田中雄二の「映画の王様」

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舞台『笑の大学』

2021-03-30 07:15:49 | 映画いろいろ

舞台『笑の大学』(1997.1.)



 三谷幸喜作の「笑の大学」は、戦中の検閲制度を揶揄した快作だった。劇団の座付き作家と警視庁保安課検閲係という、敵同士ともいうべき2人が、台本の検閲という作業の中から、図らずも傑作台本を作り出してしまうという皮肉が効いている。

 しかも、西村雅彦演じるお堅い検閲係の向坂が、喜劇作家としての才能を開花させていく件は、ウディ・アレンの『ブロードウェイと銃弾』(94)の二重構造をほうふつとさせるような面白さがあった。

 そして、2人の“共同作業”が、引いては戦中の浅草軽演劇への、あるいは喜劇そのものへの賛歌となっていくところが心憎い。テーマ曲に『雨に唄えば』(52)の「メイク・エム・ラフ」を使ったのも、見事な選曲だ。

 と、ここまで無防備なまでに三谷芝居にはまってしまったのは、近藤芳正が演じた座付き作家・椿のモデルが、自分が興味を持っているエノケン劇団の菊谷栄だったことが大きい。

 また、キネマ旬報誌上でのエッセーや和田誠との対談の中に、フランク・キャプラやビリー・ワイルダー好きという件があったり、テレビの映画劇場で洋画の楽しみを知ったと書かれていたりしたこと、つまり自分と同類だ、ということが頭の隅に残っていて、この芝居もそうしたところから派生したものだと感じたからなのかもしれない。

 気になったので、『雨に唄えば』の中の、ドナルド・オコナ―の「メイク・エム・ラフ」の場面を見直してみた。そして、一種の狂気とも言えるこのシーンは、心がすさんだり、疲れたりした時は、最高の良薬足り得る、感動的な至芸だと改めて感じさせられた。

https://www.youtube.com/watch?v=SND3v0i9uhE

「アラビアの唄」 エノケンとその仲間たち
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c5c5c9c9e274cc51e260d9cdea01cd0a


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