田中雄二の「映画の王様」

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『フェラーリ』

2024-07-02 22:32:25 | 新作映画を見てみた

『フェラーリ』(2024.7.2.オンライン試写)

 1957年。イタリアの自動車メーカー、フェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は、難病を抱えた息子ディーノを前年に亡くし、会社の共同経営者でもある妻のラウラ(ペネロペ・クルス)との関係も冷え切っていた。

 そんな中、エンツォは愛人のリナ(シャイリーン・ウッドリー)とその息子のピエロの存在を妻に知られてしまう。さらに会社は業績不振に陥って破産寸前となり、競合他社からの買収の危機にひんしていた。エンツォは、起死回生の一手として、イタリア全土1000マイルを縦断する過酷なロードレース「ミッレミリア」に挑む。

 マイケル・マン監督が、ブロック・イェーツの『エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像』を原作に、私生活と会社経営で窮地に陥った59歳のエンツォが挑んだレースの真相を描く。製作も兼ねたドライバーが、癖の強いエンツォを見事に演じている。まさにカメレオン俳優の面目躍如といった感じだ。

 ところで、マン監督が製作に回った『フォードvsフェラーリ』(19)にもエンツォは登場したが、あの映画はフォード側(アメリカ)から見たものだったから、今回は逆の立場から描いたことになる。つまりこの2作はコインの裏表のような映画なのだ。ただし、人物描写は『フォードvsフェラーリ』の方が上を行く。
 
 なぜなら、この映画はレースシーンの音や映像はすごいのだが、人物描写が雑なので、エンツォやレーサーたちのレースやレーシングカーに注ぐ狂気のような情熱があまり伝わってはこない。それ故、会社の経営や妻と愛人の間で悩むエンツォの姿ばかりが印象に残ることになる。

 マン監督の映画は、総じて語り口が冗漫で緊張感に欠けるから、見ていて消化不良に陥り、結果的にいま一つぱっとしない印象を受けるのだが、残念ながらこの映画もその例に漏れなかった。


『フォードVSフェラーリ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/53824f8065aeaa625eba46c662232982


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