社会断想

諸々の社会現象にもの申す
中高年者・定年退職者向け

緊急入院その2: ご同輩に告ぐ

2007年11月13日 12時08分00秒 | 社会断層
管に始まり管に終わる:
緊急処置が終わりどのくらい時間が経ったか分からないが覚醒した時に真っ先に気付いたのは口に差し込まれた2本の管、これは肺にたまった水と痰を時々吸い上げる管ともう一本(この管は何用なのか分からない)、静脈の注射針から伸び点滴棒にぶら下げてある点滴液に繋がる輸液管、胸部につけられたセンサーから心電計に繋がるワイヤー、そして小便自動排泄用の管、これは男性器の小便排泄口に突っ込まれいるもので、その存在は私自身の一番最後に発見しかつ一番驚き且つ苦笑せざるを得なかったものである。
ということで体中を管、電線でがんじがらめになっており不自由この上もない。
一番不自由を感じたのは口に差し込まれた2本の管である。このため口がきけないのである。コミュニケーションは看護師の手の平にカタカナで水が欲しいときに「ミズ」と書く最低限の意思疎通である。
これらの管類も快復にともない一本ずつ抜いて貰えるのだが、なんと言っても口に突っ込まれた管が医師の「もういいでしょう」という指示で抜かれたときは嬉しかった。口が聞け、かつ鬱淘しさからの開放感は云いようのないものであった。
口から管が抜かれ「オヤッ」と感じたことがある。舌で口の中を探るとどうもおかしい。上唇とその下にある前歯と順にたぐると判った。前歯の3本が脱落していたのだ。
管を差し込む際にこの前歯3本が邪魔で医師の「歯よりも命、一刻も早い処置が大切でしょう」と家内の承諾のもとにあっさりと抜かれたと家内から聞いた。
尤もこの3本の前歯は30有余年前に処置した差し歯であり、最近ぐらぐらしてきており何とかせねばならぬと考えていた矢先であったので別に惜しいとは思わなかったのである。医師もぐらぐら歯なので躊躇なく抜いたのであろう。
前歯3本が抜けると何とも間の抜けた顔になり、家内に言わせると10歳老けて見えるそうである。入れ替わりにやってくる友人や後輩の見舞客に間抜面とふあふあと不明瞭な発言が何とも無様で慚愧に堪えなかった。
退院後早速歯科医院に駆け込み入れ歯を頼んだ。今日現在は仮り歯が入っており、歯をむき出さなければ他人には判らない程度にはなっている。
口からの管が抜けると次は点滴用の管である。これが外れると点滴棒と一緒でなくて動きの自由度がうんと増す。そして最後は小便管である。これが抜かれると尿意を催すといちいちトイレに通うことになるが、自然の開放感の方がやはり有り難い。
心電計センサーは最後まで付けていたが体の動きを邪魔するわけではないが無線送信機がぶら下がっており、センサーが外れると看護師が飛んでくる。無線送信機かナース室のモニターにセンサーの剥離を知らせるのである。看護師がやってくるのは昼夜を問わずであり、真夜中就寝中に胸のあたりがゴソゴソと弄られて眼をさますと看護師がセンサーを付け替えている。寝相の悪い小生はこの真夜中の白衣の天使のお世話に何回もなったのである。(続く)

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