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『十二単衣を着た悪魔』

2020-10-03 07:14:39 | 新作映画を見てみた

『十二単衣を着た悪魔』

 フリーターの雷(伊藤健太郎)が、突然『源氏物語』の世界にタイムスリップし、偽りの陰陽師・雷鳴として、弘徽殿女御(こきでんのにょうご)に仕える。雷が、弘徽殿(三吉彩花)と、現地で妻となった倫子(伊藤沙莉)に影響されて変化していく様子が描かれる。監督は女優の黒木瞳。

 原作は内館牧子の『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞』。内館は『プラダを着た悪魔』(06)でメリル・ストリープが演じた敏腕編集長をヒントに、『源氏物語』の悪役・弘徽殿女御が、実は早過ぎたキャリアウーマンだった、という設定を思いついたのだという。また、タイムトラベルを使って古典を身近なものに、という意図もあったと思われる。恐らく、黒木もそうした点に魅力を感じて監督をしたのだろう。

 ただ、自分はタイムトラベルものが好きなので、どうしても点数が甘くなるのだが、これはちょっといただけなかった。全体的に軽過ぎて、映画ではなくドラマを見ているような気になる。また、演出が稚拙で、演じている俳優たちが何だか当惑しているようにも見えた。タイムトラベルは、もともとあり得ないことだから、設定が自由にできて劇的な効果もあるのだが、実は映画として描くのは難しいのだ。

 ちなみに、伊藤健太郎は「アシガール」で主人公の女子高生(黒島結菜)がタイムスリップした先の戦国時代の若君を、伊藤沙莉は「いいね!光源氏くん」でタイムスリップしてきた光源氏(千葉雄大)を居候させる現代のOLを演じていたので、何やらイメージがややこしくなった。


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