田中雄二の「映画の王様」

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ジョン・G・アビルドセン追悼1『ロッキー』

2017-06-21 10:57:45 | 映画いろいろ

 ジョン・G・アビルドセン監督が亡くなった。彼の代表作はといえば、やはり『ロッキー』(77)『ベスト・キッド』(85)になるのだろう。だが、そのために格闘技映画専門の監督のように見なされてしまったところがあるのがちょっと残念だ。

 例えば、ピーター・ボイル主演の『ジョー』(70)、ジャック・レモン主演の『セイブ・ザ・タイガー』(73)、ポール・ソルビノ主演の『ふたりでスロー・ダンスを(78)、ジョン・ベルーシ主演の『ネイバース』(81)と、さまざまな形で中年男の姿を描いてきた佳作の監督というのが本分なのに、そのことが忘れられてしまった感があるからだ。その意味では、遺作が『ヴァン・ダム in コヨーテ』(00)というのも悲しい気がする。

 彼の監督作に関して残っているメモを転載し、追悼の意を表したいと思う。

『ロッキー』(1977.6.4.東劇)



 監督のジョン・G・アビルドセンは、タイトルマッチに至るまでのロッキー(シルベスター・スタローン)や周囲の人々の生活、心情を実に丁寧に描いている。

 恋人のエイドリアン(タリア・シャイア)、その兄貴のポーリ―(バート・ヤング)、老トレーナーのミッキー(バージェス・メレディス)はまだしも、ロッキーに肩入れする高利貸しのガッツォ(ジョー・スピネル)まで、きちんと描いているところが胸にぐっとくる。

 だからこそオレたちは陽の当たらない生活を送る彼らの純情に共感し、その代表たるロッキーのファイトに夢を託すことができたのだ。

 そんな彼らの思いが集約されたタイトルマッチ。絶対的なチャンピオンのアポロ(カール・ウェザース)と15ラウンドを闘い抜くことで、負け犬ではないと証明したいと考えたロッキーは、何度もダウンを喫しながらも、あきらめずに立ち上がる。そのひたむきな姿が見る者の心を打つ。ビル・コンティ作曲の力強い音楽も、ロッキーの不屈の闘志を盛り立てる。

 嗚呼、今から40年前か。「エイドリアン!」


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