星川啓慈・松田真理子『統合失調症と宗教 医療心理学とウィトゲンシュタイン』という本を再読した。<o:p></o:p>
発行は2010年だから割りと新しい本だ。<o:p></o:p>
帯にはこうある。<o:p></o:p>
・統合失調症を人間存在の深いあり方を照らすものとして考察。<o:p></o:p>
・人間存在のリアリティとは何かに迫る。<o:p></o:p>
・臨床心理学者と宗教学者が正面から取り組んだ。<o:p></o:p>
・「生きられる世界」としての宗教と狂気――スリリングな対話が既成専門分野の死角を照らし出している。<o:p></o:p>
・医療が薬物と訓練に突き進むなら、21世紀に統合失調症を語り継ぐのは宗教学者と心理学者になるのだろう。<o:p></o:p>
・日常と非日常をつなぐ橋。<o:p></o:p>
実際、3500円と少し高いが、読んでみる価値はある本だと思う。<o:p></o:p>
僕は、論理的確実性を求めた哲学者ウィットゲンシュタインに宗教的側面があったことが分かって、少し親近感を覚えた。<o:p></o:p>
従来の哲学者による研究に異を唱え、ウィトッゲンシュタインの『確実性について』は幼少期に獲得されるべきはずの「基本的信頼感(ベイシックトラスト)」を死を前にして再確認するためのものであるという解釈や、「論理(学)的確実さ」を求めた裏には「論理(学)的確実さを求めざるをえない心理(学)的理由」があったという筆者の意見は刺激的だった。<o:p></o:p>
この本に引用されていた小林秀雄という有名な評論家の言葉を最後に載せます。<o:p></o:p>
昭和25年に起きた、金閣寺徒弟僧林養賢による同寺放火事件についての論評。<o:p></o:p>
狂人は間違って考へるのではない、寧ろ正しい考へに閉ぢこめられて身動きが出来ないのである。<o:p></o:p>
それ自体では正しいが、全く無益な無効な推論を頑固に取って動かぬから、目を醒ます機はないのだし、欲するままに病を重くすることができる。<o:p></o:p>