『ヒート』(95)(1996.9.29.目黒シネマ.併映は『白い嵐』)
仕事に疲れてまともな家庭生活が送れない刑事のビンセント(アル・パチーノ)。冷徹無比な犯罪組織のボス、ニール(ロバート・デ・ニーロ)。追う者と追われる者、虚々実々の駆け引きとせめぎ合いを繰り返すうちに、2人はそれぞれが抱える孤独から奇妙な共感を覚えるが…。
アル・パチーノとロバート・デ・ニーロ。 『ゴッドファーザーPARTⅡ』(74)はいわば “すれ違い共演”だったから、実質的にはこれが初共演ということになるだろう。
だがこの映画の場合は、この大物2人の共演がかえってマイナスに作用したと言っても過言ではない。2人を平等に扱ったがために、対立する互いのドラマに割く時間までをほぼ均一化している。古い話だが、その昔の東映で片岡千恵蔵と市川右太衛門の共演の際はそれぞれのカット数がほぼ同じだったという伝説を思い出した。加えて、バル・キルマーら、脇役たちに関するドラマまで盛り込んでいるために、いきおい3時間近くという普通の映画2本分の上映時間になってしまったのだろう。
これは好意的にとらえれば、監督、脚本のマイケル・マンの役者たちや自らが作り出したキャラクターに対する律儀なまでのサービス精神 という言い方も出来ようが、結果的には映画全体のリズムが失われ、焦点がボヤけた印象が残ってしまったのは残念ながら否めない。
ただこのマイケル・マンが、もう少し“絞り込みの技”を覚えたら、その時は傑作を作る可能性は大いにあると感じさせるシーンなりこだわりが、この映画の端々に見られたことは、今後への期待という意味も含めて覚えておこうと思う。
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