記事に、福禄太郎さんがこうコメントをいただきました。『家族を傷つけるとは…。ベンジャミン・フルフォードが言うように、日本を支配しているのは闇の世界なのですね』(ブログ:『福禄太郎の書評と時事評論』:(勝手に)読書の趣味が似ていると思っておりまして、よく拝見しております)

そうだ、フルフォードならと思い出し、本書を紹介させていただきます。4年前の本なので、経済情勢は大きく変化していますが、指摘する根本問題は、今も解決されていないと思います。

妙な題名ですが、日本がアルゼンチンのようにデフォルト(国が借金を返せなくなること)に陥る可能性を揶揄したものです。副題は「最後の社会主義国家はいつ崩壊するのか」、もちろんこれも日本のことで手厳しい。つまり、日本は管理社会で、資本主義とは言えないという意でしょう。

氏はカナダ人で、高級ビジネス情報誌「Forbes」 の東京支局長を務め、それ以前、日経新聞の記者で、「住専とヤクザ」 に関する記事を書き、それを社の上層部から「もう書くな」 と圧力がかかったのを機に退社、帰国しましたが、日本が好きで戻ってきました。

執筆当時の日本(2002年)にいらだっています。上記のような自身の体験が象徴的なのですが、銀行も政府も官僚もマスコミも教育者も知識人も政治、経済問題の責任を取ろうとせず、ヤクザなどを含めた諸悪の根源を知っていながら追求していないことに対して怒っています。昨日、紹介した、会田氏の指摘と似ています。

経済中心ですが、話題は多岐にわたります。大きな事件の時にたいてい起こる、“関係者の自殺” に関しても、殺人ではないかと自分の理論で推察するなど、かなり大胆で、刺激的、説得力もあります。こういう批判はやはり、日本のマスコミには出てこない類のもので、大いに利用すべき外圧でしょう。

本書に続いて、何冊か著作が出ましたが、最初ということもあり、本書がもっとも新鮮でした。

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『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』ベンジャミン・フルフォード
光文社:229P:700円

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日本がアルゼンチン・タンゴを踊る日

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『ハーバードで語られる世界戦略』 田中宇、大門小百合

2006年05月30日 | 政治・経済・外交


著者のお二人は夫婦です。田中氏はジャーナリストでMSNジャーナルを立ち上げたこと、またアメリカのテロ事件のおり、いち早く『タリバン』 を出版したことでも知られています。国際ニュース解説が専門で、あらゆる事件に対し、興味深い分析を丹念におこなっています。

日本の中で、“9.11のテロをアメリカは知っていて止めなかった可能性”を指摘していたのは、田中氏が最初ではないでしょうか。一見、荒唐無稽なことを、豊富なデータと説得力をもって分析してあり、私も氏のメールマガジンを読んでいます。
 
本書は、氏の妻であり、英字新聞ジャパンタイムズの記者、大門小百合氏の留学に、夫の田中氏が同行した際のレポートです。大門氏がハーバード大学に奨学金をもらいながら留学する機会を得たのです。

そもそも世界各国から来る留学生の家族までまとめて面倒を見てしまう、ニーマンフェローというその留学の制度の違いから愕然とさせられます。夢のような待遇で世界中から一流のジャーナリストや研究者をごっそり集めてしまうわけですね。

読み進めると、それ以外の点でもハーバードでは、すべてが日本の大学の概念とは、まったく違う、桁外れの発想をし、比較することすら無意味ではないかとさえ思わされます。

そんなハーバードですが、田中氏はそれを礼賛しようというのではありません。スケールの違いに、一目置きながらも、かなり批判的です。“アメリカの陰謀を練っているこんな大学はクソ食らえ” ともあります。
 
いずれにしろ日本の大学を考える上で刺激になり、多くの示唆を与えてくれています。田中氏の著作は本書だけでなく、上記の『タリバン』 や、その他、どれもとても読みやすく、お薦めします。新聞、テレビなどではめったに見られない視点でニュースを解説しており好奇心をそそられます。

ただし、最近の田中氏のメルマガは、正直申し上げて、反米色が強く出過ぎているように感じています。もともとアメリカ嫌いはあるのでしょうが、中立といえるのかどうか。

まぁ、本書は、田中氏のそのポジションとは関係なく、純粋にアメリカ、世界に影響力を持つ知の最前線、ハーバード大学のレポートとして充分楽しめます。
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ハーバードで語られる世界戦略

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『転落の歴史に何を見るか』 斎藤健

2006年05月16日 | 政治・経済・外交

本当は別の本のご紹介をするつもりで、探していましたが、今ふと本書の著者の名前を見て、「サイトウケン?」 あれ?「さいしょはぐー、さいとうけん」の千葉7区のあの候補者と同姓同名だと…。同姓同名どころかご本人の著作を読んでおりました。実にお恥ずかしいのですが、偶然、気付き、ぜひご紹介したいと思って書いております。

読んだ当時、私が当塾(個人特訓教室)の掲示板に書いた感想は以下のようなものでした。

■■現役官僚が実名で、日本の失敗の歴史を振り返り、歴史観、組織論、世代論を述べています。戦争や経済運営での失敗はどの国であれ、歴史上それを経験済みですが、それを次世代に受け継ぎ何かを残さねば、また同様の過ちを国は繰り返してしまう。

司馬遼太郎氏が繰り返し表明したような日本社会に対する危機感を齋藤氏も共有し、同世代の(1959年生まれ)国民、特に氏と同じ官僚達に大きな歴史観、世代としての使命感を持とうと呼びかけます。

奉天会戦からノモンハン事件まで、わずか30年ほどの間に日本の中で何が起こったのか、どうして悲惨に戦争に突き進んでしまったのかを、戦後世代らしく素朴に、冷静に分析します。

本当の歴史は、どうも自分達の受けた教育のような単純なものではなさそうだということが、この世代のポイントです。おそらく我々の世代でも共感できる方が多いでしょう。こういう方が官僚のトップになるようであれば良いのですが…。

戦争責任などに関する記述は、専門家ではない悲しさか、官僚としての遠慮があるためか、やや大雑把に映りますが、世代論はとても興味深い指摘が続きます。ぜひお読みください。■■

つまり、すばらしい一冊だったのです。誠にお恥ずかしいことに、そんなことはツユ知らず、ジャンケンを見てうんざりしておりました。どうしてマスコミはもっと、当時話題になった本書について触れなかったのでしょう。

齋藤氏に勝った『補導歴のある元キャバクラ嬢』と冠が付く、民主党公認の太田さんが云々ではありません。私には千葉7区の選挙権はありませんが、選挙の構図を、【エリートの落下傘候補VS地元苦労人議員】、または【小泉パフォーマンス戦術VS新生小沢民主党】 という形にすっかり自分が乗ってしまっていたことを深く後悔しました。

本書の評価も高かったはずです。実際、非常に刺激的でした。しかも少し調べてみますと、齋藤氏、確かに東大、官僚出身、最年少副知事とエリートではありますが、ごく普通の家に生まれ、地方の高校から、まさに自分の努力のみで這い上がり、日本を良くしようという高い志を持った立派な方、充分、庶民派じゃないですか。ネットにある情報だと、むしろ勝った太田さんの方が、裕福な家庭で何不自由なく育ったらしいじゃないですか。もし本当なら構図が逆かなと…。

本当に自分の不明を恥じました。また、選挙民の方も、知らず知らずのうちに東大、官僚、エリートという言葉に拒絶反応のようなものを持ってしまっているのかもしれないと気付かされました。“雰囲気”“偏見”というものは人を思考停止にしてしまうんだと痛感します。

小沢氏の登場と同時に、自分の知名度が低いためにあわてたのでしょうが、くだらないパフォーマンスなどするから、逆に人をバカにしていると取られるリスクの方が大きいと思うのです。選挙というものは、私のようなしろうとが考えるほど単純ではないでしょうが、それでも、正々堂々と自分の主張を掲げ、普通にマスコミが報道していれば…。と思わずにはいられません。

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転落の歴史に何を見るか―奉天会戦からノモンハン事件へ

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『国会議員を精神分析する』水島広子

2006年04月09日 | 政治・経済・外交
 
小沢一郎氏が民主党の党首になり、以前から盛んにテレビなどで、『民主党の議員の日ごろの活動』について苦言を呈していました。本書はおそらく典型的民主党議員だった水島氏の著作です。『政界失楽園』で騒がれた、船田元氏に戦いを挑み、見事勝利した方です。

この前の小泉自民党が出した刺客の先駆にあたるわけです。落下傘候補として見事当選したのですが、前回は苦杯をなめました。こういう方を小沢氏はもう一度引き寄せるのでしょうか。

精神科医である著者は国会議員になる人種を『自己愛性パーソナリティー』と呼び、その行動などを分析します。典型的国会議員とはどんなものか、突如として大声で恫喝する議員、どんな時でも必ず「尊敬する政治家は父」と公言する議員、「今の子どもは我慢を知らない」と言いながら会議中に我慢できずにたばこを吸う議員、「ダム建設反対」を叫んだ次の会合で「建設のために全力を尽くす」と言う議員。ひどいとは思っていたけれどこれほど多いとは…。 

筆者によれば、今の日本の政治状況ではそういう目立ちたがり屋しか当選できないんだという指摘です。他人の迷惑を考え、一歩下がるというような人間ではダメ。特に小選挙区ではありとあらゆる会合に率先して顔を出し、マスコミなどに取り上げらるパフォーマンスをはずかしげもなく行なえる「人格(障害)」が必要不可欠で、鈴木宗男にしても、石原慎太郎にしても、田中真紀子にしてもすべてそうだというわけです。 

と、ここまではなるほどとおもしろく読んでいたのですが、あれ?辻元清美は?田中康夫はどうして違うの?彼らは他者との共感のある人間だから違うのだそうです。あれほどの目立ちたがり屋はそうはいないだろうと思うのですが…、いつのまにか自分の政策に近い人は全部OKになっていてちょっと拍子抜けでした。

自分のことを棚にあげて…、筆者こそ「自己愛パーソナリティー」じゃないのかと思っていたら、最後に「夫にそう言われた」という記述が出てきて笑ってしまいました。やはりこんな人々が議員なんですね。

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国会議員を精神分析する―「ヘンな人たち」が生き残る理由

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