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柳家小三治(2004.6.26.新宿・末広亭)

2021-10-10 22:56:14 | 落語

 落語家の柳家小三治師匠が亡くなった。何度か寄席で噺を聴いたが、最後に聴いたのは「あくび指南」(2004.6.26.新宿・末広亭)だった。

 先日、かみさんと一緒に久々に寄席(新宿・末広亭)に行った。昼の部の終演間際に入ったら、ちょうど柳家花緑の「中村仲蔵」のラスト。場内は満員だったが、夜の部との切り替え時になんとか席を確保することができた。

 で、夜の部。柳家一門の若手と中堅が次々と登場。演目は、与太郎ものの「唐茄子屋でござーい」の「かぼちゃ屋」。「目が回る、家が回る」おなじみの「親子酒」。目尻と女尻を勘違いする、ちょっと艶っぽい「目薬」。武士の横暴に町人が逆襲する「万病円」。寄ってたかって人の女房をかわいがる、五街道雲助の「町内の若い衆」。おまけにピンチヒッターの「百面相」もあり。
 
 色物は漫才の笑組、奇術のアサダ二世、そして野口雨情作詞の「赤い靴」のエピソードをメインにした近藤志げるのアコーディオン漫談がなかなか興味深かった。これは昔の演歌師の流れをくむものかな。中入り前のトリは入船亭扇橋の「茄子娘」。扇橋師匠、だいぶ衰えたなあ。ちと淋しい。

 さ、て後半は、「一服させてくれや」の「粗忽の釘」というよりも、地噺がメインの林家たい平がトップバッター。さすが三平の孫弟子といった感じ。

 続いて、津軽三味線の太田屋元九郎をはさんで、わが贔屓の一人、桂文朝の「悋気の独楽」。ちょっと前にはやったベイブレードの闘いみたいな、旦那とかみさんとお妾の三角関係を独楽に例えた愉快な噺だ。文朝師匠のトボけた味がいい。

 お次の柳家はん治の新作落語「鯛」はまったくの無印だったのだが、生けすの中の鯛を擬人化したちょっとSFチックでブラックな味のある噺で、なかなか面白かった。後でかみさんが『ファィンティング・ニモ』みたいだと言っていたが、作者は桂三枝とか。ピクサー社は落語までリサーチしてる? まさかねえ。

 翁家和楽社中の太神楽曲芸を見ていると、いまさらながら「おめでとうございます」の海老一染之助・染太郎師匠の見事なコンビネーション芸を思い出さずにはいられなかった。もう二度とあの芸見ることはできないんだなあ。

 オオトリは柳家小三治。相変わらず長ーい枕(江川が嫌いなんだ!)を語った後に始まったのは「退屈で、退屈で、はあー」の「あくび指南」。さすがに間の取り方が絶品で、前半に演じた若手や中堅との違いをまざまざと見せつけてくれた。

 以上、約4時間余りの長丁場だったが、改めて「寄席はいいなあ」と実感させてくれた。ところが帰りにかみさんと食事のことで―悶着…。こっちの方が落語みたいだ。


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