田中雄二の「映画の王様」

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『サン・セバスチャンへ、ようこそ』

2024-02-10 01:19:11 | 新作映画を見てみた

『サン・セバスチャンへ、ようこそ』(2024.2.9.恵比寿ガーデンシネマ)

 ニューヨークの大学の映画学を専門とする教授で、売れない作家のモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)は、有名なフランス人監督フィリップ(ルイ・ガレル)の広報を担当している妻のスー(ジーナ・ガーション)に同行して、サン・セバスチャン映画祭にやってくる。

 リフキンは妻とフィリップの浮気を疑って精神不安定気味。そんな中、オーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン』(41)、フェデリコ・フェリーニ監督の『8 1/2』(63)、フランソワ・トリュフォー監督の『突然炎のごとく』(62)、クロード・ルルーシュ監督の『男と女』(66)、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』(60)、イングマール・ベルイマン監督の『仮面/ペルソナ』(66)『野いちご』(57)『第七の封印』(57)、ルイス・ブニュエル監督の『皆殺しの天使』(62)に自分が登場する夢や白日夢を見る。そして女医のジョー(エレナ・アナヤ)と知り合うが…。

 ウディ・アレン監督が、スペイン最大の国際映画祭であるサン・セバスチャン国際映画祭を舞台に、妻の浮気を疑う映画学の大学教授が体験する不思議な出来事を描いたコメディ。

 アレン作品の常連であるショーンがアレンの分身ともいえる主人公を演じる。アメリカ人の彼を、ヨーロッパ映画に心酔し、ハリウッド映画を見下す理屈屋にし、フランス人のフィリップの“神”はフランク・キャプラで、彼はハリウッドの巨匠たちの楽天主義に憧れているという逆説的な設定は、いかにも皮肉屋のアレンらしいところ。というかこれは自虐なのか。稲垣浩の『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』(62)や黒澤明の『影武者』(80)を褒めて周囲に引かれるシーンもあった。

 ただ、この映画は再現映画のことを知らなければ、楽しみは半減するだろう。つまりはアレンの趣味趣味映画なのだ。それを楽しんで見てしまう自分もモートと同類で、特に映画が好きではない人からすれば嫌みな変人に見えるのかもしれないと思うと、あまりいい気持ちはしなかった。


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