前回大会に関しては、『山本昌邦備忘録』 をご紹介しました。トルシエ率いる日本代表は、開催国でしたから、予選はありません。今回の予選も終わってみれば、もっとも早くワールドカップ出場を決めるなど、順調でした。大変だったのはやはり初出場のフランス大会。
もう8年も前のことです(ドーハの悲劇は12年も前!)。現在の小中学生はほとんど知らないできごとで、今でこそ、“出て当たり前”のワールドカップですが、当時の日本の力では本大会までの道のりは、非常に長く険しいものでした。その期間およそ一年。特に広いアジア地区では移動距離だけでも数万キロにも及ぶ過酷な戦いです。
ワールドカップに初出場できるかどうかは、当時、国民的関心事でしたね。本書はその過酷な試練を乗り越え、出場を果たしたフランス大会のアジア地区最終予選の模様を、金子達仁氏が試合と同時進行する形で描きだしています。
本書と、その前の“マイアミの奇跡(日本がオリンピックでブラジルに勝利)”とその後のチームの亀裂を描いた、同じ金子氏の『28年目のハーフタイム』。そちらも、お薦めですが、ワールドカップということであえて本書を紹介します。歴史の資料ですね。
国立競技場で行われた初戦のウズベキスタン戦を6対3と大勝しながらも加茂周監督(当時)の采配に不安を感じる筆者の予感は、続く対UAE戦での引き分け、対韓国戦での逆転負けで現実のものとなりました。自信を失ったままカザフスタンへ乗り込んだ日本チームは、ロスタイムでまさかの同点ゴールを決められ痛恨のドロー。
ついに加茂監督の電撃的更迭により日本チームの運命は監督未経験者のジャージ姿の岡田コーチ(現マリノス監督)へ。本大会出場の悲願は、また夢と消えるのか…。結果を知っている今読んでも、当時の緊迫感がそのまま伝わってくるのは、本書がサッカーを越えた人間ドラマを描いているからでしょう。
筆者が中田・川口という当時、年少ながら日本チームの核となる選手達と、取材者という立場を越えた人間関係を築いていたからこそ伝わる息づかいが、行間からひしひしと伝わります。
面子を優先してばかりの日本サッカー協会幹部、世界レベルの大会で勝った経験がないため、実力以上に相手を恐れるベテラン選手たち。彼らと若手との意識の違いは、単なる世代論を越えて、読者に何かを語ってくれます。
壁にぶつかり挫折しそうになったとき、その壁を乗り越えられるかどうかは、すなわち自分を信じ切れるかどうか。中田や川口は信じていました。決してあきらめないことが新たな力を生みだすことをこの作品は私たちに感じさせてくれます。
本書は、オフサイドのルールをよく知らないサッカーファン(笑)でも十分に楽しめる作品です。不安を抱えている受験生はもちろん、改革することを忘れてしまった訳知り顔の大人たちにも読んでほしい一作です。
さて、ジーコJAPANはどんなドラマを作り、金子氏がそれをどう描いてくれるか、本当に楽しみです。本書が出された当時、はたちそこそこだった中田、川口がいまやベテラン、世界を知り尽くしている彼らのリーダーシップに期待したいと思います。
http://tokkun.net/jump.htm
『決戦前夜』金子達仁
新潮文庫:199P:460円
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決戦前夜―Road to FRANCE新潮社詳細を見る |
ます。あまりのショックで1週間ぐらい
落ち込みました。普段は全然、Jリーグ
とかサッカーは観ないのですが、やっと
日本もWカップに出られると感激したロ
スタイムでした。あの時はアジアの枠が
まだ1だったのでしょうか。今でこそ枠
も増え実力もついて来ましたが、フラン
ス大会の時は初出場だったんですよね。
それはそうと今日の新聞やテレビで見ますと、日本の評価はドイツと引き分けたことでぐっと高まりましたね。そうなるとますます勝って欲しかったです。もし勝っていたら、影の優勝候補なんていわれたかもしれないのに(笑)。いずれにしろ厳しい戦いがはじまりますね。
「決戦前夜」「28年目のハーフタイム」数年前読みました。4年や8年などあっという間ですね。
結果を知っていて読んでいるのに、妙にどきどきしていました。個人単位でも国家単位でもこれが「壁を越える」ということか・・・などと考えたりして。
もうすぐWCが始まりますね。
また面白い本を紹介してください。