田中雄二の「映画の王様」

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『TOVE トーベ』

2021-10-17 21:30:56 | 新作映画を見てみた

『TOVE トーベ』(2021.10.16.オンライン試写)

 『ムーミン』の原作者として知られる、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンの半生を描く。

 1944年のヘルシンキ。防空壕の中でおびえる子どもたちに語った物語からムーミンの世界を作ったトーベ・ヤンソン(アルマ・ボウスティ)は、爆風で窓が吹き飛んだアトリエで暮らし始める。

 彫刻家の厳格な父ビクトルとの確執、漫画家・イラストレーターとしての自分を良しとしない、芸術家・画家としての頑ななプライド、スナフキンのモデルとなったという社会主義議員のアルタ(シャンティ・ルネイ)との不倫、舞台演出家ヴィヴィカ・バンドラー(クリスタ・コソネン)との同性愛。

 揚げ句は、ヴィヴィカとうまくいかなくなると、人のいいアルタに求婚を迫りながら、やっぱり私はヴィヴィカを愛してると…。見ながら、思わず、自由とは奔放に生きるということなのか? 芸術家はそんなに特別な存在なのか? と問い掛けたくなった。この主人公に全く共感できない。

 小学生の頃、井上ひさし脚本、宇野誠一郎音楽のテレビアニメ「ムーミン」に親しみ、図書館にあった原作本を何冊か借りてみたが、アニメとのあまりの違いに面食らい、結局読み切れずに返した覚えがある。

 この映画を見ると、もちろんその全てが事実ではないのだろうが、原作にあった暗さや屈折、諧謔の素を垣間見た気がした。ちなみに、ヤンソンはアニメ版が気に入らなかったという。


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