TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

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三浦康栄展@ギャラリー銀座一丁目

2013年06月13日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩
 
 この個展では、どの作品も背景は具体的に描写されていません。ザラザラとしたニュアンスを持つグラデーションが、穏やかにメインの絵を包み込んで引き立てています。ザラザラした風合いはキャンバスの粗さにもよるそうです。キャンバスの目にも粗いもの細やかなものなど、いろいろあるということを初めて知りました。同じ色を塗っても、同じ絵を書いてもキャンバスの目によって表情が変わる。作家の方にとってはキャンバス選びも大切なのですね。そんな背景色を携えて描かれている半分は、黄色い小薔薇や柘榴や玉葱などの静物。そして、もう半分は裸婦でした。8点ほどの裸婦像がありましたが、1人の女性を8通り描いたのではなく8人8態。三浦さんが個展で裸婦を発表するのは初めてなのだそうです。見に来た友人たちからは、裸婦に対してのダメ出し意見があったようです。「カタい!」「カタい!」と言われちゃったと苦笑されました。
 裸婦の絵は、何人もが一斉にスケッチをするデッサン会のようなところで、初めて会ったモデルを短い時間でささささっと描いたそうです。その後はモデルなしでキャンバスに向き合う。作品を作り出す時間の中で、モデルと共有する時間はとても短いといえます。日常生活の中でも、初対面、短い時間だけではお互いを理解し合うことは誰だって難しいもの。人間関係はカタいままになるはず。そういった限定された時間による関係性のようなものが、そのままキャンバスに表現されたのではと推測してしまいました。それにしても、「カタい!」という言葉は、有り難くない言葉として一概に捉えていいものなのでしょうか。刹那的なモデルとの関係性がカタさに表れているという意味では、絵はただしく関係性を表現できているといえるのではないでしょうか。
 三浦さんは新潟のご出身です。この日、同級生の方が長岡から個展を見にいらっしゃいました。前回の個展の際にもはるばるいらしたそうです。お二人は学校は一緒だったけれども一度も同じクラスにならなかったとか。それでも何十年も続く長年の親しい間柄。ギャラリーの椅子に座って、お祝いに差し入れてくださったお酒で乾杯。しばらく歓談した後、同級生の方はまた長岡へ。何気ない時間でしたが、いい再会を目の当たりにさせていただきました。フランクで気さくな雰囲気。……この同級生の方をモデルに描けばカタい!だなんて言われないかもしれませんね。けれども、同級生の方は男性。裸婦像とはいかないわけです。裸夫像ならば?(山本理絵)