社会断想

諸々の社会現象にもの申す
中高年者・定年退職者向け

病床余話

2007年12月12日 09時12分49秒 | Weblog
病床余話

10月中旬から20日間及び11月下旬から数日入院した。
我が人生75年で入院は初めての経験である。それだけに見るもの、聞くものが小生にとっては物珍しく新鮮ですらあった。以下些事細事を記す。記述は日時的に順不同である。

1)T字帯とは越中褌なり
ある日カテーテル検査をするから「T字帯」を用意しておくように看護師に告げられた。院内の売店にあると看護師は言う。
小生には「T字帯」が如何なる物かは判然としなかったが、ともかく売店に出向き購入する。ビニール袋から取り出して見るとなんとそれは越中褌そのものである。
なるほど広げてみると「T」の形をしている。
この越中褌を眺めて記憶は一挙に60年前に遡る。
第二次戦争終結間もなく物のない頃の日本人男子は皆この越中褌をしていたのではなかろうか?男子の一物を保護するには甚だ頼りない物であったが。
越中褌の名前の由来は考案者である江戸時代初期の武将細川越中守忠興によると伝えられる。考案の趣旨は布6尺を使う6尺褌にくらべ数分の一の布で足りるからである。
いまや資源節約思想の産物から医療施術の必要上から使用されるようになり、ここに400年の歴史を持つのかと下らぬ感慨にふけっているうちに看護師が呼びに来た。

2)「朝禁昼延」この妙な4字熟語
今世の中は漢字がブームとか?漢字が読めても書けない大人が増えている由。小生もその一人だが。ワープロ、パソコンでの文章作成が増え、漢字が書けなくとも適切な漢字を候補から選択をすれば良いから必然的に漢字を書く努力を怠るようになるというのが原因だそうだ。
しかし一方で反省の気分もあり反動的?に、これではならじと漢字がブームを呼んでいるのだろう。
さて大きめの表札様に書かれた4字熟語「朝禁昼延」が翌日の手術予定表とともに小生のベッド脇に置かれた。お察しの通り、当日は朝食抜き、昼食はずれ込むとの予告である。
それにしてもズバリ過ぎる4字熟語ではある。

3)同室病友の横顔
一ヶ月近く入院すると同じ病室(6人部屋)のメンバーも次々に変わってゆく。
もともと急性疾患で救急病棟から回ってくる患者達(平均年齢70歳以上か?)なので2~3ヶ月以上の長期入院者はいない。後から入り数日で退院する人、依然として退院許可が出なく嘆いている人さまざまである。そんな中で数日を同じ病室で過ごすと同病相憐れむというか、自然と親しく口をきくようになる。また自然と耳に入る見舞客との会話からもその人の家庭事情や取り巻く個人的環境がほの見えてくる。
しかし中には嫌な感じの人もいる。自分の過去を誇る、財産、土地家屋がどれほど有るかを滔々と且つ同じ事を繰り返し喋る、喋り疲れると眠ってしまう。相手に対して何らの関心を示さない、ひたすら自分の事のみを自慢する。病室外の社会でも時々ぶっつかる種類の人である。病室までそんなことを持ち込まないでよと言いたくなる。
そんな人が一足早く退院してくれると正直ホットとするのである。

4)カテーテル検査と手術
この検査・手術は小生にとっての今回の入院のハイライトである。
カテーテル検査はカテーテルなる管を上腕部動脈に入れ(小生の場合心臓の冠動脈)それに造影剤を注入し心臓血管の状態即ちつまり具合―狭窄の存在、部位などを見るものである。医師の説明によるとごくごく普通の施術であるが100%絶対安全とは言えないので、この施術を承諾する旨の承諾書をサインをさせられた。
ともあれ検査の結果、施術そのものは痛くもかゆくもなく一時間程度で終わったが、冠動脈の一本に狭窄が見つかり状態撮影写真をもとに医師の説明を受けた。
この結果を受けて数週間後にステント留置手術を受けることになった。
この手術は足の付け根の動脈からカテーテルを注入しバルーンつまり風船を狭窄部まで運び風船を膨らませ狭窄部を太くする。太くなった所にステントなる管を置き血管の太さを維持するという仕掛けである。
この手術も別に痛みを伴う訳ではないが、風船を膨らますために180気圧(医師の指示で180気圧という言葉が聞こえたので多分?)の空気が送られたときに、ああ今血管が太くなっているのだという気がした。
約一時間半の施術であったが術後の安静が計9時間、つまり一種の傷口であるカテーテル注入部からの動脈出血を防ぐために身動き出来ない時間の長さには閉口した。

5)最後に
76歳の現在まで入院治療の経験のない小生の僭越な感想であるが、医術、医療機械の進歩は今まで抱いていたイメージを遙かに超えていた。
ナース室における患者に対する情報共有は上手くいっている(どのナースに質問しても即刻或いは短い時間で返事が得られる)と思う反面、患者が一番知りたいと思う情報即ち今後の治療予定、退院予定らの情報が自動的に下りてこないのは不満であった。

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