田中雄二の「映画の王様」

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『身代金』

2020-04-08 08:55:58 | 映画いろいろ

『身代金』(96)(1997.7.30.目黒シネマ 併映は『ザ・ロック』)


 息子を誘拐された資本家(メル・ギブソン)が、身代金の受け渡しに失敗したFBIに見切りをつけ、身代金を懸賞金に代えて、犯人(ゲーリー・シニーズ)と対決する。グレン・フォード主演の『誘拐』(56)のリメークで、監督はロン・ハワード。

 この映画は、脅迫された側が開き直った結果、事件は意外な展開を見せるという秀逸なアイデアを生かし切れず、ギブソンのヒステリックな演技に比して、シニーズ演じる犯人の動機や、その後の行動も曖昧なので、両者がかみ合わず、残念ながら緊迫感に欠けた誘拐話に見えてしまう。

 その点、エド・マクベインの小説『キングの身代金』の“相手を間違えた誘拐”というアイデアを借りて、全く別の『天国と地獄』(63)という映画を作ってしまった黒澤明の力業はすごかったと、改めて感じたが、実はこの映画には、『天国と地獄』の影響をうかがわせるシーンが結構多いのだ。

 また、シニーズが、資産家と労働者の例え話として、映画『タイム・マシン 80万年後の世界へ』(60)のイーロイ人とモーロック人を持ち出すところも含めると、過去の映画からの引用を見付けるという、また違った楽しみ方ができる(もともとリメークだし)。と、ちょっと苦しい気もするが、これもまた映画を楽しむ方法の一つであるには違いない。


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