夢か現か

 

　僕には、自分でもいつ見たか分からないが、思い出す度に不思議な気持ちになる場面の記憶があります。<o:p></o:p>

 

　一つ例を挙げます。<o:p></o:p>

 

　季節は夏。<o:p></o:p>

 

　花屋さんの涼しい店の中で。<o:p></o:p>

 

　棚のガラス窓を覗くと、たくさんの花が入っている。<o:p></o:p>

 

そして濡れた目の細かいタイルの上には水の入った青いバケツが置いてあり、その中にはたくさんの小さな金魚が気持ちよさそうに泳いでいる。<o:p></o:p>

 

それを見ている僕も気持ちがよくなっている。<o:p></o:p>

 

もう一つ例を挙げます。<o:p></o:p>

 

これもまた季節は夏。<o:p></o:p>

 

母親と弟と共に店に入る。<o:p></o:p>

 

店の中は、冷房が効きすぎる位効いていて、寒い。<o:p></o:p>

 

そして生の魚の匂いがする。<o:p></o:p>

 

カウンターの中には板前さんが立っている。<o:p></o:p>

 

どうやらここは寿司屋らしい。<o:p></o:p>

 

これらの記憶は現実にあったことなのか、それともかつて見た夢を覚えているだけなのか、判然としない。<o:p></o:p>

 

確かめたいと思っても、確かめられない。<o:p></o:p>

 

つまり過ぎてしまったことはみな夢のようになってしまうのだな。<o:p></o:p>

 

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中国人の袁さん

 

　もう十数年前のことになるか。<o:p></o:p>

 

　会議があるというので、アルバイト先の社長の車で大宮ソニックシティに向かう時、社長の知り合いの袁（えん）さんという中国人を途中で拾って乗せた。<o:p></o:p>

 

　その時、彼は腹を壊していたようで調子が悪そうだった。<o:p></o:p>

 

　その彼が僕に「どこが悪いのですか？」と訊いてきた。<o:p></o:p>

 

　たぶん社長の僕の紹介の仕方が気になったのだろう。<o:p></o:p>

 

　そこで「〈声〉が聴こえるんです」と僕が答えたら、彼は「えっ」と言ったきりそれ以上何も訊いてこなかった。<o:p></o:p>

 

　《聴力が正常なら声が聴こえるのは当たり前じゃないか、何を言っているのだ、この日本人は！》と思ったに違いない。<o:p></o:p>

 

　でも、あの場で「幻聴」という言葉を持ち出しても、果たして理解してもらえただろうか。<o:p></o:p>

 

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詩・できそこないの天使

 

　ああ、分かったよ<o:p></o:p>

 

「できそこないの天使」とは要するに「悪魔」のことだったのだな<o:p></o:p>

 

　アウグスチヌスという人は「詩は悪魔の酒である」と言ったそうだけど、人間の彼にどうしてそれが分かったのだろう？<o:p></o:p>

 

　ああ、分かったよ<o:p></o:p>

 

要するに悪魔とは人間のことだったのだな<o:p></o:p>

 

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みみ

 

　狭山保健所デイケア時代、ある日、Ｄさんという若い男性スタッフがみんなの前で何気なく「幻聴って耳を塞いでも聴こえるの？」と言った。<o:p></o:p>

 

　ふざけているのではない。<o:p></o:p>

 

　もっともな疑問だ。<o:p></o:p>

 

　でも、意外に思われるかもしれないが、僕がそれを試したことは一度もなかった。<o:p></o:p>

 

それまで、十年間、幻聴に苦しめられてきたが、そんな疑問は一度も思い浮かばなかったからだ。<o:p></o:p>

 

　でも現在は、脳内の活動の様子を画像で見ることができるようになったおかげで、幻聴が起こっている時にも実際に脳の聴覚野が活動していることが分かっている。<o:p></o:p>

 

　したがって、耳を塞いでも、幻聴がなくなるわけではないらしい。<o:p></o:p>

 

　考えてみると耳とは不思議な器官だ。<o:p></o:p>

 

　岩宮恵子『思春期をめぐる冒険　心理療法と村上春樹の世界』という本に面白いことが書いてあった（Ｐ１１０）ので引用させていただく。<o:p></o:p>

 

　鎌田東二によると、「雷」は「神鳴り」あるいは、「神成り」であるという説明の仕方が古くからあるらしい。そしてこの説明は、神々の出現と音との関係を示していると述べている（『身体の宇宙誌』）。また、目で見ることのできない神のことを、音や声、つまり響きをとおして現れる存在だと考えるならば、「音声をキャッチする耳は神々の依代であるといえるだろう。神々はまず最初に人間の耳に訪れる」と、耳が、日常を超えた超越的な世界に真っ先に開かれているものであることを明らかにしている。そして耳をなぜ「みみ」と呼んだかということについて、「身の中の身」、つまり「身身」あるいは「実実」であると鎌田は論じている。こう考えると、「みみ」という言葉は、生命や霊の形代としての耳の位相をはっきり示していると言えるだろう。<o:p></o:p>

 

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詩・世界の亀裂

 

　君は<o:p></o:p>

 

夜のコトばかり考えてしまった<o:p></o:p>

 

　昼のうちから<o:p></o:p>

 

気づいてしまったから不安になってしまった<o:p></o:p>

 

　この世界の亀裂に<o:p></o:p>

 

目を逸らし続けられなかったから吸い込まれてしまった<o:p></o:p>

 

　冥界につながる穴に<o:p></o:p>

 

　懐疑主義者は君のコトを疑う<o:p></o:p>

 

まだ疑えるだけの自由がある彼らには分からないのだ<o:p></o:p>

 

君のコトが<o:p></o:p>

 

君が本当に必要としているモノが<o:p></o:p>

 

欠如を埋めようとする君の必死の精神的努力（狂気）に、宗教は「罪」という名を与え、医学は「病」という名を与えた<o:p></o:p>

 

それでナニゴトか理解したような気になって<o:p></o:p>

 

改宗させたり、治療したりする前に、するコトがあるのに・・・<o:p></o:p>

 

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詩・嵐の夜

 

　外は暴風雨<o:p></o:p>

 

　窓ガラスには激しい怒りが叩きつけられる<o:p></o:p>

 

　お前なんて死んでしまえ！<o:p></o:p>

 

　お前なんて死んでしまえ！<o:p></o:p>

 

　と、何度も、何度も<o:p></o:p>

 

　僕の何がいけないの・・・<o:p></o:p>

 

　いや、心当たりがないわけではない<o:p></o:p>

 

　だから畏れるのだ<o:p></o:p>

 

　「ごめんなさい、ごめんなさい」<o:p></o:p>

 

　そう謝ってから僕は布団の中にもぐった

 

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命が宿るフィギュア？

 

　以前にもどこかで書いたが、僕の趣味にフィギュアのコレクションがある。<o:p></o:p>

 

　僕は本当によく出来たフィギュアが好きなのだ。<o:p></o:p>

 

　その造形者を僕は心から《すごい！》と思う。<o:p></o:p>

 

　僕はいったん、《欲しい！》と思ったら、その思いを消すのが大変で、だから最近は意識的にあまりフィギュアを取り扱った店には足を運ばないようにしている位なのだ。<o:p></o:p>

 

　ところで一番最近購入したものが「ゴールド・エクスペリエンス」のフィギュアだ。<o:p></o:p>

 

　１５００円で買えた。<o:p></o:p>

 

　『ジョジョの奇妙な冒険』というマンガは僕が１９８７年（僕が三浪して大学に入った年）から『少年ジャンプ』で連載され始めた。<o:p></o:p>

 

　物語はいまだに続いているようだが、僕が統合失調症になってからはマンガ全般に対する関心が薄れて、読めなくなった。<o:p></o:p>

 

　でも第５部の主人公ジョルノ・ジョバーナの操るスタンドという存在（ゴールド・エクスペリエンス）にはモノに命を与えたり奪ったりできる能力があるという設定を知って、俄然欲しくなったのだ。<o:p></o:p>

 

　僕は部屋のフィギュアたちを前にして考える。<o:p></o:p>

 

　お前たちに固有の物語という背景がなければ、これほど手元に置きたいという衝動には駆られなかったのかな？と。<o:p></o:p>

 

　それを知らない他人が見たら、お前たちはただのつまらない物体に映るのだろうか？と。<o:p></o:p>

 

　でもいいや。<o:p></o:p>

 

本人が楽しいのだから～。<o:p></o:p>

 

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光るモノに対する感受性の変化

 

　最近、何か知らんが、キラキラ光るモノに目が留まることが多くなった、様な気がする。<o:p></o:p>

 

　以前はそういうモノを見続けることに苦痛を感じたものだが、この心境の変化はどうしたものだろう？<o:p></o:p>

 

　僕の心がキレイになったわけではないことは分かっているつもりだ。<o:p></o:p>

 

　ちょっと内省的になれば、そんなことは分かるからだ。<o:p></o:p>

 

　でも変化してきたことは確かだ。<o:p></o:p>

 

　しばらく様子を見てみよう。<o:p></o:p>

 

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何か秘めている

 

　入院先の精神病院にいたあの青年、今頃どうしているだろう？<o:p></o:p>

 

　ひげは剃らず、髪の毛もボサボサで、そこから覗く目の輝きが何故かいまだに忘れられない。<o:p></o:p>

 

　重症の患者が入る部屋にいた彼が誰かと話しているところなど見たことがなかったが、言葉にならない何かを秘めているような気がしてならなかった。<o:p></o:p>

 

　あれから２０年が経つ。<o:p></o:p>

 

彼の病が少しでも軽くなりますように。<o:p></o:p>

 

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はみ出し者でも生きていける

 

　平日の日中、駅の周辺にマイクを持って陽気に歌いながら踊る一人のオジサンあり。<o:p></o:p>

 

　《ああ、この人も社会からはみ出している・・・》。<o:p></o:p>

 

　浮浪者とか障害者とか「社会復帰のための訓練の必要アリ」とされるような人たち。<o:p></o:p>

 

僕の周囲にたくさんいてよかった。<o:p></o:p>

 

　社会からはみ出しても、つながっていれば、何とかなる。<o:p></o:p>

 

　彼らは僕にそう気づかせてくれる。<o:p></o:p>

 

　たとえ世界がどれほど美しく残酷であっても生きていける。<o:p></o:p>

 

　そう思わせてくれる。<o:p></o:p>

 

　時に社会は「お前には電気も水もガスもやらない」などという仕打ちをするけれど。<o:p></o:p>

 

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もしそれができたなら

 

　「求め過ぎるな、よく考えろ！」という警告を無視して狂ったモノたち。<o:p></o:p>

 

　確かに彼らはバカだったかもしれない。<o:p></o:p>

 

　それでも、生き残れれば、やがて充足の時が訪れる。<o:p></o:p>

 

　保護されるからか？<o:p></o:p>

 

　違う。<o:p></o:p>

 

　彼らが本当に安らげるのは己の中には狂うだけのモノがあったと悟る時なのだ。<o:p></o:p>

 

　愛というモノを「愛」という言葉を用いずに表わせたら。<o:p></o:p>

 

　神というモノを「神」という言葉を用いずに表わせたら。<o:p></o:p>

 

　それは法外な願いなのだろうか。<o:p></o:p>

 

　でも狂気の淵から帰ってきたモノにはそれができるかもしれない。<o:p></o:p>

 

　なぜなら彼は己の体験を語りさえすればいいのだから。<o:p></o:p>

 

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マグマの砂時計

 

　昨日、散歩のついでに寄った所沢航空発祥記念館の売店で変わった３分間砂時計を買った。<o:p></o:p>

 

　普通、砂時計といったら、砂が下に向かって落下するのに、これは砂が上に向かって上昇するのだ。<o:p></o:p>

 

　だから「マグマの砂時計」だと。<o:p></o:p>

 

説明書にそう書いてある。<o:p></o:p>

 

うん、おもしろい。<o:p></o:p>

 

　オレの「さかさま人生（どんなだ）」の象徴にできると思った。<o:p></o:p>

 

　透明な液体の中をゆっくり移動するきれいな緑色の砂を見ていると本当に心が落ち着く。<o:p></o:p>

 

　いい買い物をした。<o:p></o:p>

 

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今日は姪っ子の誕生日

 

　２０１２年１月１９日（木）。<o:p></o:p>

 

　今日は姪っ子チサトの１４回目の誕生日だ。<o:p></o:p>

 

　元旦に僕の家に来たが、彼女は心身ともに確実に成長している。<o:p></o:p>

 

　昨年には彼氏もできたようだ。<o:p></o:p>

 

　負けてるじゃん、オレ、すでに。<o:p></o:p>

 

　でも彼女が幸せならそれでいい。<o:p></o:p>

 

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ココロノロウジン

 

「ココロノロウジン」、未来をソウゾウする人、憎むか<o:p></o:p>

 

　新しいコトより古いモノ、好むか<o:p></o:p>

 

他人の批判や揚げ足取りばかり、こだわるか<o:p></o:p>

 

己の言葉のトゲ、気づいていないか<o:p></o:p>

 

知っていてやっているのか<o:p></o:p>

 

だとしたら悪質な人<o:p></o:p>

 

　年齢には関係ない<o:p></o:p>

 

　肉体が若い人の中にもいる<o:p></o:p>

 

　気をつけろ<o:p></o:p>

 

　感染力は強いから<o:p></o:p>

 

　ココロが死んでしまわぬように<o:p></o:p>

 

　生きる姿勢の問題<o:p></o:p>

 

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詩・ヒキガエル

 

　春先の小学校の裏の道路に潰れて死んだヒキガエルがたくさん<o:p></o:p>

 

　冬眠から醒め、プールの水を求めて、森から離れようとしていたところ、車に轢かれたのだろう<o:p></o:p>

 

　運転手にとっては轢きガエル<o:p></o:p>

 

　魂を引き換える<o:p></o:p>

 

　やっとこれからだっていうのに・・・<o:p></o:p>

 

　ヒキガエルは言葉を喋れないから、僕はこの言葉を頭の中で二度繰り返した<o:p></o:p>

 

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