ピストルと長ドスをボールとバットに持ち替えて
やくざ同士の野球大会を描いた岡本喜八監督のスポーツコメディ映画です。昭和25年の北九州。やくざの縄張り争いに手を焼いた警察署長が、進駐軍の肝いりもあり、野球で民主的に決着を着けるように提案します。古株の岡源組がダイナマイツを、新興の橋傳組がカンニバルズを結成して覇を競います。
ちなみに映画のタイトルは岡源組の「ダイナマイトー!」「どんどーん!」という気合い入れの掛け声から取られています。彼らは表向きは「野球にはルールがある」と平和裏に準備を進めることを誓いますが、もちろんルールなどはまったく無視。勢いのある橋傳組は金にものを言わせて全国から野球の得意な渡世人を集めます。その中には、指を詰めたために魔球を投げることができる銀次(北大路欣也)もいました。
一方、加助(菅原文太)を筆頭に、野球に関しては素人ばかりの岡源組は明らかに分が悪い。そこで戦争で片脚を失くした元プロ野球のピッチャー五味(フランキー堺)をコーチに雇います。『仁義なき戦い』シリーズを支えた俳優たちが、ピストルと長ドスをボールとバットに持ち替えて野球に興じる姿が笑えます。
迎えた決勝戦、岡源組は“一人一殺”の殺人野球に活路を求め バットの中に凶器を仕込み、スパイクの金具を研ぎ澄まします。気に食わない奴にはボールをぶつけて“退場”させ、なにかといえば乱闘を繰り返す両軍…。
まるで漫画のような試合展開ですが、この映画は、野球を戦後の平和の象徴として捉えています。それは、銀次をまねて魔球を投げるために指を詰めた若者(石橋正次)を、五味が「戦争でもなんでもないときに自分の大事な指を詰めるなんて大馬鹿野郎だ」と一喝する場面や、試合後、沖縄の強制労働に送られた彼らが、そこでも野球をするラストシーンに象徴されます。
岡本監督は、この映画の後、学徒出陣で特攻隊となって戦火に散った六大学野球の選手たちを描いた『英霊たちの応援歌 最後の早慶戦』(79)を撮っています。この二作を対で見ると、戦争の前後という時代の変化を、野球を通して見ることができます。
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