田中雄二の「映画の王様」

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『特攻大作戦』

2015-09-03 10:00:33 | 映画いろいろ

久しぶりにテレビで”十二人の汚れた男”を。 



 第二次大戦下、米軍のライズマン少佐(リー・マービン)は、フランスの古城を根城にしたドイツ軍司令部を壊滅させるべく、重罪犯の元兵士12人を訓練し、彼らを率いて敵地に乗り込む。監督はロバート・アルドリッチ。

 『特攻大作戦』とは内容をシンプルに言い当てたいい邦題だが、この映画の原題は「The Dirty Dozen 汚れた1ダース(12人)」だから、邦題は『十二人の怒れる男』(57)ならぬ「十二人の汚れた男」でもよかったのかなとも思う。

 12人のメンバーは、ジョン・カサベテス、チャールズ・ブロンソン、ジム・ブラウン、クリント・ウォーカー、テリー・サバラス、ドナルド・サザーランド、トリニ・ロペス、コリン・メイトランド、トム・バズビー、ベン・カルザス、スチュアート・クーパー、アル・マンシーニ。軍の上層部として、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン、ジョージ・ケネディ、ラルフ・ミーカー、ロバート・ウェバーも出てくる。今ではほとんど見られなくなったが、かつては、この映画のような、男くさい俳優たちが繰り広げる集団劇というジャンルが確かに存在していたのだ。

 初めてこの映画をテレビで見た中学生の頃、『荒野の七人』(60)などと共に一生懸命にメンバーの名前を覚えた。一体あの熱意の源はどこからきていたのだろうか。

 さて、この映画、前半は『七人の侍』(54)『荒野の七人』にも通じるメンバー集めとキャラクター紹介を、中盤は訓練の中に団結と友情が結ばれていく変化を、そして後半は作戦実行の様子を描く、という三段構えの面白さがある。ただ、次々に死んでいく彼らの姿に男気を感じながら、ナチスに対する容赦なしの残虐シーンへの反発も浮かぶ、という相反する思いが交錯するのが困る。

 『めぐり逢えたら』(93)では“男が泣く映画”として語られ、タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』(09)にも大きな影響を与えたことを考えると、アメリカ人はこの映画をあくまでも娯楽作として捉え、残虐シーンについてもあまり深くは考えないのかと少々疑問を感じる。

 ところで、多彩な登場人物たちを再登場させるラストの“カーテンコール”は、余韻を残す意味でも集団劇にはもってこいの手法。『大脱走』(63)からこの映画を経て『コマンド戦略』(68)へと続いた。名脇役のリチャード・ジャッケルが、何と『特攻大作戦』と『コマンド戦略』の両方に出ていた! などという発見もあって楽しかった。

 だが、これがベトナム戦争が絡んだ映画のカーテンコールになると余韻よりも哀愁の方を強く感じさせられた。『アメリカン・グラフィティ』(73)しかり、『ディア・ハンター』(78)しかりである。


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