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山田太一脚本のドラマ その5「男たちの旅路スペシャル 戦場は遥かになりて」

2023-12-03 00:24:46 | テレビ

「男たちの旅路スペシャル 戦場は遥かになりて」(82.2.13.NHK)

 久しぶりに作られたドラマシリーズのスペシャル版。このシリーズに一貫して流れるテーマは「世代」だろう。鶴田浩二演じる戦中派の吉岡と、森田健作、水谷豊、柴俊夫、清水健太郎、桃井かおり、岸本加世子といった、戦争を知らない世代との対立が、第一話からずっとそれぞれのドラマの核になっている。

 例えば、「シルバーシート」の老人問題、「車輪の一歩」の身障者問題、あるいは吉岡によって語られる戦争体験など、現代社会が抱えるさまざまな問題に対して、戦中派と戦後派による考え方のギャップを描き、ディスカッションをさせながら、その問題の核心にふれていく。その意味では、このドラマシリーズはまさに山田太一の独壇場である。

 今回は2時間スペシャルということで、これまで語ってきたことを集約した感があった。中でも戦争体験を語る吉岡=鶴田の姿は圧巻だった。

 われわれ戦争を知らない世代にとって、体験者が美化したりノスタルジックに戦争を語る傾向には恐ろしいものがある。例えば、このドラマのタイトルバックに象徴的に使われた「宇宙戦艦ヤマト」の大ヒットや、去年の『連合艦隊』とドイツの『U・ボート』の違いを見てもそれは明らかだ。戦争を体験した者がそれを美化したりノスタルジックに語れば、それを知らない世代が乗せられても不思議はない。  

 その点、このドラマは、吉岡を通して終始一貫「あれは間違いだった」と言わせているが、その横にハナ肇が演じた懐古派も登場させ、われわれには理解し難い、あの世代の矛盾を感じさせる。

 このあたりが、山田太一の奥行きの深いところで、一つの主張に対して、それに反対するものも描きながら、その問題の根本に触れていくのである。


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