田中雄二の「映画の王様」

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二十一世紀のジョン・フォード『戦争と母性』

2022-07-23 23:02:09 | 映画いろいろ

 シネマヴェーラ渋谷で始まった、「蓮實重彦セレクション 二十一世紀のジョン・フォードPart1」の初日の初回に顔を出す。満員の盛況ぶりに驚いた。“蓮實先生”のご威光、いまだ衰えずなのか、それともフォードのご威光か。

 そして、いつの間にかオンラインでチケットを買うことに慣れてしまったもので、劇場につながる外階段で、長い間並んで待ってからチケットを買うという、昔ながらのスタイルに面食らった。


『戦争と母性』(33)(2022.7.23.シネマヴェーラ渋谷)

 原題は「pilgrimage=巡礼』。

 アーカンソー州のスリー・シーダースで農場を経営し、女手一つで息子のジム(ノーマン・フォスター)を育て上げたハンナ・ジェソップ(ヘンリエッタ・クロスマン)。だが、ジムと近所の娘メアリー(マリアン・ニクソン)との恋愛を許せないハンナは彼を戦場に送り、やがてジムは戦死する。

 10年後、メアリーにも孫にも心を許さないハンナのもとに、フランスにあるジムの墓への巡礼旅行の話が持ち上がる。

 主人公ハンナの極端な性格破綻者ぶりやクロスマンの大時代的な演技に加えて、強引で不自然なストーリー展開も目に付く。フォード作品の中では、どちらかといえば、あまり出来のよくない方の部類に入ると思われる。

 ただ、“軍国の母たち”の巡礼旅行に漂うユーモアとペーソスや、不自然な話を見せ切る力業などに、いわゆる“フォードタッチ”が垣間見えるところがあるし、時折、いかにもフォードらしい構図の素晴らしさや、カメラワークの冴えを感じさせるシーンもある。


イベントに際して、知人が貸与したポスターたち


【違いのわかる映画館】シネマヴェーラ渋谷
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/624a4f3d6cc0d1356f829760e377aa9f


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