『囁きの河』(2025.7.11.オンライン試写)

熊本豪雨から数カ月後。母(寺田路恵)の訃報を聞き22年ぶりに人吉市に帰郷した今西孝之(中原丈雄)は、山が削られ、多くの家屋が流され、川の流れまで変わり果てた故郷の姿を目の当たりにする。
孝之は22年間会うことのなかった息子の文則(渡辺裕太)と再会するが、文則は幼い自分を捨てて家を出た父に心を開こうとしない。文則は球磨川下りの船頭を目指して修行に励んでいたが、水害後、球磨川下りの再開の目処がたたずにいた。
一方、かつて孝之の恋人だった老舗旅館「人吉三日月荘」の女将・山科雪子(清水美砂)は、半壊した旅館の再生を試みるが、夫の宏一(三浦浩一)は水害で父を亡くしたトラウマを抱え、旅館を畳むことを考えていた。また孝之の隣人・横谷直彦(不破万作)は、余命3年を宣告された妻・さとみ(宮崎美子)の希望で仮設住宅を出ることにする。
2020年7月の熊本豪雨を背景に、水害の爪痕に苦しむ人吉球磨地域の人々の姿を描く。人吉市出身の中原が主演し、NHK連続テレビ小説「おしん」の大木一史が監督・脚本を手掛けた。
被災地のことを決して忘れてはならない。被災者の生活や心情を映画を通して知らしめるという意味では、こういう映画は必要だ。だがこの映画の場合は、登場人物たちの心情の描き方が中途半端なので感情移入ができずもやもやした思いが残る。描きたかったのは絶望なのか希望なのか…。残念ながら、この映画を見て希望や元気は湧いてこない。くしくも同日に公開された、震災後の能登の現状を描いた『生きがい IKIGAI』とはそこが大きく違う。










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