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『ガープの世界』

2016-02-25 09:58:34 | All About おすすめ映画

『ガープの世界』(82) 

ホエン・アイム・シックスティー・フォー

 第二次大戦中、看護師のジェニー(グレン・クローズ)は瀕死の兵士をレイプし、一人息子のガープを宿します。やがて作家となったジェニーはウーマンリブやフェミニズムの教祖的な存在となり、レイプされた女性を救済する共同体を造ります。

 一方、妻子を得たガーブ(ロビン・ウィリアムズ)は必死に家族を守ろうとしますが、ことごとく裏目に出て、最後は不条理な暴力の犠牲になります。

 価値観が大きく変転した1950~70年代のアメリカを舞台にした異色のホームドラマで、ガーブと周囲の人々がたどる数奇な人生を、時にコミカルに温かみを持って、時に悲しくドライに描きます。

 監督は『明日に向って撃て!』(69『スティング』(73のジョージ・ロイ・ヒル。彼は映画化は難しいとされた二つの小説を監督しています。一本目がカート・ヴォネガットの『スローターハウス5』(72)、そしてもう一本がジョン・アービングの同名小説を映画化したこの映画です。両作は不条理な暴力や死とユーモアが共存する世界を描くという意味で共通しています。

 1980年代はアービングの小説がブームとなりました。彼の処女作『熊を放つ』を翻訳した村上春樹はこの映画を「ロイ・ヒル監督は、シュールで難解な原作を、優しさと温かさで描き、分かりやすく親切にまとめている」と評しています。

 ところで、この映画のオープニングとラストには、青空を背景に上下する笑顔の赤ん坊が映ります。そのバックにはザ・ビートルズの「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」(君と一緒に年を取ろう。64歳になっても愛しておくれ)が流れます。これがガーブの誕生と昇天を表しているのかは定かではありませんが、不思議な温かさと悲しさを持ったこの映画を象徴する名シーンとして心に残ります。

 ウィリアムズ、クローズの好演に加えて、最後までガーブ一家に寄り添う性転換したフットボールプレーヤーを演じたジョン・リスゴウが絶品です。

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