TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

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三木富雄の「耳」 @東邦画廊

2014年06月18日 | 注目の現代美術作家と画廊散歩

(東京国立近代美術館所蔵の耳)

 何の変哲もない普通の耳の形のオブジェ。と、だけしか、「写真で見たとき」には感じませんでした。実際にフロアに横たわる、巨大で重厚な耳を目の当たりにしてびっくり。普通の耳といえばその通りです。普通の耳の形をしているだけのように見えますが、耳の持つ曲線と起伏の様子に見入ってしまいました。小宇宙のような、枯山水のような、不思議な佇まいを感じるのです。
 耳には100か所以上のツボがあるそうですが、胎児の形はちょうど耳の形にあてはまり、ツボが効く位置と胎児の身体の位置がだいたい一致しているそうです。あるフランスの学者も50年以上前に、人間の発生段階と耳の形が一致するという、人体投影仮説を唱えたとか。胎児に最初に発生する感覚器官は耳だそうで、臨死・瀕死状態では最後に耳だけが聞こえるという話もあります。人間の感覚は耳で始まり耳で終わると言えるのかもしれません。
 耳の作品ばかりひたすらつくり続けた三木さんは、特にその理由を語らずに夭逝。耳は単なる人体の器官の1つではなくて、別の何かを内包しているといったことを、もしかしたら感覚的に感じ取っていたのではないでしょうか。(山本理絵)