道々の枝折

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インナーマッスル考

2023年03月25日 | 健康管理
年寄りの冷や水的行為で肋骨やインナーマッスルを傷めた結果、考えさせられたことを披瀝させていただく。

私たち年寄りが日頃訴える、原因不明な体のあちこちの痛みは、よく言われる関節や骨格筋の炎症ばかりでなく、常にはその存在すら忘れている数多のインナーマッスルから発しているものもあるのではないか?という疑念が湧いた。
インナーマッスルは体の深層にある不随意筋だから、何処にあるのか、知覚するのは私たち素人には難しい。知覚できるのは横隔膜ぐらいだろう。

インナーマッスルは、動かそうとしても動かせない筋肉だが、主動を担う骨格筋への脳の起動命令系統の中間に在って、脳からの信号を受信し、筋肉運動の初動をリードする。その性質からして、骨格筋よりも神経がより細密に張り巡らされているのではないかと想像される。したがって、其処に僅かな傷や炎症が生じたときには、骨格筋よりも敏感に痛みを発するのではないかと素人考えに思う。

骨格筋をガンガン動かしていられた若い頃は、インナーマッスルも健全で、無理に使い過ぎたり断裂したとき以外はその存在すら感じなかったはずだ。

多くの人は、高齢になり骨格筋が弱り衰えて初めて、インナーマッスルの存在に気づく。骨格筋の劣えを補うためインナーマッスルに過大な負担がかかり、そこが恒常的に痛みを散発させる原因になっているとしたら、私たち高齢者は、日常生活の根本から、対策を見直さなくてはならない。

雪国の農家の人々が、農閑期に週単位で湯治に出かけていたのは、農繁期の重労働で傷んだインナーマッスルの治療が目的だったのではないか。これまで温泉療法は、アウターマッスルの疲労や痛みの治療目的とばかり捉えていたが、実は湯治で最も効果が及ぶのは、インナーマッスルだったのではないかと考えるようになった。
スポーツ選手の故障に対する温泉療法なども、マッサージなど直接の施術が効かないインナーマッスルに対する消極的治療行為だったと考えると理解し易い。

多くの老人が筋トレに励んでも成果が上がらないのは、食事やホルモンのせいばかりでなく、インナーマッスルの起動力が衰えて主動筋である骨格筋が力を出せないことに要因がありはしないか?
また高齢者の動きが加齢と共にぎこちなくなるのも、インナーマッスルが劣化して脳の命令に即応できないことがひとつ、もうひとつはインナーマッスルから出る痛みによって、主動骨格筋を動かすことが困難になっていることも、要因として考えられるだろう。

インナーマッスルのトレーニングとは、どのようにやれば好いだろう。
無意識下で働くインナーマッスルは、力を発揮する骨格筋と違って、強い過重をかけたり反復繰り返しの動作を増やして筋肉を強化することはできない。
体幹と四肢を伸展し、重力に逆らう静止荷重を持続的に骨格筋にかけると骨格筋が緊張し、それに連結したインナーマッスルが覚醒する。
意識を筋肉の緊張部分に集中し、脳との神経伝達経路の要点となるインナーマッスルを脳に反復知覚させておくことが主要な方法になるのではないかと思う。活性化とは、脳からの刺激に即応する能力を高めることである。

インナーマッスルの衰弱の中でも、特に腸腰筋の衰えを防がないと、歩行に支障をきたすことになる。これは3つの筋肉の総称だが、その中で最も長大な大腰筋のテンションが弱まると、骨盤が後傾し前屈みの姿勢になり、脚が上がらず歩幅が狭くなる。総じて身体の動きが悪くなり、転倒の危険は、その状態で最大になる。

インナーマッスルが衰え、脳との連係が疎遠になると、高齢者はフレールが危惧される。骨格筋の実働は、初動のインナーマッスルと主動のアウターマッスルとがセットで作動しているからである。インナーマッスルが健常でないと、アウターマッスルを強化鍛錬できない。フレールを防ぐには、アウターマッスルのトレーニング以前に、インナーマッスルのトレーニングを日常化すべきである。またインナーマッスルを常に刺激していると基礎代謝が高まるので、熱の産生が弱まった70才以上の人たちには励行をお勧めしたい。

中国に太極拳というものがあるが、あれはインナーマッスルの保全に最適のパフォーマンスではないかと私は関心を抱いている。鍛錬とは違い、柔らかく穏やかな動作の体操である。脳とインナーマッスルとアウターマッスルとの連係をトレーニングするに好適かと思う。4000年の経験の積み重ねには感服のほかない。



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