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 日刊ゲンダイが、樋口英明氏(原発の危険性を認定し左遷された裁判長)の原発耐震性問題をとりあげてくれたので、そのまま転載する

2021年06月14日 | 未分類
 樋口英明氏「耐震性に着目すれば全ての原発を止められる」2021/06/14
 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/290370

 コロナ禍のドサクサ紛れに掟破りだ。福島第1原発事故の惨事を機に定めた「運転は40年まで」の原則が骨抜き。運転開始から40年を超える関西電力の老朽原発が23日にも再稼働する。
 この暴挙に、かつて原発運転を差し止めた元裁判長が「不都合な真実」を喝破する。「老朽原発はもちろん、日本には強い地震に耐えられる原発はひとつたりともない」と――。

 ――再稼働する美浜3号機の運転開始は1976年。45年も昔です。

 45年前の家電を今も使いますか? 大量生産の家電は壊れても最新技術の製品に買い替えればいいけど、原発は大量生産できない。技術は旧態依然で、1つの計器が故障しただけで原発の「止める・冷やす・閉じ込める」の安全3原則は綻び、重大事故が起きかねません。

 ――再稼働にあたり国は、1発電所につき25億円の新たな交付金を立地地域にぶら下げました。

 何を考えているのか、理解不能です。

 ――福井県知事の合意表明が4月28日。たった2カ月足らずのスピード再稼働にも驚きます。

 住民が差し止め訴訟を起こすにも、手続きには月単位の時間がかかる。それを見越した上での素早い動きでしょう。

 ――老朽原発が「高い安全性」を確保できるか否かが最大の危惧です。

 地震大国の日本で原発の高い安全性を担保するのは、信頼できる強度な耐震性に尽きます。原発の耐震設計基準を「基準地震動」と呼び、施設に大きな影響を及ぼす恐れがある揺れを意味します。美浜3号機の基準地震動は993ガル(揺れの強さを示す加速度の単位)。
 しかし、この国では1000ガル以上の地震が過去20年間で17回も起きているのです。

 ――具体的には?

 2008年の岩手・宮城内陸地震(M7.2)は最大4022ガル、11年の東日本大震災(M9)は最大2933ガルなどです。誤解して欲しくないのは「17カ所」で観測されたわけではないこと。東日本大震災では、震源地から離れた数多くの観測点で1000ガルを超えました。

■「原発の耐震性は一般住宅よりもはるかに脆弱」

 ――基準地震動を超える地震がいつ襲ってきてもおかしくはない、と。

 しかも、美浜3号機の基準地震動は建設当時の405ガルからカサ上げされています。建物の耐震性は老朽化すれば衰えるのに、原発だけは時を経るにつれて耐震性が上がるとは不可思議です。
 電力会社は「コンピューターシミュレーションで確認できた」と言い張りますが、計算式や入力する数値でどうにでも変わる。

 住宅メーカーの耐震実験は建物を実際に大きな鉄板の上で揺さぶります。その結果、三井ホームの住宅の耐震設計は5115ガル、住友林業は3406ガル。2社が飛び切り高いのではなく、改正後の建築基準法は一般住宅も震度6強から震度7にかけての地震に耐えられるよう義務づけています。

 ガルで言うと1500ガル程度の地震には耐えられます。一方、日本の原発の基準地震動は、ほぼ600ガルから1000ガル程度です。つまり、原発の耐震性は信頼度も基準値も一般住宅より、はるかに劣るのです。

 ――衝撃です。

 政府は福島の原発事故後の新規制基準を「世界一厳しい」と自負していますが、耐震性に関しては当てはまりません。

 ――いつ、その事実に気づかれたのですか。

 2012年11月に福井県の住民が中心となって関西電力を相手に提訴した「大飯原発3、4号機の運転差し止め請求訴訟」を担当した際です。
 原発の耐震性に着目し、調べてみると、すぐ分かりました。当時は大飯原発を含め、大半の原発の基準地震動は700ガル程度。700ガル以上の地震は過去20年間で17回どころではなく30回に跳ね上がります。

 毎年のように頻発する、やや強めの地震に襲われても危険ということです。原子炉は強い地震に耐えられても、原子炉に繋がっている配管や配電の耐震性は低い上に耐震補強も難しい。断水しても停電しても原発は大事故につながる。それが福島の教訓です。

 電力会社の「地震は来ない」は虚妄
 ――それにしても、基準地震動の設定が低すぎませんか。

 地震学者の間では長年、関東大震災(震度7)でも400ガル程度との認識が主流で、地球の重力加速度(980ガル)以上の地震は来ないとも推測されていました。この考えに従い、昭和時代の原発は建設されたと思います。
 しかし、1995年の阪神・淡路大震災を契機に、2000年頃には全国の約5000カ所に地震計が設置され、観測網が整備されました。すると、震度7が1500ガル以上に相当することが科学的に判明したのです。

 ――震度の過小評価に気づけば、原発の運転は諦めるべきでは?

 そこで電力会社が「不都合な真実」を隠すのに持ち出すのが「地震予知」です。差し止め訴訟で「原発の敷地に700ガル以上の地震は来るんですか」と聞くと、関西電力は「まず来ません」と答えた。

 科学で一番難しいのは将来予測。中でも地震の予知は困難を極めます。考察に資するリソースも20年分しかない。「来ない」と断言できっこないのです。地震予知は「予言」に等しく、信じるか否かは「理性と良識」の問題です。だから速やかに差し止め判決を出せたのです。

 ――その2014年の福井地裁判決を、2018年には名古屋高裁金沢支部の控訴審判決が取り消しました。

 退官翌年です。あの確定した判決は、原審で指摘した危険性を認めながら突然、論旨を変えて「原発の是非は司法の役割を超えているので政治的判断に委ねる」と結論づけた。運転停止を求める住民に対して、さも「政治活動」をしているかのレッテルを貼り、論点をスリ替え、司法の役割を放棄したのです。
 こんな粗雑な判決を放置するわけにはいかないと思い、原発の危険性を広く訴えようと決意しました。

 ――元同僚の方々の反応は?

 特に悪い評判は聞きません。「裁判官は弁明せず」との格言を持ち出すような頭の固い人とは、あまり付き合ってこなかったからかなあ? 裁判官への政治圧力もないですよ。昔は政府方針に従わなかった裁判官が、ひどいドサ回りをさせられたのは事実。けれど、最近は露骨な左遷などありません。

■学術論争の“魔法”から目を覚ませ

 ――福島の事故後も、原発の運転差し止めを認めた司法判断は必ず上級審で覆ります。その理由をどう考えますか。

 先例主義の悪弊です。裁判官が原発訴訟を扱うのは、まれです。滅多に当たらない訴訟を担当すると、裁判官はつい過去の判決を調べてしまう。
 いくら司法修習生の頃に「自分の頭で考えろ」と叩き込まれても、自分の頭で考えなくなる。判例に頼れば通常は大きな間違いをせずに済むし、何より楽ですから。その傾向は上級審の裁判官ほど強い。そして、ある“魔法”も効いています。

 ――魔法とは?

 1992年に確定した伊方原発訴訟の最高裁判例です。原発訴訟を「高度の専門技術訴訟」とし、今でも最高裁は原発差し止め訴訟を「複雑困難訴訟」と呼ぶ。あくまで一般論に過ぎないのに、最高裁に言われると、住民や電力会社、弁護士や裁判官までもが「難しいに違いない」と“魔法”にかかってしまう。
 法廷は理解不能な専門用語が飛び交う学術論争の場となり、もともと文系の裁判官はロッカーいっぱいの専門資料にチンプンカンプン。だから、過去の判例を踏襲する判決を出しがちになるのです。

 ――困ったものです。

 裁判官を“魔法”から解き放つには、まず住民側の弁護士が目を覚まさなくてはいけない。熱意ある弁護士でも先例に縛られ、複雑な学術論争を繰り出すのが実情です。
 住民側弁護士が原発の危険性をシンプルかつ論理的に伝えれば、裁判官も認めざるを得ません。伊方最高裁判例には「原発の安全性の適否判断は規制基準に不合理な点があるかという観点から行うべき」と記してある。

 はたして地震予知を許す規制基準は合理的なのか。20年間の詳細な地震観測による新たな知見、すなわち「1000ガルを超える地震はいくらでも来ます」という動かしがたい事実に基づく判断こそが合理的であり、「真の科学」と言えます。

 ――なるほど。

 現在、広島地裁で係争中の伊方原発3号機の運転差し止め仮処分申し立て事件では、住民側の弁護団が耐震性に着目。四国電力の「南海トラフ地震が原発直下で起きても、伊方原発敷地には181ガル(震度5弱相当)しか来ない」との試算を追及し、原発訴訟にパラダイムシフトを起こすと宣言しました。
 あらゆる運転差し止め訴訟で裁判官に原発の脆弱な耐震性を知らしめ、電力会社の非科学性と非常識を理解させることによって、日本の全ての原発は必ず停止できます。

▽樋口英明(ひぐち・ひであき) 1952年生まれ、三重県出身。京大法学部卒。司法修習第35期。各地裁・家裁の判事補・判事を歴任。2006年に大阪高裁判事、09年に名古屋地家裁半田支部長を経て、12年から福井地裁判事部総括判事。14年5月に大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じる判決を下した。17年8月、名古屋家裁部総括判事で定年退官。現在は原発の危険性を訴える講演活動にいそしむ。今年3月出版の「私が原発を止めた理由」(旬報社)がベストセラーに。
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 引用以上

 日本の原発の設計は、大きな地震の少ないアメリカの原子炉企業GEやWH社の設計を、そのまま踏襲したもので、世界の大地震の10%が発生する日本列島に援用するなんてのは狂気の沙汰というしかない。

 なぜ、日本の特殊な地震事情を無視してアメリカ型原発をそっくり導入したかといえば、自民党政権が、焦って、よほど核開発・核武装に憧れていたからだろう。
 おかげで、東電福島第一原発は、取り返しが絶対につかない凄まじい巨大事故を起こした。

 文中にもあるが、1960年台の設計では、耐震基準が(当時、最大と思われていた関東大震災の)300~400ガル程度しかなく、おまけに設計寿命も25~30年に設定され、震度5に耐えればよいという発想だった。
 だが、原発立地条件が苛酷化するなかで、30年で寿命を迎えるはずの原発は「老朽化していない」と決めつけ、勝手に40年、さらには60年まで許容寿命を延伸して経費を節約したいと電力企業が考えるようになった。

 最大の理由は、廃炉コストが、当初の甘すぎる見積もりに対して、フランスやアメリカの経験から、一基の完全廃炉費用が1兆円を超える可能性が示され、とてもじゃないが、電力企業がコスト負担に耐えられないと考えるようになったからだ。
 だから60年まで運転しても元が取れない……とにかく無謀でも運転を続けて、廃炉問題を先送りして未来に押しつけようという腹づもりしか見えない。

 以下は政権ヨイショメディアNHKの記事だが、廃炉コストが、原発一基あたり600億円、総額約7兆円、と書かれている。
https://www.nhk.or.jp/d-navi/sci_cul/2019/05/news/news_190502/
 スイス環境省の試算では、原発一カ所(原子炉5基)の処理費用が約3兆円と示された。
 https://www.swissinfo.ch/jpn/%E8%A6%8B%E7%A9%8D%E3%82%82%E3%82%8A%E6%94%B9%E5%AE%9A_%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9%E5%8E%9F%E7%99%BA-%E5%BB%83%E7%82%89%E8%B2%BB%E7%94%A8%E3%81%AE%E8%A9%A6%E7%AE%97%E3%81%8C%EF%BC%91%EF%BC%91%E5%84%84%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E5%A2%97%E5%8A%A0/44044156

 フランスでの原子炉廃炉費用は一基あたり1兆円を超えるというデータがあったが、政府に都合の悪い情報は、グーグル検索から排除されてしまっている。
 福島第一(事故)原発の始末費用は81兆円との試算がある。
 https://www.asahi.com/articles/ASM3943DYM39ULFA002.html
(日本人勤労者6000万人とすると、一人あたりの負担額は135万円)

 フクイチの始末費用は、政府によって、被災者の一部にしか支払われていない事故補償費用があまりにも小さく見積もられているので、おそらく1000兆円でも足らないと私は指摘してきた。(震災関連死、福島県過剰分2千数百名の人命補償など)
 すでに24兆円を超えた税金からの始末費補填についても、もちろん東電は支払う意思をまったく見せず、踏み倒すことは確実だ。おそらく、経営陣が退職金と引き換えに会社を潰してしまうことになるだろう。
 
 原発メルトダウン事故は10年に一度の確率で起きている。地球が地殻変動期に入っていることから、フクイチと同様の地震による大事故は、これからも次々に起きると思うしかない。

 現在では、阪神大震災や東日本大震災、熊本震災などで、日本列島の地震が、とんでもなく苛烈なものであることが次々に明らかにされた。
 関東大震災は300ガルと評価されているが、阪神淡路大震災では最大900ガル、東日本大震災が最大2933ガル、関東大震災が300〜400ガルであったの対して、新潟県中越沖地震では2000ガル、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震では4022ガルを記録した。

 このようなデータを突きつけられた原子力産業は、何をやったかといえば、樋口さんの説明にあるように、300ガルにしか耐えられない原発プラントの根本的な耐震性補強工事をやるのではなく、それまでの耐震データを適当に変えて、「計算をし直した結果」という弁明とともに、耐震性が上がったように見せかけたのだ。

 今回、40年超(60年までの)の運転が認可された美浜3号機や高浜1・2号機は、加圧式原発であり、160気圧という運転圧力から、中性子による脆性劣化に加え、原子炉耐圧容器の経年劣化が大きく進み危険だとの指摘があるにもかかわらず、政府は認可を強行した。
 おまけに核燃料は、極めて事故危険性の高いMOXであり、これは運転終了後、500年間もの地上冷却保管が必要になる。

 電力企業の寿命など、おそらく、あと10年程度しかなく、100年後に存続することも絶望的だ。誰も管理しない使用済み核燃料は、やがて環境に漏れ出し、人類の未来を根底から崩壊させてゆくだろう。

「40年ルール」なし崩し 再稼働へ突き進む関西電力の老朽原発 福井県知事が同意へ 2021年4月26日(東京新聞)
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/100540

  老朽原発の運転延長 なし崩し容認できない(中国新聞社説)
 https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=747415&comment_sub_id=0&category_id=142

  ああ美浜原発3号機 40年超再稼働 2021年04月24日
 http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-1473.html

https://bakusai.com/thr_res_show/acode=13/ctrid=5/bid=249/tid=9440947/rid=865184525/word=%E5%A4%A7%E5%8E%9F/

 原子力産業も政府も人間が劣化し、一人の日本人として、ごく素朴に子供たちの未来を守ろうとする意思さえ見失っている。
 彼らには、原発に伴う利権の構造しか見えず、自分たちが利権を失うことだけを恐れ、日本社会の未来を完全破壊することにな何一つ関心を持てない。子供たちの未来さえ守ろうとしない彼らが、利権に突き動かされて、二度と取り返しのつかない巨大な放射能汚染日本を加速させているのが現実だ。