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1940年代日本映画ベストテン その6『酔いどれ天使』

2021-12-02 07:22:35 | 俺の映画友だち

『酔いどれ天使』(48)(1980.1.12.並木座.併映『どですかでん』)

 公開から32年たった今も少しも色あせることのない名作。志村喬演じる酔いどれ医者の真田が、後の『赤ひげ』につながるのか。三船敏郎が、若さ故に破滅するやくざの松永を見事に演じている。山本礼三郎が演じたやくざの登場場面の異様な雰囲気と、ラストのペンキまみれで死んでいく三船=松永の姿が絶品。

 名セリフ「説教されて出直すには年を取り過ぎているわい」「仁義なんてもんはやくざの安全保障条約みたいなもんだ」(真田)

(1982.2.12.)

 フジテレビが志村喬追悼として『酔いどれ天使』を深夜に放送。

 この映画こそが黒澤映画の原点だろう。この映画には、徹底的に悪を憎みながら、その半面、弱者を温かい目で見つめる優しさがある。後期の大作ではなぜかその優しさが変容してしまった感があるだけに、この映画が持つ厳しい優しさに心を打たれる。

 三船敏郎演じる松永を一見突き放すかのように描きながら、どこかこの男を悪にし切れない甘さがある。志村喬演じる酔いどれ医者の真田は、当時の黒澤自身の気持ちを代弁しているのかもしれないと思った。


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